鉄分の吸収効率を高める方法…鉄は主に十二指腸で吸収できますが、これは腸内細菌ができるだけいないところで吸収させようとしているからです

鉄分の吸収効率を高める方法

鉄は主に十二指腸で吸収できますが、これは腸内細菌ができるだけいないところで吸収させようとしているからです。バクテリアのほとんどが鉄をエサにしていますので、哺乳類は腸内細菌に横取りされないような鉄吸収機構を進化させています。

そのため、鉄は他のミネラルと異なり、大腸でほとんど吸収できませんので、残念ながら短鎖脂肪酸依存ではありません。ヒト臨床では難消化性糖質を投与しても鉄吸収に影響を与えていません(Am J Clin Nutr. 1998 Mar;67(3):445-51)。食物繊維の鉄吸収への影響に関しては無作用であるという報告が多いのです(Am J Clin Nutr., 46, 307-314 1987 ; Eur J Clin Nutr 46:221-225. 1992)。これは鉄の場合だけであり、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などではこのような結果はそうありえません。

鉄はご存じのようにヘム鉄と非ヘム鉄に分かれ、食事性ヘム鉄の吸収率が15~20%に対し、食事性非ヘム鉄の吸収率は2~5%程度です。しかし、これらはさほど重要ではありません。重要なのは食べ合わせや調理法、そして体内での鉄の吸収機構を改善する(=胃腸改善など)ことの方です。

植物性食品に含まれるフィチンがミネラルの吸収を阻害することは有名です。鉄にも大きく影響を及ぼします。実際に、ある研究では、フィチンは鉄吸収を80%も減らしてしまうことがわかっています。そのため、玄米や大豆食品が嫌われてしまうことがあります。

ところが、興味深い実験があります。植物性食品を主体にした高フィチン食をしている、貧血の子ども達に、ビタミンC100mgを1日に2回(昼食時と夕食時に)摂取させたところ、2ヶ月後にほとんどの子ども達は貧血ではなくなったことが報告されています(Hum Nutr Appl Nutr. 1985 Apr;39(2):151-4)。ビタミンCが鉄吸収を促進させることは誰でも知っていることですが、フィチンの阻害をも相殺するほどの吸収促進効果があるというのは驚くべきことです。

ビタミンCだけでなく、他の抗酸化物質でも、鉄の吸収と鉄による酸化ストレスをコントロールするメカニズムがあります。多くの抗酸化物質は、鉄をキレート化したり、または鉄代謝調節遺伝子の発現を調節することによって鉄吸収を調整し、鉄による酸化障害から保護します。また、ビタミンAもCと同様に鉄吸収を増加させ、トランスフェリン受容体やヘプシジンそしてフェロポーチンなどの鉄の代謝に関わるタンパク質の発現を調節し、体内の鉄分の維持に働きます(Nutrients 9(7):671 June 2017)。

注意すべきはコーヒー、紅茶、ココアです。これらはポリフェノールなどの恩恵もありますが、強力な鉄の阻害剤となります(Br J Nutr. 1999 Apr;81(4):289-95)。特に紅茶とコーヒーは鉄の吸収を 79~94%まで減らした結果となっています。(※ただし、日本の試験では、コーヒーや緑茶による鉄阻害は問題なかったという報告があります。watanabe,1968)

最後に、調理方法です。調理方法は「煮る・蒸す・湯がく」がベターだと私は以前から何度も言っておりますが、これはAGEsや油脂の毒性アルデヒドを回避するための考え方です。

しかし、例えば「湯がく」調理法はミネラルがどうしても食品から汁への溶出というデメリットがあるため、鉄欠乏者にとってはミネラルの損失が少ない「炒める」調理法の方が栄養吸収対策としては良いかもしれません(日本栄養・食糧学会誌 Vol. 43 No.1, 31-42,1990)。ただし、「炒める」は油脂の種類の選択や高温調理での反応が気になりますので、やはりやりすぎは注意が必要です。

以上まとめると、①鉄吸収において腸内環境を正常に維持することは大切ですがミネラルの中でも鉄に関しては短鎖脂肪酸依存ではないということ、②高フィチン食をしていてもビタミンC投与があれば貧血の改善に期待がもてるということ、③ビタミンCだけでなくビタミンAもCと同様に鉄吸収を増加させるということ、④コーヒー、紅茶、ココアは鉄の強力な阻害剤となってしまうため注意が必要であるということ、⑤調理法は鉄欠乏者にとって「炒める」も取りいれるということ、です。

いくつか意外な情報があったかもしれませんが、ぜひ参考にしてみてください。

参照:https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1088880204625680&set=a.122416054605438&type=3&theater

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