太りたくても太れない人
「太りたいのですが、なかなか太れません」という相談がよくあります。やせ型でBMIが19未満のようなタイプは日本人女性に結構多いです。
肥満は万病の元となりますが、やせ型は実はもっと危険となることがあります。
たとえば、医学論文誌ランセットでは、低BMIのやせ型は、高BMIの肥満型と同様に死亡率が上昇することが発表されています(Lancet. 2009 Mar 28;373(9669):1083-96)。死亡率だけでなく、やせ型はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のような疾患にもかかりやすいこともわかっています(PLoS One. 2015; 10(4): e0115446)。
日本人の高齢者研究においても、低BMIが他のグループよりも死亡リスク、心臓疾患率、ガンの発症率がそれぞれ有意に高かったことが発表されていますし(J Am Geriatr Soc. 2007 Jun;55(6):913-7)、韓国の研究でも低体重者は死亡率が高いことを疫学にて証明しています(Public Health Nutr. 2016 Jul;19(10):1751-6)。
さて、このような太りたくても太れない人はどのようにして正常BMIや正常体重にたどり着けることができるでしょうか。
まず、このようなタイプの多くが胃腸の消化力が弱いことが言えます。つまり、食べてもきちんと消化されていないのです。その理由に、咀嚼回数の減少、胃酸の不足、消化酵素の分泌不足が考えられます。
(ひと口30回以上)きちんと咀嚼をすると、栄養素(糖質、アミノ酸、脂肪酸)の吸収率が上がることがわかっています。よって、早食いや早飲みをやめ、まずはよく噛むことからはじめてください。
つぎに、胃酸の不足です。タンパク質摂取不足や制酸剤服用などによる胃酸低下なども考えられますが、そもそも遺伝的要因によりタンパク質をきちんと食べているが成果が上がらない人も結構います。そういう人は、食前パセリ、食前酢の物、食前ペパーミント、食前しょうが汁などをおすすめします。これらは胃酸分泌を促進させる効果があるため、欧米の栄養学では推奨されることがあります。
そして、消化酵素ですが、これは消化酵素を強化するサプリメントを利用するのもよいでしょう。ものにもよりますが、結構な成果が見受けられます。
また、やせ型の人が正常な体重を取り戻すのに、手っ取り早い方法が、「筋肉をつける」ことです。やせ型の人の多くは、筋肉量が本当に少ないです。(※筋肉をつける=やせる、という図式をイメージする人も多いかもしれませんが、そうではありません。適正体重に向かうと考えてください。)
筋肉を増やす(←適度に)と、当然、筋肉分の体重の増加が見込まれます。さらに、基礎代謝がぐんと上がりますので、体はエネルギーを取り込もうと空腹を感じるようになります。こうして、自然と食事量も増えていきます。また、意外かもしれませんが、やせ型の多くが隠れ脂肪肝であることが多いです。筋肉を増やしていけば、(食事内容にもよりますが)このような内臓脂肪過多は次第に減少しはじめます。
過度な筋トレをしない限り(=適度な筋肉であれば)は、脂肪がつきにくくなるということはなく、適度な脂肪がつきはじめます(←やってみたらわかります)。このとき内臓脂肪よりも皮下脂肪型へと変わっていきます。筋肉量を効率よくつけるにはビタミンD濃度を維持しているかどうかにもかかわります。適度な日光浴は現代人には必要です(魚や干しシイタケでもとれます)。
やせ型の人に推奨する食事内容ですが、炭水化物・タンパク質・脂質、これらのうち、どれも欠けないようにバランスよく食べて、良質なものを選ぶといいでしょう。良質な食材は、ビタミン・ミネラルの含有量が自然と高くなっているものです。
太りたくても太れない人、このような人はふくよかな人よりも実は不健康であることが多く、そのために、上記のようにひと工夫して、生活スタイルを変えてみてください。決して難しいことではありません。続けてさえいれば、良結果をもたらすはずです。
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