【生きた菌は重要ではない】生きた菌を腸に届けること自体は重要ではなく、菌体成分や菌の分泌物そして何より菌の数こそが大事になる。

死んだ菌こそ大事

「善玉菌の宝庫である発酵食品を食べても胃酸で殺菌されるし、加熱すれば菌は死んでしまうからあまり意味がないのでは。」

こういう声が多いのも無理がありませんが、腸内環境を整えていき免疫力をあげる効果は実はこの「死菌」こそが大きいのです。確かに私たち現代人の腸内環境を健康的に整えていくには菌の多様性が大事であり、さらに善玉菌といわれる腸内を守る微生物を増やしていくことが鍵になりますので、どうしても「生きた菌」に焦点をあててしまいますが、実はそれよりも大事なものがあるのです。

※今回はできるだけ専門用語を省き、簡略化して書きます。

免疫には機能的に2つの仕組みがあります。自然免疫と獲得免疫です。簡単に言うと、自然免疫は生まれた時から自然に備わっている免疫のことです。また、獲得免疫とは生まれた後に経験しながら獲得していく免疫のことです。

たとえば私たちが傷を負ったり、腐敗したものを口にした場合に、そこから病原菌が侵入したとします。そうすると、自然免疫のセンサーが反応し、まずは最初の免疫が活性されます。マクロファージや顆粒球といった免疫細胞(白血球)が侵入してきた病原菌や化学物質などを食べていきます。しかし、これらの防御では手に負えなくなると獲得免疫が作動し、病原体に向かって目印をつけます。これが抗体といわれるものです。抗体は目印という役割だけでなく、同時に病原体を無害化する働きもあります。こういった一連の流れが免疫にはあります。

しかし、獲得免疫の働きはそもそも万能ではありません。なぜなら、抗体の製造には5~7日ほどかかるといわれており、さらに同じタイプの病原体でもほんの少しでも変異していれば識別できなくなるために、また新たな抗体を作る必要があるからです。

アレルギーは、獲得免疫の過剰反応によって起きるものです。アレルギーになる人は、免疫細胞(白血球)がなぜか通常の型とは異なる抗体を作ってしまうことに起因しています。通常の型とは異なる抗体を作ってしまうことで、この抗体がアレルゲン(食べ物、花粉など)とくっついて肥満細胞を刺激し、炎症物質を放出してしまうのです。

アレルギーなどを発症しない健常な人は、獲得免疫より自然免疫の方を活性していることにより、アレルギーが起こりにくい状態になっています。免疫を正常に機能させていくには、最初の段階である自然免疫の働きが重要です。自然免疫を簡単に突破され獲得免疫ばかりを頼りにしていると、病原体と病原体ではない正常なものの区別が機能しにくくなるからです。

自然免疫を活性化していくには、自然免疫のセンサーを作動させることが大事です。自然免疫のセンサーは菌やウィルスそのものではなく、実は菌の菌体成分や菌の分泌物に反応しています。土壌ではなくコンクリート上で生活する近代人は特に乳酸菌の菌体成分が重要となってきます。

自然免疫のセンサーは乳酸菌そのものではなく、乳酸菌の菌体成分に反応しているため、生きた菌にこだわる必要はなく、どちらかというと菌の数が大事です。あるマウス実験では、乳酸菌をまぜたエサのグループと、加熱殺菌した乳酸菌をまぜたエサのグループを比較したところ、後者のほうが良い結果になりました。これは生きた菌そのものではなく、乳酸菌の菌体成分や分泌物に腸を正常化する要因があるからです。

また、あるマウス実験では通常のエサ、ミルクをまぜたエサ、殺菌した酸乳をまぜたエサを生涯投与したところ、殺菌酸乳したエサのグループが有意に寿命が長く、腸内フローラの善玉菌数が他のグループよりも10倍多かったそうです。殺菌酸乳とは乳酸菌を7日以上培養したのちに殺菌したものです。死菌も多く含まれるため菌数も多いようです。生きた菌では培養が2・3日しか続かず菌体成分や菌数は増えず、活性の効果も期待できません。

このように、自然免疫のセンサーを反応させることが目的のため、生きた菌を腸に届けること自体は重要ではなく、菌体成分や菌の分泌物そして何より菌の数こそが大事になってきます。包括すれば、死んだ菌こそが大事になるのです。

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