「沢尻エリカ逮捕は政権の指図」元首相も認めた陰謀論は本当か

◆沢尻エリカ容疑者の逮捕は「政権ピンチを救う」ため!?
逮捕された沢尻エリカ容疑者
沢尻容疑者は「桜を見る会」疑惑から国民の目をそらすために逮捕された――そんな陰謀論を首相経験者である鳩山由紀夫氏がSNSでつぶやいた。これは驚くべきことである。
 女優の沢尻エリカ容疑者が薬物所持で逮捕されたことを受けて、一部の有名人やジャーナリストらが、耳を疑うようなことを言い始めた。

「政権がピンチとなると芸能人が薬物で逮捕される」というのである。

 ご存じのように、ここ最近、安倍政権は「桜を見る会」について、「参加ツアーの金はどこから出てるんだ」「税金を投じる政府の行事を私物化しているじゃないか」なんて感じで野党や一部マスコミから叩かれていた。しかし、それが今回の逮捕で、ニュースもワイドショーもエリカ様一色。「桜を見る会?ああ、そんなのあったね」なんてムードになってきている。

 このあまりにラッキーな展開がゆえに、「これらはすべて安倍政権が仕組んだもので、沢尻容疑者はスケープゴートにされた」――と主張する人たちが現れているのだ。

 これはつまり、警察や厚労省には、いつでも好きな時に検挙できる薬物芸能人リストのようなものが存在して、官邸から「誰か有名どころをパクちゃってよ」という非公式なホットラインを受けた上層部の命を受け、現場が逮捕状を請求する、というドラマ「相棒」で描かれるような権力の腐敗が現実に起きているというのだ。

 もちろん、この主張に対しては冷ややかな見方も多い。「頭は大丈夫か?」「いくら安倍首相憎しとはいえ妄想がすぎる」などと失笑している人たちもたくさんいる。「政権がピンチになると、北朝鮮からミサイルが飛んでくる」説と同じような「陰謀論」だと吐き捨てる人も多いのだ。が、ここにきてこの話を笑い飛ばすことができない展開になってきている。

 なんと内閣総理大臣経験者、しかもちょっと前まで首相の椅子に座ってああだこうだと官僚に指示を与えていた御仁が、この陰謀論を「正しい」と断定したからだ。

◆首相経験者が陰謀論を認めたという事実の重み
《沢尻エリカさんが麻薬で逮捕されたが、みなさんが指摘するように、政府がスキャンダルを犯したとき、それ以上に国民が関心を示すスキャンダルで政府のスキャンダルを覆い隠すのが目的である。》

 このようなツイートをしたのは、鳩山由紀夫氏。そう、2009年9月から10年6月まで、旧民主党時代の第93代内閣総理大臣を務めた人物だ。

 まがりなりにも、この国の最高権力者だった人間が、沢尻容疑者逮捕を「政府のスキャンダルを覆い隠すのが目的」だと認定したことの意味は極めて大きい。日本の内閣総理大臣は、自分の都合が悪くなると、デスノートに名前を書き込むノリで、芸能人を薬物でブタ箱送りして世間の批判をかわす、という政治手法を使う、と「経験者」が公式にお認めになったということになるからだ。

 これは一部の有名人やジャーナリストのような「外野」がああだこうだと主張するのとは、まったく次元が違う。自身がそのポストに就いていたわけだから、「そこまで断言するということは、あなたもこの裏ワザを使ったの?」という、在職中の「検証」も必要になってくるからだ。

 例えば、鳩山氏は首相に就任する前から、自身の資金管理団体「友愛政経懇話会」の収支報告書虚偽記載問題が叩かれていたのだが、就任して3ヵ月後に、政権を揺るがしかねないスキャンダルに発展している。

 09年12月24日、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反罪で、会計事務担当だった元公設第1秘書を在宅起訴、会計責任者だった秘書を略式起訴した。一方、鳩山氏自身は「嫌疑不十分」で不起訴となった。

 誰も逮捕者を出していない「桜を見る会」でもこの大騒ぎなので、当時の野党もマスコミも、「クビの取りどころ」だと鼻息が荒くなった、というのは容易に想像できよう。

 そのテンションをわかっていただくために、今も昔も、野党として政権批判には定評のある「しんぶん赤旗」の怒りのコメントを引用させていただこう。

《虚偽記載総額は4億円を超えました。同事件では、首相はまともに説明責任を果たしておらず、国政の場でも全容解明が引き続き重大課題となります》(2009年12月24日)

◆安倍政権最大のピンチでなぜ芸能人逮捕をしなかったのか?
 が、腑に落ちないのは、森友・加計学園問題である。

 ご存じのようにこの問題は、「首相自身のスキャンダル」ということで、野党やマスコミが1年以上の長きにわたって追及キャンペーンをした。また、文部事務次官だった前川喜平氏という「告発者」まで登場して、安倍政権はやりたい放題だと強く世間に印象づけた。

 そのような意味では、安倍政権にとってあれ以上の「ピンチ」はなかったはずだ。

 しかし、この問題の最中に逮捕された“大物芸能人”はいない。2017年5月に、元KAT-TUNの田中聖さんが大麻で逮捕された。しかし、2013年9月にジャニーズ事務所を退所していることに加えて、ご本人も容疑を否認していたということで、マスコミもそこまで大騒ぎしていない。(後に証拠不十分で不起訴処分)

 もしこれでスキャンダルを覆い隠そうとしたのなら、完全に失敗である。あまりにもツメの甘い素人仕事だと言わざるを得ない。

 厚生労働省のデータ不正疑惑、重要閣僚の不祥事という、言ってしまえば政権の致命傷にはならないスキャンダルで、「薬物芸能人逮捕」というカードを切っているのに、なぜ森友・加計学園問題という、政権の屋台骨を揺るがすスキャンダルではこのカードは使われていないのか。

 あの時は使えない理由でもあったのか。官邸しか知らない、このカードを使う条件があるのか。それとも、そんなカード自体もともと存在しないのか――。

 野党の皆さんは、安倍首相の疑惑を追及するのも結構だが、鳩山由紀夫氏を引っ張り出して、あそこまで断言する根拠を尋ねてみてはいかがだろうか。
リンクより抜粋

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=351359

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