低炭水化物食は総死亡リスクを上げてしまう

低炭水化物食は総死亡リスクを上げてしまう

低炭水化物食と高タンパク質食の組み合わせは、短期的にみれば確かに体質改善や体重減少を導くことがあるため、その普及は留まるところを知りません。

しかし、これらの組み合わせは長期的に見ると、総死亡リスクを上げてしまうという発表があります(Noto H et al,PLoS.One.9:e550302013)。この研究は9つの研究のメタ分析によるもので、総死亡については4つのコホート研究を解析の対象とし(追跡期間5~26年、227,216人のうち総死亡者数15,981人)、低炭水化物食は、総死亡リスクの明らかな要因だったのです(調整リスク比1.31)。この研究では、低炭水化物食の長期的な効果は認められず、むしろ死亡リスクが有意に増加することが示唆されています。

誤解のないように言いますが、タンパク質をきちんと摂取することはもちろん大切です。しかし、「タンパク質をきちんと摂取すること=高タンパク食」でもなければ、「=低炭水化物食」というわけでもないのです。

たとえば80歳以上の高齢者を見てみると、お肉をよく食べる人の方が元気で長生きしていることがよくわかるでしょう。これは上述の研究結果と矛盾しているでしょうか?いいえ、矛盾していません。

高齢になるにつれ消化器官の衰えや消化酵素の分泌が一挙に低下するため、多くの高齢者があっさりとした素食や低タンパク食に偏るのは言うまでもありません。そのような中で肉類を食べることはとても重要な栄養源となります。これはあくまで素食や低タンパクに走りがちな高齢者にとっての貴重な栄養補給という観点であり、結果的に肉食が目立ったものであり、決して高タンパク食をしているというわけではないのです。

また、極度の栄養失調者や極度の免疫低下の人にタンパク質をしっかり与えれば短期的には回復します。ただし、これも短期的な治療の結果であり、このような極端な食事法をたとえば十数年も長期で行った場合に起こる結果とはまた異なるのです。

特に動物性タンパク質の最も大きな問題は「未消化タンパク」にあります。未消化タンパクは、胃酸分泌能や消化能の低い日本人だけでなく、そもそも欧米人でさえ発生するものです。欧米人は日本人の約2倍のタンパク質摂取量を誇りますね。そして、彼らの死因に心臓疾患が多いことが挙げられます。

消化能を上げればこれで解決という安易な話ではありません。そもそもタンパク源はプロテインパウダーでない限り、お肉を「完全に」消化することは不可能なのです。つまり、摂取が多ければ多いほど腸内に未消化タンパクが増えます。

長期的な低炭水化物食+高タンパク食によって腸内はアルカリ性寄りとなってしまい、このpH下では、腸内細菌の(アミノ酸)脱炭酸酵素によって未消化タンパクから腐敗アミン類やアルデヒド類が多く生成されてしまいます。このアミン類とはたとえばチラミンやヒスタミンなどです。

チラミンのような腐敗アミン類のほとんどが交感神経作動系でノルアドレナリンを促進するため、これが腸内で一時的に大量に吸収されてしまうと、非常に大きな発作(血管収縮、けいれん、心拍数上昇、組織障害作用)を起こしてしまいます。※実際に、世界25カ国61地域の各民族の血液や尿を採取して回った家森先生(京大)は、遊牧民(高脂肪高タンパク)には晩年突然死が多いということを言っておられましたが、納得できます。

たとえ短期的効果があった食事法だからといって、長期的効果にも期待できるとは限りません。だからこそ、追跡調査や疫学調査の結果も慎重に見ていく必要があるのです。

タンパク質は重要です。しかし、それは「適量」を摂取した場合の話です。長期的な話として、多ければ良いというものでもなければ、少なければ良いという話でもありません。

あくまで疫学調査なので、みんながみんなというわけではありませんが、低炭水化物食は総死亡リスクを上げてしまう可能性は十分にありえます。

参照:https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1088897751290592&set=a.122416054605438&type=3&theater

シェアする

フォローする