「世界で最も危険な火山」1位に日本の火山が選出される。その意外な事実

10月14日、九州新燃焼岳が噴火、17日には停止し一安心であるが如何だろうか?
 列島至る所に火山だらけ、火山できた島と言って過言ではない。そんな中、世界で最も危険な火山として、遠く離れた硫黄島が選出された。硫黄島は文字通り離れ島である。しかし、それを対岸の火事と考えていることは大きな間違いであることを機関は警告している。

百瀬直也(ももせ・なおや)
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先月、英国・マンチェスター大学のアルバート・ザイルストラ教授(天体物理学)が火山愛好家たちの協力を得て「世界で最も危険な火山10」を選定し、『VOLCANO CAFÉ』というブログで発表した。選出にあたっては、100年以内に噴火の恐れがあり、かつ破局的噴火となる可能性がある火山という基準が用いられている。今回、そのリストに日本の2つの火山が含まれているが、一体どのような理由で危険なのか探ってみることにしよう。

「世界でもっとも危険な火山10」に選定されたものを1位から順に並べると、以下の通りとなる。

1位:硫黄島(東京都小笠原村)
2位:アポヤケ山(ニカラグア)
3位:フレグレイ平野(イタリア)
4位:阿蘇山(熊本県)
5位:トランスメキシコ火山帯(メキシコ)
6位:アグン山(インドネシア)
7位:カメルーン山(カメルーン)
8位:タール山(フィリピン)
9位:マヨン山(フィリピン)
10位:ケルート山(インドネシア)

■なぜ、硫黄島は世界でもっとも危険なのか?

 ランキングをご覧いただければ明らかなように、1位には日本の硫黄島が選出されている。硫黄島は、数千年前に海底火山の活動によって隆起して誕生した島だ。小笠原諸島の南端近くに位置し、島の南西端には摺鉢山(すりばちやま)がそびえている。気象庁の噴火警戒レベルは運用されていないが、2012年以降「火口周辺警報(火口周辺危険)」が継続している。

『VOLCANO CAFÉ』を見ると、硫黄島でもっとも問題視されているのは、マグマによる隆起が4年に1mという世界でも珍しいペースを保っている点だ。第二次大戦中の米軍上陸(1945年)当時と比べ、なんと17mも隆起しているという。この島で破局的な噴火が起きることは、もはや時間の問題とされ、“その時”には高さ25mほどの大津波が日本列島や香港などを襲う危険があるという。1458年、バヌアツのクワエ火山が同規模の噴火を起こした際は、ニュージーランドを高さ30mの津波が襲い、それがポリネシア文化の崩壊につながった。

 明治時代に記録が開始されて以来、硫黄島では小規模な噴火がかなり頻繁に起きており、今年も8月7日に噴火している。また、小笠原諸島では、2013年に海底火山の噴火により西之島新島が出現、現在も面積を広げつつある。さらに今年5月30日には、小笠原諸島西方沖でM8.1の巨大地震も起きている。東日本大震災の発生を予測・的中させた木村政昭琉球大学名誉教授も、小笠原諸島周辺で2017年までにM8.5の巨大地震が起きると指摘しており、やはり大地震や火山噴火に十分注意しなければならないだろう。

■4位に阿蘇山が選出された理由は?

 さて、4位の阿蘇山は今年9月に噴火し、気象庁が警戒レベルを3(入山規制)に引き上げた。しかし、その後に新たな噴火が発生していないことから、レベル2(火山周辺規制)に引き下げられた経緯がある。

 過去にも噴火を繰り返してきた阿蘇山だが、『VOLCANO CAFÉ』では日本の火山の中で現在もっとも活動的であるとして、大噴火の可能性に言及している。ザイルストラ教授らも取り上げていないが、通常の噴火よりも怖いのは、以前の記事で紹介した「カルデラ噴火」(地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火)だろう。阿蘇山では、30万年前から9万年前の間に4回、巨大なカルデラ噴火が起きている。特に最後の「阿蘇4」と呼ばれる噴火は日本のカルデラ噴火として最大級のもので、火山灰は江戸にまで達したという。この時は、火砕流が九州のほぼ全域を襲った。

 今年10月に放映されたNHKスペシャル「巨大災害」では、阿蘇山でカルデラ噴火が起きた場合のシミュレーションが行われた。そして判明したのは、火砕流によって九州全域が壊滅、さらに大量の火山灰が日本列島全土に降り注ぎ、堆積するという最悪の結果だった。

 カルデラ噴火に詳しい東大名誉教授の藤井敏嗣氏は、NHKのサイト「そなえる防災」の連載で、これまで平均6,000年間隔で起こっていたカルデラ噴火が、最近7,300年間は発生していないことを踏まえ、いつ起こっても不思議がないと指摘する。さらに「もし万一、南九州で『阿蘇4』のような超巨大なカルデラ噴火が発生すれば、日本中が壊滅状態になることは確かです。地震で文明が断絶した例はありませんが、火山噴火が文明断絶をもたらすことは、7,300年前の鬼界カルデラの噴火でも実証済みです」(「カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか?」、NHKそなえる防災)とまで書いている。

 日本で大噴火の危険性があるのは、なにも硫黄島と阿蘇山だけではない。ロンドン大学のビル・マグワイヤ名誉教授は、「次に地球を襲う3つの巨大災害」を選定しているが、そのひとつとして箱根山を挙げている。理由としては、箱根の温泉地帯で吹き出す火山性蒸気に、危険な兆候が見られるからだという。

 前述のNHKスペシャルのシミュレーションでは、原発の被害にまで踏み込むことはなかった。しかし、阿蘇山でカルデラ噴火が起きた時、たとえば川内原発(鹿児島県)はどうなるだろうか。どれほど頑丈な造りにしたところで、火砕流が襲えばひとたまりもなく、噴火とのダブルパンチで日本の存続さえ危うくなるかもしれない。藤井教授は、カルデラ噴火に関する研究が日本で一向に進んでいないと嘆くが、火山学者たちの間でさらに危機意識が高まってほしいものだ。

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=330531

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