「あの子は出来が違う!」は気のせいではない。 これまで私は、小中高生3000人以上に直接指導し、5万人以上の生徒への講演会、さらに私の周囲にいる東大生たちから、いわゆるできる子(人)の“頭の中身”を垣間見る機会が数多くありました。そうした経験から、次のようなことがわかってきました。
「できる子の頭は、樹木の構造になっている」
一般的な樹木は、太い幹があり、そこから大枝が出ていて、さらに小枝が出て、その先に葉っぱがついていますね。さらに、地面の下には、根っこがあります。まさにこれが、頭の中の“姿”なのです。
できる子は自然と、または後天的に教えられて、体系化された構造が頭の中に作られているのです。
昔、算数や数学で「樹形図」というものがありましたね。あれはこの構造に似ています。パソコンでフォルダを作って分類し、その中にファイルが格納されているディレクトリ構造もこの一種です。本を見れば、初めに目次が書かれています。その目次も樹形構造の一種です。
しかし、私は、これらを一歩発展させ、葉っぱと根っこをつけたし、「思考の樹」という構造にまとめました。ただの樹形図としての分類だけではなく、具体的事例である“葉っぱ”と、背景・理由に当たる“根”まで含めて、「樹」を作ったのです。そして、これを使っていくと勉強における情報整理のみならず、人に話をするとき、プレゼンテーションするとき、課題発見、問題解決をする場合にも使えるようになっていきます。
●思考の樹
では、「思考の樹」についてわかりやすくご説明します。まずは「思考の樹」パーツです。それは、次のようなもので成り立っています。
【思考の樹】
幹→これはいちばんの中心軸で「テーマ」です
大枝→「テーマ」をさらにわかりやすくするための中項目
小枝→場合によっては大枝のことをさらにわかりやすくするための小項目
→小枝についている具体的事例や具体的問題
根→背景や理由、言いたいこと学問や勉強の世界は、この構造がしっかりとできています。子どもたちにとっては、情報(葉っぱ)ばかりであるように見えるかもしれませんが、よくみると、根があり、幹があり、そして根っこがあるのです。ただ、教えるときに、「これは幹」「これは葉」「これは根」なんていう教え方はしませんね。ですから、聞く側は、すべて同じ情報(葉)と勘違いして、まとまりがなくなり、そのうち、「訳がわからない」「何のためにやっているの?」という発言が出てきます。
●どう「思考の樹」をインストールするか
お子さんにどうすれば、このような「思考の樹」を頭にインストールすることができるかという問題です。それにはいつくかの方法があります。
(1)最もわかりやすいのは、実際に、樹木の絵を書いて、分類するということです。今、いちばんわかりにくいと思っている分野や、国語の文章を分類してみます。すると、見事に樹木になることがわかると思います。するとその樹木がイメージとしてインプットされ、記憶もされていきます。例としてモデル図を示しておきます。
(2)授業を聞くときも、樹木のどこに当たるか、分類しながら聞いていくとわかりやすくなります。テーマ(幹)は何か? 枝、葉に分けて、最後にいちばん言いたいことである根を見つける癖をつけていく。
(3)教科学習では「目次」を使う癖をつけるといいでしょう。自分が学習している場所(現在位置)は、全体の目次(マップ)のどこにあたるのかをいつも確認する癖をつけるのです。現在位置がわかると、人は安心します。車ナビゲーションシステムと同じです。目次は、構造化されていますので、自分の位置がわかりやすいのです。
(4)ノートを書くときに、樹木のどの部分にあたるのかを意識する。そして、記入は記号化して簡単にできるようにしておきます。
たとえば次のような感じです。
石田先生の近著。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
幹)テーマやタイトル
枝)1、1-1、1-2…
葉)→例)やexなど
根)→一番言いたいことは∴の記号を使う(「よって」という数学の記号。
このように、情報を分類し、そこから重要なことはなにかを読み取る訓練をするのです。このやり方、考え方は、どの教科学習でも、さらに社会人となってからも必要なことだと考えています。一生役に立つツールとして、ぜひとも子ども時代に身に付けておくといいでしょう。
リンクより
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=320099