圧力鍋で栄養価は落ちるかどうか?

「圧力鍋で栄養価は落ちるかどうか?」

栄養の勉強をしていくと、まず変えるべきは調味料で、次に変えるべきは調理法と調理器具です。

そして、数年前から、多かった質問が「圧力鍋で調理した場合、栄養価は落ちるか?」というものです。ということで、今日は、圧力鍋について簡単にまとめていきます。

圧力鍋の利点は、なんといっても調理速度が圧倒的に速いことです。これは蒸気が逃げずに活発化しているため、120℃くらいまで温度が上がるからです(ものによりますが)。さらに、おいしく仕上がります。

しかし、「圧力」という言葉から連想してしまうためか、多くの人が懐疑的でもあります。それは栄養素や栄養価を破壊してしまうのではないのか?ということです。

先に結論から言うと、「圧力鍋の栄養価は大して問題なさそう。むしろ栄養が保持されている可能性の方が高い」です。

圧力鍋における栄養価の保持についての研究があります(Plant Foods Hum Nutr. 1995 Feb;47(2):125-31)。この研究では、「圧力鍋による調理法はビタミンCやβカロテンの栄養素を比較的保持していた」というもので、研究者らは圧力調理を推奨しています。

イタリアの研究では、調理後のブロッコリーの栄養価を比較した試験で、圧力鍋による調理は、ボイルや蒸し料理よりも有意にビタミンC量を保持し、さらにスルフォラファンについてもほとんど損失がなかったことを発表しています(J Food Sci. 2007 Mar;72(2):S130-5)。ちなみに、ボイルや蒸し調理ではスルフォラファンはほとんど検出できなかったそうです。

他の研究でも、圧力調理された豆類(ひよこ豆、空豆、ささげ豆、レンズ豆など)は、栄養成分にさほど影響しなかったとしています(Int J Food Sci Nutr. 2004 Sep;55(6):441-8)。ただし、ビタミンB1が減少していたそうです。また、圧力調理した豆タンパク質の消化率も79.8%と非常に良好な結果をもたらしています。

圧力調理とボイル調理の比較試験では、圧力調理の方が有意にビタミンC量を維持しており、タンパク質の消化率も良かったことが発表されています(J Food Sci Technol. 2010 Oct; 47(5): 579–581)。さらに、圧力調理によってタンニン、トリプシン阻害成分、フィチン酸などのいわゆる抗栄養素(=反栄養素)の量を減少させることもわかっています。

また、ミネラルに関しても、圧力鍋で豆類を調理したところ、亜鉛の高い濃度を保持していたと発表されています(Food Nutr Res. 2014 Feb 11;58)。

以上、いくつかの研究を見る限り、圧力鍋による栄養損失は多少あるものの、他の調理法に比べると栄養価の保持は優れている可能性があります。

ただし、水分量によって栄養価の損失度合が変わりますし、たとえどのような調理法でも調理時間が長くなるほど、栄養価は下がりますので、その点は注意が必要です。しかし、やはり余裕があるのなら、私は低温調理をおすすめします。

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