部屋に新鮮な空気を入れる意味・・・二酸化炭素レベルが高いとさまざまな障害を生んでしまうため、酸素だけに焦点を当てるだけでなく、空気全体として捉えていく必要がある

部屋に新鮮な空気を入れる意味

看護の母として知られる、かのナイチンゲール(1820-1910)は看護士の必要性を証明しただけでなく、むしろ本当の偉業は「日光浴、新鮮な空気、衛生環境」を取り入れたことにあります。これにより彼女は病院内の死亡率を劇的に低下させたという記録があります。

これは当時の衛生環境だから功を奏したのであって整備された現代システムには必要のないことでしょうか。いいえ、違います。むしろ現代こそ必要です。しかし、この新鮮な空気の重要性は棚に置かれてしまい、それによって知らないうちに多くの被害を受けているようにさえ思います。

ということで、今日は、「新鮮な空気」がこれほどまでになぜ重要かを再確認していきます。

空気といっても私たちが必要としているのは酸素のことだから、部屋にそれなりに酸素があれば健全に生きていけるのでは?と思うかもしれません。しかし、ここであえて「空気」と指しているにはワケがあります。絶対酸素量も当然鍵となりますが、部屋の空気はその組成が重要となります。たとえば酸素が足りていても、二酸化炭素量が多いと私たちの体内のパフォーマンスや免疫は低下するのです。

ペルーの首都リマにある8つの病院での報告では、換気と院内感染率の関係を調べたところ、大きな窓や扉が開いて換気が良い病棟ほど、空中感染率が圧倒的に低かったことがわかっています(PLoS Med. 2007 Feb; 4(2): e68)。

この研究では、50年以上前に建てられた建物は、大きな窓と扉、そして高い天井が特徴的で、現代建てられた自然換気システムの部屋よりも換気能力が高かったことが示唆されました(40対17 , p<0.001)。空中感染のリスクは、高い天井と2つ以上の大きな窓を備えた古い施設では、有意に低かったのです。 古い建物の方は現代システムのものよりも風速が4分の1ぐらい低かったのですが、換気能力は高かったことがわかりました。古い建物の方は自然な気流が得られるように設計されていました。そして、調査によると結核感染率は近代病棟では33%と高かったのですが、換気ができる古い施設では11%でした。 これは空気の質の違いによって起きるものです。特に二酸化炭素CO2の量が低下することがポイントとなります。 ある研究では、学生寮の部屋で、換気が睡眠と翌日の集中力・パフォーマンスに及ぼす影響を調べたところ、部屋の換気によってCO2量が低下したときに睡眠やパフォーマンスの質が上がることが報告されています(Indoor Air 2016; 26: 679-686)。 室内でCO2量が上がり、私たちがそれを多く暴露してしまうと、眠気、目の炎症、集中力低下におちいる可能性があります。しかし、換気が十分で新鮮な空気を取り入れている室内ではCO2のレベルが下がり、これらの症状が劇的に回復します(Environmental Health Perspectives,Dec 2012,vol.120,12 1671-77)。 空気中のCO2レベルは微々たるものだから、多少の違いがあっても酸素の増減よりは影響を与えないと思うかもしれません。実際に専門家の中でもそう言う人は多いです。しかし、上記の研究では、CO2レベルが1,000ppmの場合、600ppmに比べて、パフォーマンスに有意な減少が起こっています。 カリフォルニア州の調査では、州内の学校の教室では2,200ppmという、基準の2倍以上の二酸化炭素レベルがあり、またオフィス内でほぼ3倍のレベルに達していました。そこで、室内の換気率を上げたところ、病欠や欠勤率が大幅に減少し、さらに作業効率や経済的利益が上昇したことが報告されています(Indoor Air,Dec 2013; vol23,6,515-528)。 テキサス州で行われた調査でも、学校教室の21%でCO2濃度が3,000ppmを超えていました(Corsi R L et al,Indoor Air 2002)。当然これは効率的な学習を生みません。 空気は栄養です。酸素は効率的なエネルギーを生む重要な賦活剤ですが、二酸化炭素レベルが高いとさまざまな障害を生んでしまうため、酸素だけに焦点を当てるだけでなく、空気全体として捉えていく必要があるのです。 家庭の部屋に新鮮な空気を入れることは以上のようにとても重要な意味があります。 https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1016698145177220&set=a.122416054605438&type=3&theater

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