【高タンパク質食の問題】良質なタンパク質を摂取することは体の機能を維持するのに必要な事です。しかし、摂り過ぎは長期的な視野から見てよくありません。

高タンパク質食の問題

良質なタンパク質を摂取することは体の機能を維持するのに必要な事です。しかし、摂り過ぎは長期的な視野から見てよくありません。

もちろんタンパク質は大切です。しかし、タンパク質が大事=高タンパク質食をする、という流れは非常に短絡的な考えなのです。特に習慣的な高タンパク食(1日当りタンパク質2g/体重kgを超えるもの)はお勧めできません。個々の運動量を考慮しながら、1.0g~1.6g/体重kgまでにするべきです。

高タンパク質食、特に動物性タンパク質を多く含む食事では、タンパク質の消化から生じる有害物質の蓄積が問題となります。高タンパク質食はすべての人に適していることはありません。

タンパク質は消化され、その後代謝されるときに副産物がでます。基本的にタンパク質に含まれる窒素分子はアンモニアに分解され、最終的にに尿素に代謝されます。その後、尿素は肝臓と腎臓によって除去され排泄されるという流れです。

※このアンモニアや尿素をデトックスする処理能力には個体差があります(CPS1遺伝子多型の影響など)。また高レベルのタンパク質は生理的に高レベルのアンモニア蓄積を促します。

まず高タンパク質食は高アンモニア食だと考えるべきです。(特に、CBS、CPS1、NOS、MTHFR A1298CなどにSNPsが見つかった場合は注意が必要です。)

アンモニアの最大の問題は血液脳関門をすり抜けてしまうことです(J Cereb Blood Flow Metab. 1984 Dec;4(4):516-22)。アンモニアは言うまでも無く神経毒であり、あらゆる精神疾患に結びつきます。

過剰となったアンモニアを解毒するのにBH4という酵素が働きます。ところが、高レベルのアンモニア処理に追われてしまうと、BH4はセロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を作るためにも利用されるため、高アンモニアによるBH4不足はうつ症状や不安を引き起こす可能性があります(Pharmacol Ther. 2016 Jul;163:82-93)。

(ただし、BH4がアンモニア解毒に使用される量は、神経伝達物質に利用される量ほど多くはありません。)

BH4は他にも血管を弛緩させる(そして血圧を安定化させる)ために必要な一酸化窒素(NO)を活性化させる酵素にも必要です。しかし、BH4が不足してしまうと、NOの合成酵素であるNOSが増加してしまい、このNOS過剰はフリーラジカルを産生してしまいます(Curr Pharm Des. 2014;20(22):3548-53)。実際にこの機序によって、高タンパク質食は血管収縮や血圧に影響を与えることが指摘されています(J Nutr, 137, Issue 12, 1 Dec 2007,2814)。

高タンパク質食は硫黄代謝においても影響を及ぼします。硫黄代謝ではCBSという酵素が中心となって働きますが、CBS活性がより強くなると、高レベルのアンモニアをもたらし、グルタチオンという抗酸化酵素を低下させます。

動物性タンパク質の摂取が多くなると、IGF-1(インスリン様成長因子)やインスリンの活性を高め過ぎてしまい、腫瘍の増殖を促進させます(Novartis Found Symp. 2004;262:247-60)。

動物性タンパク質は高カルニチン食となり、もちろん恩恵もありますが、一方で悪玉菌によってTMAOという有害物質をつくってしまい、これが心臓病や大腸がんなどの原因となってしまうことがあります(Nature Medicine volume 19, pages 576–585 (2013))。

他にも、二次胆汁酸過多やヘム鉄過多により発がんの可能性もあります(ここは多くの報告があります)。

高タンパク質食は、表向きには確かに有益となる部分が浮き出てしまうため、後々のリスクを忘れてしまいがちです。短期的な効果は長期的な効果をもたらすとは限りません。多くの疫学調査や基礎研究でも示すように、高タンパク質食は陰でさまざまな弊害を生みます。それだけに要注意なのです。

タンパク質は大切です。しかし、タンパク質が大事=高タンパク質食をする、という流れは非常に短絡的な考えなのです。

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