ハーバードで見つけた日本人の「強み」と「極端に足りない」もの

リンクよ引用
「日本企業のリーダー研修は実際の現場では活かされない」という声がよく聞かれます。その原因は、研修の内容が実務に必要なスキルの習得に偏っているからだ、とも。
それでは、真にリーダーに必要なマインドセットや意思決定に必要な価値観を私たちが形成するには、どのような学びが必要で、どのようにして取り組めばよいのでしょうか?
ハーバード・ビジネス・スクールのリーダーシップ開発プログラムを修了し、現在はアメリカにある三菱商事の100%子会社で活躍する小島秀毅さんは、
「日本人はグローバルリーダーと比べて著しく能力が低いわけではない。ただ、『世界に変化を起こす』という意識が極端に足りない」
と感じたそうです。小島さんがハーバードで実感したリーダーシップの本質とその育み方、グローバルビジネスで発揮すべき「日本人の強み」に迫ります。

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私も大学時代にアメリカに留学して、駐在前から北米を担当していたとはいえ、ネイティブスピーカーではありませんから、少し話が脱線するとなかなかついていくのが大変です。文化的背景も理解しなければなりませんし、そもそも「日本人はおとなしい」と思われていて、両手を上げて「発言したい」とアピールする人もいる中で存在感を見せるのは難しいことです。ですから、とりあえず議論が深まる前に、早いタイミングで一旦発言し、気持ちに余裕を持って参加できるよう心がけていました。
ただ、一方で「日本人としての強み」を感じることも多々ありました。
PLDでは「イノベーションを起こす人を育てる」というより、「既存事業を変革できるリーダーを育てる」ことに重きが置かれています。大きな組織ほど、一人ひとりがリーダーシップを持って、チームとして動いたほうが高いパフォーマンスを発揮できる。その考え方は私たち日本人の特性に非常にフィットするものだと感じたのです。
アメリカはどちらかと言うと自分中心主義で、トップの考えにそぐわなければクビ切りに遭うこともある。カリスマ性のある創業者がいて、強力なリーダーシップを発揮する、という感じですよね。けれども日本では全体観や調和を重んじて、バランスを考えて、チームワークに取り組もうとする。社内でもさまざまな部署の人と話をして、根まわししたり調整したりするじゃないですか。
しかも、日本ではジェネラリストが求められて、さまざまな部署を浅く広く経験する。アメリカのように自分の専門分野でのキャリアアップだけを目指す国では専門性の高い人材は育ちますが、ビジネス全体を俯瞰する力を持った人材を育てるのは難しい。だけれど、経営者には状況を総合的に判断し、意思決定を行うことが重要ですからね。
いまのところ、ビジネスの世界で名を轟かせるような日本人はさほど多くないけれど、トップとしてリーダーシップを発揮する機会と環境があれば、どんな人よりも圧倒的に活躍できる素地はあるのではないかと、本気で思うのです。だから、日本人はどことなく自信がないせいか、価値ある意見がなかなか相手に伝わらないのはもったいない。もっと自信を持っていいのでは、と感じました。
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PLDの参加者は170名余りが世界37カ国から集まりましたが、国籍も業界も多様な中で意思決定するのは非常に難しいなと感じました。
モジュールごとに7〜9名ほどのチームに分かれて各チームにリーダーを立てます。私も投票で選ばれてリーダーを務めましたが、みんな自分の意見をしっかりと持っていて、必ずしも正解がハッキリしているわけではありません。そんな中でなんとか意見を集約し、うまくアレンジして一つの答えにしなければならない。
けれどもあえてバックグラウンドの異なる人を集め、ある種の異分子を入れることでイノベーションが起こるのは、確かだと感じました。
例えば、PLDでは「アルムナイチャレンジ」というのがあったのですが、ハーバードの卒業生が勤める会社から実際のデータを提供してもらい、秘密保持とコンサルティング契約を結び、3カ月ほどかけて新規事業の立案および業務改善の提案を行いました。
コンサルティングですから、当然コンサルファームで働くプロの意見が最も優れているのではないかと考えていましたが、意外とアメリカ空軍で働く人の課題意識とビジネス上の課題がリンクすることもある。正直、私が持っている知識よりも多面的で参考になると感じました。実際、チームでプレゼンした提案が採用され、コンサル先の会社で実行してもらっています。
ハーバードは「We educate leaders who make a difference in the world.(世界で変革を起こすリーダーを育てる)」をミッションに掲げていますが、ことあるごとに教授からは「変化を起こせ」「変革しよう」と言われます。世の中を変えるのは簡単なことではありませんが、身のまわりからでも変化を起こすことが大切なんだと、プログラムを通じて感じました。
確かに、私自身も大きな組織で働いていると、変化を起こすことに難しさを感じることもあります。私のミッションは北米で新規事業開発やM&A、PMIを行い、組織に資することですが、動く予算も大規模なので、それこそさまざまな段階での意思決定が必要となります。ですから、私一人で変えられることにも限界はある。
だけれども、そもそもいま、私がこのアメリカにいられるのも、かなり挑戦的なことではあるんです。アメリカの会社を買収したことに伴いアメリカへ赴任したのですが、「自分がアメリカへ行ってPMIに関わりたい。さらにその先の北米での新規事業開発やM&Aの立案・実行を行いたい」と、機会があるたびに言っていました。そして結果的にアメリカへ来ることができた。
日本の大組織だって、本気でやりたいという思いがあれば、まかせてくれる余地、身のまわりに変化を起こせる可能性は大いにあるんじゃないかと思うのです。
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日本人のポテンシャルはグローバルで考えてもかなり高い。だからこそ、自分の可能性を目の前の世界だけにとどめず、「自分たちも世界に伍していけるポテンシャルがある」という意識改革さえできれば、さまざまなことに挑戦できるはず。自分の想像できる世界の中だけで行動しようとせず、勇気を持って一歩外の世界に踏み出せば、キャリアの可能性も広がるのではないでしょうか。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=352166

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