人の免疫細胞は未感染の細菌やウイルスの情報も備えている

人間の免疫は、過去に感染したウイルスや細菌の情報を基に対抗策を講じる仕組みを備えている。
この機構を踏まえて、ワクチン接種がウイルス感染への予防策として重要視されているが、摂取により重大な疾患をもたらすケースも発生している。

しかし、実際にはこれまでに感染したことのないウイルスや細菌の情報を免疫細胞が持っていることもある。これらの情報は日常的に触れているものから収集している可能性が高い。
人為的に摂取することは、むしろバランスを崩しかねない行為と言える。
免疫機構が備える情報が不足しているとしたら、人工的な環境に身を置き過ぎていることが大きな原因かもしれない。

◇人間の免疫細胞が「これまで感染したことのない細菌やウイルスの記憶」を持っている可能性リンク
<GIGAZINE>より
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細菌やウイルスに対抗する人間の免疫系は、過去に感染したりワクチンを打たれたりした際の「記憶」により、次に感染した時は効果的に病原体を排除する仕組みを持っています。しかし、近年の研究から、一部の免疫細胞は「これまで感染したことのない細菌やウイルスの記憶」を持っている可能性が示唆されています。

~中略~

細胞表面にCD4抗原を発現しているCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)は、血液やリンパ組織などに侵入した微生物やウイルスの一部(エピトープ)を認識し、ほかの免疫細胞に攻撃命令を送る役割を持っています。

ヘルパーT細胞は、一度何らかの病原体と接触すると「メモリーT細胞」となってそれを記憶し続けており、同じ病原体が再び侵入してきた場合、すぐに対応してほかの免疫細胞を刺激します。一方、まだ抗原と接触していない「ナイーブT細胞」も、新たな病原体が侵入してきた時に備えているとのこと。ナイーブT細胞が未知の病原体と遭遇した場合、免疫系が病原体と戦うために動員されるまで数日~数週間ほどかかりますが、メモリーT細胞は数時間で本格的な免疫反応を引き起こすことが可能だそうです。

スタンフォード大学の免疫学者であるマーク・デイヴィス博士の研究チームは2013年の研究で、26人の成人と2人の新生児から免疫細胞が豊富な血液サンプルを採取し、さまざまなウイルス株が持つエピトープにさらすという実験を行いました。エピトープに対するヘルパーT細胞の応答を調べた結果、成人から採取されたサンプルのほぼ全てがヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスといったウイルスに反応を示したとのこと。

ヘルパーT細胞がこれらの病原体に反応すること自体は不思議ではありませんでしたが、驚くべきことに平均して約半数のサンプルで、ヘルパーT細胞がウイルスの「記憶」を持っているメモリーT細胞であったことがわかりました。高感度の臨床試験では、サンプルを採取された成人はこれらのウイルスに感染した経験がないと示されたことから、ヘルパーT細胞は「実際には接触していないウイルスの記憶を持っているケースがある」と判明しました。

また、成人から採取されたサンプルの5分の1において、有害なウイルスや細菌だけでなくほかの無害な環境微生物にも反応する、交差反応性のメモリーT細胞があることもわかったとのこと。たとえば、HIVに反応することが確かめられたメモリーT細胞は、3つの腸内細菌や土壌に生息する細菌など、多数の一般的な環境微生物にも反応することが明らかになりました。なお、新生児のヘルパーT細胞は全てナイーブT細胞の状態だったそうです。

続けて行われたインフルエンザワクチンを5年以上接種していない成人を対象にした実験では、予防接種を受けた成人の体内ではメモリーT細胞が増加し、インフルエンザウイルスだけでなく、いくつかの異なる細菌や微生物のエピトープも「記憶」されていることが確認されました。

以上の研究結果から、人々が身の回りに存在するさまざまなウイルスや微生物に触れることで、人間の免疫は「交差反応性」を持ったメモリーT細胞を獲得し、これまで遭遇したことがないウイルスへの「記憶」を持って戦っている可能性があると示されました。生まれて間もない新生児は日常生活で触れてきた抗原が少ないため、交差反応性を持ったメモリーT細胞が少なく、感染症になりやすい可能性があるとのこと。また、メモリーT細胞が多様な抗原に対する交差反応性を獲得できることから、特定の病気にかからないことを目的にしたワクチンを接種することで、標的以外の病原体への抵抗性を高める可能性も示されています。

デイヴィス博士は、「これはなぜ子どもが土を食べるのかという謎について、進化的な側面から手がかりを提供するかもしれません」「私たちの免疫システムがこれまでに見たこともない危険な病原体への免疫記憶を獲得しているのは、土壌や食物、肌、ドアノブ、電話、イヤホンなどの至る所に存在する、ほとんど無害な微生物への絶え間ない接触が原因となっている可能性があります」と述べました。

新たに生まれてきた新生児が病原体の「記憶」を獲得する過程において、重要な役割を果たしている可能性があるのが「出産」です。母親の産道を通って生まれてきた人は、帝王切開で生まれてきた人と比較して免疫系の疾患になりにくいことが、1977年~2012年に生まれた200万人のデンマーク人を対象にした調査で判明しているとのこと。詳しい原因は解明されていないものの、帝王切開で生まれた人は産道に存在する多様な微生物に触れなかったことで、交差反応性を持ったメモリーT細胞が獲得できていない可能性があるそうです。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=356397

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