誰にも知られず3カ月で消えた命 父不明、トイレ出産、出生届もなく…孤立した母

東京都台東区のマンションで7月、生後3カ月の女児が母親に自宅に置き去りにされ、亡くなった。出生届が出されないままの短い命だった。母親は、父親が誰か分からない女児を自宅で産んで育てようとしたが、子どもがいることを周囲に打ち明けられず、孤立を深めていた。【土江洋範、最上和喜、鈴木拓也】

 「娘の意識がない」。警視庁に保護責任者遺棄容疑で逮捕された母親のマッサージ店員、坂元愛容疑者(30)=鑑定留置中=は7月23日午前10時10分ごろ、勤務先から帰宅して119番した。長女は搬送先の病院で死亡が確認された。司法解剖で死因は判明しなかった。胃には母乳が残り、暴行をうかがわせる痕はなかった。

 坂元容疑者は帰宅するまでの約16時間、長女を自宅に放置したとして逮捕された。「生活費を稼ぐために、寝かせてから仕事に行った。出かける時は生きていた」と供述したという。

 知人らによると、坂元容疑者は東京都出身。私立大を中退した後は定職に就かず、飲食店やファストフード店などでのアルバイトで生計を立てていた。

 状況が大きく変わったのは今年2月ごろ。体調の変化に気づき、妊娠を疑い始めたが、「父親は誰か分からなかった」。捜査関係者によると、ごく一部の友人には妊娠について相談したが、中絶できる時期を過ぎていることが分かり、この話をすることはなくなったという。坂元容疑者は調べに、当時の心境を「妊娠に気づいているような、でも、気づきたくないような。現実逃避をしたかった」と供述したという。一度も病院に行かないまま、4月、自宅のトイレで長女を産んだ。

 友人や近所の人は取材に対し、出産を知らなかったと口をそろえる。2月に会ったという以前の勤務先の同僚の20代の男性は「いつもと変わらずに明るく、おなかが大きいことも分からなかった。子どもの話なんて一切出なかった」と振り返る。「周囲に気を使わせたり、干渉されたりするのを嫌がったのかもしれないが、悩んでいたのなら相談してほしかった」と話す。近所の人も「子どもがいるとは気づかなかった」と事件に驚いた。

 実家との関係も薄かったようだ。坂元容疑者は2019年12月のフェイスブックへの投稿で、実家の母親から「勤務先で孫がいないのは私だけ。同僚の会話に入れないの可哀そうと思わないの? 年ごろだから早くしないと子どもを産めなくなるよ」と言われたことを明かし、「そんな人に孫を見せたくない。妊娠してもおろす」と不快感をにじませていた。年末年始に帰省を求められても「死んでも帰らない」と書き込んだ。

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参照:https://mainichi.jp/articles/20200821/k00/00m/040/299000c?fbclid=IwAR0hrZbVGjiP9IyLJZgG4rPMHuAdNfX37Kj1U9Z-GRUwp09BJytvBMJ1tWo

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