コロナウイルスで嗅覚・味覚が鈍くなる理由

『コロナウイルスで嗅覚・味覚が鈍くなる理由』を説明します
病原性のウイルスの多くは感染時に鼻腔を貫通して、臭いを嗅ぎ分ける「嗅(きゅう)神経」に入ることがあります。
たとえば、インフルエンザウイルスやヘルペスなんかも、嗅神経に感染することはよく知られています。
動物を使った基礎研究では、今回のSARS-CoV-2の型ではありませんが、コロナウイルスも、感染時に嗅神経に急速に侵入して、そのまま脳までたどり着きます(Virology. 1989 Jun;170(2):556-60)。
こうして、コロナウイルスは嗅神経を損傷させるので嗅覚の神経機能が上手く働かず、感染後、一部の人に臭いがしなくなるという症状がみられるのです。
※ネットで「ウイルスによって亜鉛が消耗してしまうから」というのを見ますが、それはまずありえません。亜鉛は局所的な組織分布は多少あるものの、基本的に全身に貯蔵されていますので、コロナによって亜鉛欠乏になってしまうほどまでにはならないでしょう。
また、実際に人間でも、いくつかのタイプのコロナウイルスは嗅神経に侵入し、さらに嗅球から脳に侵入することができます(Front Cell Neurosci. 2018; 12: 386)。
嗅覚の神経細胞の20〜30%がウイルスによって細胞死してしまうと、嗅覚が失われたように感じることがわかっています。
※今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)についても、おそらく同様のことが起きると思います。(研究からパブリッシュされるまで半年以上はかかると思うので、待つ必要はありません。ここはほぼ同じでしょう)
さて、今回は嗅覚だけでなく、味覚も感じなくなるという症状が報告されており、これが亜鉛欠乏説を助長しているのですが、違います。
というのは、味覚まで感じなくなったのは、嗅覚が鈍ることが直接的な原因です。鼻をつまんだまま食事をすると、味がしなくなるのと同じ原理です。
つまり、コロナウイルスが鼻腔から侵入してきて、そこから嗅覚神経を破壊し、臭いが感じられなくなることにより、味さえも分からなくなるという流れです。
ただし、これは感染者全員に起きる症状ではありません。ウイルスはさまざまな経路で私たちの体に侵入し、神経細胞を介すこともあれば、違う細胞に浸潤することもあるからです。
また、嗅覚の低下は一時的な症状のため、完治すれば元に戻ります。
以上、『コロナウイルスで嗅覚・味覚が鈍くなる理由』でした。

参照:https://www.facebook.com/nobunaga.yoshitomi/posts/1430625880451109

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