腸内細菌のバイオフィルム…生体における悪玉菌感染や日和見感染は、80%がバイオフィルムが関与している

腸内細菌のバイオフィルム

私が腸の応用編について説明するときに「バイオフィルム」のことを話します。しかし、バイオフィルムのことを知らない方が多いので、今日は簡単にまとめておきます。おさらいしておいてください。

バイオフィルムとは、簡単にいえば、微生物のコロニーで、つまり巣窟です。たとえば野生の草食動物を想像してみてください。1匹では肉食動物に狙われやすいですが、集団でいることで外敵から身を守り、さらに闘うこともできます。また大切な食糧源をそこで得ることができるように、テリトリーとして張っているわけですね。

微生物も同じく、単体でいるよりは集団化した方が環境変化や外敵から身を守り、種を維持できます。彼らは細胞から特定の多糖類(EPS)やタンパク質を分泌し、外界との境界バリアを作り、コミュニティを形成しています。この立体的な構造をフィルム(バイオフィルム)というわけですね。このフィルムの中では仲間同士であらゆる情報伝達を行っています。時間とともにバイオフィルムは厚みを増し、コロニーが巨大化していきます。

さて、腸内細菌へのアプローチをするときに、このバイオフィルムについて考える必要があります。なぜなら、生体における悪玉菌感染や日和見感染では、その約80%にバイオフィルムが関与しているからです(Curr Pharm Biotechnol. 2015;16(2):94-111)。

微生物のバイオフィルムは絶えず変化し、炎症を刺激します。さらに、血管や腸の透過性を高め、免疫細胞マクロファージやプロバイオティクスの作用を妨げるのです。病原体がバイオフィルムを形成し、時間がたつほどに、検査で検出してそれを除去するのが次第に難しくなります。(検査で判明するときには、かなり大きく強固なバイオフィルムが形成されていると思ってください) 特に宿主の生体で酸化ストレスが亢進しているとき、免疫が低下しているとき、また有害金属の曝露が進んでいるときなどは、素早くバイオフィルムが構築されていきます。

さらにやっかいなことに、バイオフィルムは、多くの抗生物質治療に耐性があり、一般的な抗生物質の投与はバイオフィルムの形成をむしろ誘導してしまうのです(J Am Chem Soc. 2013 Feb 27; 135(8): 2927-2930)。

たとえばIBD(炎症性腸疾患)患者では、抗生物質治療が効果的であるかのように見えましたが、その後、抗生物質に耐性のある細菌がバイオフィルム内で生き残ってしまい、それが原因で炎症が再発しています(Pathog Dis. 2013 Feb; 67(1): 25-38)。
 

幸いなことに、こうした強固なバイオフィルムのバリアを(少ない副作用で)壊していく自然療法があります。

たとえば、クルクミンです。クルクミンは抗菌や抗真菌作用だけでなく、抗バイオフィルム効果もあります(Mikrobiyol Bul. 2013 Jan;47(1):192-4; Biomed Res Int. 2014; 2014: 186864)。オレガノ(オイル)の成分であるカルバクロールは、バイオフィルムに対して効果があります(J Med Microbiol. 2007 Apr;56(Pt 4):519-23)。

他にも、ベルベリン(Int J Antimicrob Agents. 2009 Jul;34(1):60-6)、 マスティックガム、エキナセア、ニンニクの成分(Molecules. 2015 Dec 26;21(1):E29)、リンゴ酢などのお酢やビネガーに含まれている酢酸(Adv Wound Care (New Rochelle). 2015 Jul 1; 4(7): 363-372)、タンパク質分解酵素(Appl Microbiol Biotechnol. 2007 May;75(1):125-32)などがバイオフィルム阻害効果があります。

ただし、注意しなければならないのは、これらを安易に利用しても細胞の代謝回路を適切に回すようになっていないと腸内細菌叢を正常にさせるのは難しいこと、そして何よりもバイオフィルムは金属を抱合しやすいということです(FEMS Microbiol Ecol. 2006 Mar;55(3):479-91)。

バイオフィルムのコロニーでは、カルシウムや鉄のようなミネラルだけでなく、私たちの体に有害な鉛や水銀などの重金属やアルミニウムのような軽金属を多く抱えているため、バイオフィルムが壊れた後、有害金属の解毒と曝露に追われてしまう恐れがあります。これは非常に危険です。実際に自閉症患者とバイオフィルムは大きく関係があり、自閉症患者のバイオフィルムを壊すと、その後非常に高い重金属があらわれることはよく知られています。

よって、バイオフィルムへのアプローチの前に、各組織の細胞が解毒をできる準備や体制を整っていく必要があるのです。そうしないと、バイオフィルム崩壊によって拡散された有害成分が体じゅうに回ってしまい、また初めから治療を取り組まないといけなくなるからです。

バイオフィルムの特定と検出は非常に難しく、かつ抗生物質に耐性をもつため、このような特性を熟知した上での方法と、適切な代謝回路を回せるようになること、などが必要となってきます。

参照:https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1100381860142181&set=a.122416054605438&type=3&theater

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