「プラシーボ効果」が治療として確立・・・人間の精神と肉体はまだまだ計り知れない能力が秘められている

薬や注射を必要としない「プラシーボ効果」=思い込み効果による治癒が注目を集めてきている。今後はも薬に頼らない治療法がどんどん増えていくだろう。

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2018.11.09の記事より

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プラシーボ(偽薬)効果とは、薬理作用のないものを本物の薬であると「思い込ませること」によって、治療効果をもたらす反応のことである。大半の場合、乳糖や澱粉、生理食塩水などを実際の薬同様カプセルに入れて用いられる。経験的に“効果”があることは古くから知られているが、まだまだ医学界では認められておらず、世間的にも信じられていない。
 だが、プラシーボの生化学的基礎が発見されるに至り、遂にプラシーボの効果が認められ始めているというのだ。

 米有名紙「The New York Times」(11月7日付)によると、医学界からプラシーボが排斥されるきっかけを作ったのは、意外なことに18世紀アメリカの政治家だったベンジャミン・フランクリンだったという。当時、ドイツ人の医師メスマーが、目に見えない“動物磁気”を使った治療を行い、人気を博していたが、これに目をつけたフランスのルイ16世は、科学アカデミーのメンバーと、当時在フランスアメリカ合衆国全権公使だったベンジャミン・フランクリンを動物磁気の調査のための委員として任命。実験の結果、動物磁気の存在は否定され、患者の“想像力”により病が治癒したとされた。この結論により、“想像力”や“主観性”が医学から排除され、近代医学の開花し、ワクチンや抗生物質の発見へと繋がっていったという。
 しかし、フランクリン以来300年も続く医学界の認識を変えようというのが、ハーバード・メディカル・スクールのテッド・カプチャック教授らだ。教授らの研究により、これまでに以下のような驚くべき発見がされているのだ。
 そもそもプラシーボは「プラシーボであること」を隠すことで効果があると信じられているが、カプチャック教授によると、患者にプラシーボであることを明かしても、十分な効果があったという。
「The Guardian」(2017年5月22日付)によると、ある実験では、80人のIBS(過敏性腸症候群)の患者を、プラシーボとラベルのあるピルを飲むグループと、まったく治療を受けないグループに分けたところ、3週間後にはプラシーボのピルを飲んだグループに劇的な改善が見られたそうだ。

 また、医者と患者の信頼関係がプラシーボの効果をあげる作用があることも実験で判明したという。
 IBSの患者を3つに分け、1つ目のグループには本物の鍼師だが、ハリを刺さない偽物の治療、2つ目のグループには偽物の鍼師による患者とのコミュニケーションに重点を置いた入念な治療を施し、3つ目のグループにはまったく治療を施さなかった。その結果、2つ目のグループのIBS患者が最も症状に改善が見られたそうだ。
 一方、プラシーボは決して“主観的な”効果だけではないことも判明している。カプチャック教授らが行った2012年の研究では、ドーパミンに作用しているCOMTと呼ばれる遺伝子がプラシーボに関係していると判明。プラシーボに効果があると人とそうでない人との違いも、COMTへの反応の違いによることが分かっている。
 これでプラシーボの生化学的な基礎が判明したわけだが、カプチャック教授にとってこの結果は好ましくもあり、同時に好ましくもないものだった。COMTとプラシーボの関連が明らかになったことで、プラシーボを科学として取り扱う道が開けた一方、こうした量的な研究への還元はプラシーボを別のものに変えてしまい、「ルーティン化されたケア」を生み出す危険があるからだという。
「私は科学を愛していません。ただ患者を癒す方法を知りたいのです」(カプチャック教授)
 カプチャック教授は、治療の中心には患者と医者の相互関係があると信じており、効果的な治療として、ケアの在り方を質的に変えたいと願っているのだ。さらに、教授によれば、これまでのプラシーボ実験の結果から、COMTで全てを説明することは不可能であり、身体化認知(embodied cognition)という無意識の認知作用が働いている可能性があると指摘している。無意識のシグナルが体中に送られ、その結果として症状を和らげる化学物質が放出されるようになるというのだ。
 まだこのことは実証されていないが、「異なる条件においてプラシーボの効果を示す十分な研究結果が得られれば、医学界を説得できるものと思います」とカプチャック教授は期待を寄せている。とはいえ、“科学的な実証”が、「ルーティン化されたケア」を生み出す可能性はどこまでもあるだろう。カプチャック教授はこの苦境をどうやって乗り越えるのだろうか? また、カプチャック博士は考慮に入れていないようだが、患者の身体に手をかざして治療するレイキ療法も一種のプラシーボとして見ることも可能だろう。現に米ハーバード大学のナタリー・トレント博士は、レイキ療法を科学的に研究している。こちらも含めて、今後の研究に期待したい。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=349969

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