現代人はタンパク質および鉄欠乏状態になっている

妊娠と鉄
現代人の栄養には2つの大きな問題があります。一つは果糖の過剰摂取、そしてもう一つがタンパク質および鉄の欠乏です。特にタンパク質や鉄欠乏は女性に多く、妊娠可能な年齢になると悪化します。なぜなら生理が始まるから。
鉄はヘムタンパクと結びついているヘム鉄と、結びついていない非ヘム鉄があります。ヘム鉄の吸収率が20~30%であるのに対し、非ヘム鉄はわずか2~5%程度しかありません。ヘム鉄は動物性食品に含まれるのに対し、非ヘム鉄は植物性食品に含まれます。これゆえに動物性タンパク質の摂取が不足すると、ヘム鉄の摂取も不足するのです。
鉄は体内では4つの形態で存在します。赤血球のヘモグロビン、結合組織のコラーゲンなどにある組織鉄、血液中でトランスフェリンというタンパク質と結びついている血清鉄、そして貯蔵鉄(フェリチン)です。
鉄は特に血液中に多く含まれるため、経血で血が失われると、鉄もまた多く失われてしまいます。さらに女性が妊娠すると、胎児に優先的に鉄が送られることで、妊婦の鉄欠乏が悪化します。一説によると、一回の妊娠で妊婦は(血液データ上で)フェリチンを約50ng/mlも失うのだそう。
鉄は赤血球のヘモグロビンの活性中心にあって、酸素を運搬するために必要不可欠なミネラルです。鉄欠乏になると鉄欠乏性貧血となり、酸素運搬能が低下します。それだけではありません。ミトコンドリアでエネルギー産生が行われる電子伝達系においても、鉄が無ければエネルギーを生み出せません。このため鉄欠乏になると酸素不足やエネルギー不足を招いてしまうのです。
鉄欠乏の女性が妊娠すると、さらに鉄欠乏が悪化し酸素やエネルギー不足になります。そもそも酸素もミトコンドリアでエネルギー産生に必要だから、赤血球が運んでいるのです。酸欠と電子伝達系の働きの低下によってエネルギー欠乏になると、生体は酸素無しで手っ取り早くエネルギーを作ることができる、解糖系に頼ろうとします。
解糖系において最もエネルギーを作りやすいのが、果糖です。なぜなら果糖はブドウ糖と違い、インスリンによる細胞への取り込みの調整を受けないから。果糖は濃度拡散によって細胞にすぐに取り込まれ、解糖系でエネルギーが作られます。だから鉄欠乏の女性が妊娠すると、甘いものを欲するようになるのです。
これだけではありません。果糖は脂肪細胞に取り込まれやすく、脂肪組織に炎症を起こし、TGF-αといった炎症性サイトカインの放出を促します。これがインスリンの効きを悪くし、インスリン抵抗性を引き起こします。もうすでにインスリン抵抗性が生じている女性が妊娠し、さらなる果糖の摂取を行えば、容易に妊娠糖尿病を発症してしまいます。
鉄欠乏の女性が妊娠すると、つわりはひどくなる傾向があります。これは食べ物の消化にエネルギーを使うものを避けようとするから。匂いに敏感になるのも免疫力が低下し感染に弱くなるからです。というのも鉄は免疫機構にも重要な働きを持っているため、鉄欠乏では白血球が正常に働けなくなり、免疫力が低下するのです。
こうして鉄欠乏の女性が妊娠すると、つわりがひどく甘いものが無性に欲しくなって我慢できなくなります。そうして果糖を過剰摂取し、果糖の過剰摂取がインスリン抵抗性を悪化させるとともに鉄欠乏もまた悪化していきます。これがさらなる甘いものへの欲求になるという悪循環。口の中はボロボロになり、生まれてきた子どもにもハンデを背負わせることになるのです。
鉄欠乏の母親から生まれてきた子どもは、鉄欠乏のためエネルギー産生が上手くできません。このため母乳の吸いも悪くなり、夜泣きが多くなります。鉄はメンタルにも影響を与えますから、癇が強い、育てにくい子になってしまいます。偏食になりやすいという特徴もあります。
鉄は皮膚のコラーゲンを作るために必要な物質でもありますから、赤ちゃんの健康な皮膚に必要不可欠です。鉄欠乏の赤ちゃんは皮膚が弱く、乳児湿疹が出やすく悪化しやすい状態になりがちです。これにステロイドを使えば、アトピー児になるということ。
鉄は鼻中隔軟骨のコラーゲン生成にも必要ですから、鉄欠乏は鼻中隔軟骨の形成不全を生じさせ、上あごの横幅の成長が阻害され、不正咬合の原因となります。不正咬合は妊娠前の栄養強化、特に鉄の摂取で防ぐことができる理由です。
とまあ、このように鉄欠乏は本当に様々な症状を引き起こします。妊婦にとっては母体はもとより生まれてくる赤ちゃんにも一生のハンデを背負わせることになってしまうのです。そんな大事な鉄を普段からしっかりと摂らなければならないのに、やれ「野菜は体に良いからたくさん摂りましょう」とか、「肉はカロリーが高く肥満の元になるから避けましょう」とか、ウソの情報がたくさんあふれています。
賢明な皆さんは、そういったウソの情報に惑わされず、正しい情報を知って実践し、健康で丈夫な赤ちゃんを産んでもらいたいと切に願います。正しい情報とは、果糖を避け、動物性タンパク質や鉄をたくさん摂るということ。要は先住民食ということですね。

参照:https://www.facebook.com/shukaku.nagao/posts/3082890805122136

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