「森の人」また受難 銃弾24発受けたオランウータン見つかる・・・現在専門の施設で集中治療を受けているが、命は助かりそうだと獣医は話している

動物として人間に最も近い存在のなのに、なぜ彼らは苦しまなければいけないのか
インドネシア・スマトラ島北部のアチェ州で負傷しているオランウータンが発見され、収容後のX線による検査で、体内に24発の銃弾が残っているのが確認された。このオランウータンは現在専門の施設で集中治療を受けているが、命は助かりそうだと獣医は話している。

オランウータンをめぐっては同じアチェ州で3月10日にエアライフルの銃弾74発を撃ちこまれた親子が発見・保護される事件も起きるなど、オランウータンの受難が続いている。

インドネシアのアンタラ通信が伝えたところによると11月28日、アチェ州南部トルモン地方にあるガンポン・テンゴ村付近をパトロールしていた地元自然保護局の担当者が負傷したオランウータンを発見した。

地元自然保護関係者などの協力で負傷したオランウータンは収容され、ただちに隣接する北スマトラ州バトゥ・メベリン・シボランギットにあるオランウータンの検疫・保護施設に運ばれた。

同施設の獣医ムーシカ氏が28日に明らかにしたところによると、オランウータンは25歳のオスで、X線検査の結果全身からエアライフルから発射されたとみられる銃弾24発が発見された。銃弾は頭部に16発、手足に4発、臀部に3発、腹部に1発残されていたという。

現在集中治療を行っているが、生命の危機はとりあえず脱したというものの予断を許さない状況には変わりなく、銃弾を摘出する手術をいつするかなど今後の治療計画などは決まっていないという。

負傷したオランウータンは「パグ」と名付けられた個体で、発見時に右目が赤くなり左目も濁るなど両目に障害が起きており、「両目ともほとんど見えない状態」というが、散弾銃を受けた負傷との関連は明らかになっていない。

3月には74発被弾したオランウータンも
オランウータンはカリマンタン島(マレーシア名・ボルネオ島)とスマトラ島北部にだけ生息する絶滅危惧種で、アチェ州などではオランウータンの生息環境である熱帯雨林がヤシ油の農園開発を目的とした開墾や人為的な森林火災で消失していることなどからオランウータンが人里や農園に近づいてくるケースが増えている。

こうしたことから農園管理者や村落住民らがオランウータンを追い払ったり、「駆除」目的でエアガンやエアライフルで撃つ事態が起きているという。

銃器所持制限が厳しいインドネシアだが、空気銃であるエアガンやエアライフルの入手所持はそれほど難しくないとされ、特に山間部や熱帯雨林で生活、労働する人達は護身用に所持していることが多いといわれている。

3月10日に発見保護されたオランウータンの母子は、推定30歳の母親の体内から74発の銃弾が発見された。一緒に保護され、生後約1カ月の子供は保護直後に栄養失調と脱水症状で死亡した(「許せない! オランウータン母子襲われ子は栄養失調死、親は銃弾74発受け重傷」)。

この時保護されたメスのオランウータンはその後の治療で容体は安定し、リハビリテーションを受けるまでに回復しているというニュースが最近インドネシアで伝えられた。

オランウータンの母子は付近の農園に侵入してエサを探していたところを発見され、母親が農園労働者からエアガンで撃たれ、被弾しながら子を連れて逃げ回った末に倒れているところを村人が発見し、自然保護局係官が保護したのだった。

2018年1月には中カリマンタン州バリト県で民家の敷地内に侵入したオランウータンを住民が射殺した事件や同年2月には東カリマタン州東クタイ県で農園を荒らしたとして農民が空気銃約130発をオランウータンに撃ちこんで殺害した例も報告されている。この時は殺害に関与した農民4人が自然保護法違反で逮捕された。

<発見したら攻撃せず報告、連絡を>

自然保護団体などによると、オランウータンには「スマトラ・オランウータン」と「ボルネオ・オランウータン」さらに最近北スマトラ州タパヌリ地方で発見・確認された「タパヌリ・オランウータン」の3種が確認されている。

今回24発の銃弾が確認された「スマトラ・オランウータン」である「パグ―」がどういう状況でいつ誰に銃撃を撃たれたのかなどは今のところはっきりとしていないというが、地元警察では自然保護法違反容疑で捜査を開始している。

発見されたのが村の近くであることからこれまでの多くの例のように生息環境の変化によりエサなどを求めて人が住む村に近づいた結果として撃たれた可能性も指摘されている。

いずれにしろ自然保護団体やオランウータン保護組織などでは「もしオランウータンを発見した場合はその場で発砲や攻撃して追い払うのではなく警察や自然保護局などにまず通報や連絡をするようにしてほしい」と呼びかけている。

マレー語で「森の人」という意味のオランウータンは、インドネシアの環境問題を考えるとき、ある種象徴的な存在と言える。その意味でも彼らの受難は断ち切らなければならない。

参照:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191129-00010007-newsweek-int

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