台風19号、東日本各地の鉄道に残した深い爪痕・・・JR各線の被害状況

10月12日から13日にかけて関東甲信越・東北地方を通過し、河川の氾濫など大きな被害をもたらした台風19号。鉄道も例外ではなく、この地域を営業エリアとするJR東日本の各線にも爪痕を残した。各地で施設や車両などに大きな被害が出ている。

■北陸新幹線の基地が浸水

 長野県長野市にある北陸新幹線の長野新幹線車両センターでは、センター自体が千曲川の氾濫によって浸水し、E7系8編成、W7系2編成の計10編成が水につかった。北陸新幹線はE7系19編成、W7系11編成の計30編成を使用しており、全編成の3分の1が被災したことになる。このほか、工場にあるメンテナンス設備も被害を受けた。

 車両センターがある場所は、長野市の洪水ハザードマップによると洪水により想定10mから20m未満までの浸水が起こることが予測されており、長野市穂保(ほやす)の堤防が決壊することでそれは現実となった。

 現在のところ、北陸新幹線は糸魚川―金沢間と東京―長野間でそれぞれ折り返し運転を行っており、東京―金沢間を結ぶ「かがやき」「はくたか」は運転を取りやめている(15日は、上越妙高・糸魚川―金沢間で臨時「はくたか」を運行する)。

 だが、全線で運行を再開したとしても、車両不足から減便が予想される。水につかった新幹線は電気設備などの修復作業が必要で、水が引いたからといってすぐに走れるようになるものではない。

 浸水した車両は、被害の状況によっては廃車せざるを得ないおそれもある。E7系・W7系1編成あたりの製造費はおよそ32億8000万円とみられ、もし何本も新造しなければならないとすれば相当なコストと時間がかかる。

 E7系は、上越新幹線でも2階建てのE4系を置き換えるために導入が進んでいる。これを北陸新幹線の救済に回すことも考えられるが、もしそうなれば、2020年度末までにE4系をすべて置き換えるというJR東日本の車両計画に影響を及ぼす可能性もある。

■東京―山梨間の交通遮断

 東京と山梨を結ぶ幹線ルートも、複数の箇所で寸断された。

 中央本線は、14日午後までに大月―甲府間が運転を再開したものの、高尾と大月の間については高尾(東京都八王子市)―相模湖間(神奈川県相模原市)の上り線、四方津(山梨県上野原市)―梁川間(同県大月市)の下り線で土砂流入が発生し、復旧の見通しが立っていない。

 東京と山梨県内や長野県を結ぶ特急「あずさ」「かいじ」、富士急行線に乗り入れる「富士回遊」は運休が続いている。中央本線の大月まではオレンジ色の中央線快速列車も乗り入れ、都内への通勤利用者も多い。影響は広範囲に及ぶ。

 鉄道だけでなく道路にも被害が生じており、中央本線と並行する中央自動車道でも八王子市と相模原市の2カ所で土砂崩れが発生。国道20号も橋の損壊や土砂崩れで一部が寸断されている。

 山梨県内から都内に向かう方法は、道路の場合は中央自動車道を大月経由で河口湖方面に向かい、そこから東富士五湖道路を経て、御殿場から東名高速道路を利用することになる。中央道の不通で高速バスも軒並み運休となっているが、山梨交通はこの迂回ルートで臨時のバスを走らせ対応している。

 鉄道の場合は、甲府から身延線で富士・静岡に出て、東海道本線または東海道新幹線を利用するという遠回りなルートを使用せざるを得ない。

 今回の被災により、山梨県・長野県へのJR貨物による石油輸送も困難になる。不通が長引くことになれば、これらのエリアでは何らかの方法で石油輸送ルートを確保することも必要になってくる。

 両毛線では、大平下―栃木(ともに栃木県栃木市)間にある永野川橋りょうで橋台の背面が流出。岩船―栃木間は再開まで1カ月程度が見込まれるという。

 水郡線は、袋田―常陸大子(ともに茨城県大子町)間で第六久慈川橋りょうの橋桁が流出。また、国土交通省の発表や報道によると、このほかに西金―上小川間で橋りょうが傾き、磐城浅川―里白石間では橋りょうが流出した。

 横須賀線の武蔵小杉駅(神奈川県川崎市)は、駅構内が冠水し使用できなくなった。このため13日は横須賀線と湘南新宿ラインの列車は同駅を通過していたが、14日初電から停車を再開した。ただ、現在も横須賀線側の新南改札口は冠水のため使用できず、南武線側の改札を使用しなければならない。

ここまでは、水郡線の一部を除きJR東日本本社が発表した「主な被害状況」に挙げられたものだ。

■まだまだ被害は多い

 だが、このほかにも被害を受けた路線や場所は多い。

 青森県の八戸と岩手県の久慈を結ぶ八戸線は、階上―久慈間で運転を見合わせている。同線の陸中中野駅(岩手県洋野町)で駅設備に大きな被害が出ているためだ。国交省東北運輸局のまとめた被害状況によると、同駅では路盤が流出したという。運転再開までには相当な期間がかかり、JRはバスによる代行輸送を計画している。

 群馬県の渋川と大前を結ぶ吾妻線は、国交省関東運輸局のまとめた被害状況によると、長野原草津口―大前間で土砂流入および電化柱の倒壊があった。同区間も運転再開まで相当な期間が見込まれるという。

 このほか、長野県の小諸と山梨県の小淵沢を結ぶ小海線も被害が大きいとみられる。ツイッター上には滑津―北中込間で路盤がえぐられている様子がアップされ、JR東日本の公式運行情報アカウントもこの現場の写真を掲載している。同線は小諸―野辺山間で当面運転を見合わせる。

 一方、運転再開の動きもある。仙台と山形を結ぶ仙山線は、JR東日本の運行状況を伝えるツイッター公式アカウントで東北福祉大前―北山間での土砂崩れ発生が伝えられたが、15日は始発から通常通り運転する予定だ。長野県を走る篠ノ井線も各地で被災したが、15日から運転を再開する。

 今回の台風19号の被害は広範囲に及び、まだ全容がつかみきれていない部分もあるだろう。また、幹線系統の被害は貨物列車による物流にも大きく影響する。被害の程度を早期に見極め、対策を練ることが求められる。

参照:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191015-00308530-toyo-bus_all&p=3

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