食事中の水分補給は胃酸を薄めるか?・・・先住民族は食事中、水を飲まずに自分の唾液だけで嚥下する。

『食事中のお水は胃酸を薄めますか?』

食事の消化吸収でまず大切なのは胃酸です(唾液も大切ですが)。日本人は、平常時の胃酸過多(カフェインとストレスが主な原因?)、食事時の胃酸不足が顕著に現れているようにさえ思います。

さて、「食事中にお水を飲むことは胃酸を薄めてしまいますか?」という質問をよく聞きます。

結論から言うと、私の回答は「十分にありえます。しかし、科学的なエビデンスはありません」となります。

私は、数年前から伝統社会で生活する先住民族の調査に回っています。アフリカの狩猟採集民ハッザ族、遊牧民ダドガ族、モンゴル遊牧民、ニューギニア高地人ダニ族など8民族です。彼らにほぼ共通する習性に、「食事中に水などの液体を一緒に飲まない」ということです。

私たちは、食べ物を嚥下する(飲みこむ)のに、お水やお茶またはスープなどを利用することが多いです。しかし、伝統社会を見る限り、本来の食事は「自分の唾液のみで嚥下する」ことかもしれません。

ニューギニア高地人ダニ族は食事の9割がサツマイモやタロイモを食べます。日本の品種のようなしつこい甘さはなく、非常にたん白なサツマイモです。彼らは一食に700~900グラムのサツマイモをよく噛んで、お水などを飲まずに、自分の唾液だけで嚥下することができます。私も真似をしてみましたが、喉が詰まり、全くダメでした。しかし、訓練を重ねるとできるようになるかもしれません。

低胃酸の人がお水をたくさん飲んで食事をすると、胃酸や消化液がさらに希釈されてしまい、その効果を失うことは容易に推測できます。そのため、私も人に食事指導やアドバイスをするときは、水なし食事を勧めることがよくあります。経験的にこの方法は上手くいくことが多いです。

しかし、研究レベルでは科学的に証明されていません。。食事と同時にに水を飲むと胃酸と消化酵素が薄まり、食べ物を消化するのが難しくなるという推測理論は、臨床試験のもと証明することはできていません(Dig Dis Sci. 1979 Feb;24(2):101-10)。

食事と一緒に液体を飲むと、固形物が胃を出る速度を速めてしまうから、良くないという理論もあります。固形物が胃を早く出ると、胃酸や消化酵素との接触の時間が短縮され、消化不良を招くと考えられていますが、胃の排出速度を分析した臨床試験では、確かに液体は固形物よりも消化器官を速く通過しますが、固形物の消化速度には影響を与えないことがわかっています(Clin Nucl Med. 1982 May;7(5):215-21)。

これらは非常に信用性の高い報告かもしれませんが、私の経験や観察上では、やはり食事中にあまり噛まずに水を利用することで嚥下する人はどこか消化が悪いように感じます。

よって、水に頼らずによく噛んで、できるだけ自分の唾液だけで飲みこめるぐらいの食事をすることをお勧めしています。もちろん、無理をして喉が詰まってしまっては大変なことになるので、徐々に訓練していくのが得策です。

※高齢の方は、のどが詰まる事故が多いため、水なし食事はお勧めできません。

参照:https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1097369313776769&set=a.122416054605438&type=3&theater

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