新型コロナウイルスは「332種類のヒトタンパク質」を利用してヒト細胞と結合できる驚異的な感染能力を持つ

以下リンク

3種類の受容体に感染できる新型コロナウィルス。

具体的には、

・ACE2という受容体を利用して細胞と結合できる

・フーリンと呼ばれる酵素を介して細胞と結合できる

・GRP78という受容体を利用して細胞と結合できる

という能力を持っていることがわかっていました。

また、以下の記事でご紹介しましたように、この新型コロナウイルスは(人為的に組み込まれたのではなく、あくまで自然進化の中で)「エイズウイルスと同様のタンパク質を 4カ所持っている」ことが判明し、それにより感染能力が大変に高くなっていることがわかっています。

それは、「新型コロナウイルスは 332 種類の細胞内のタンパク質を利用して結合できる」

ことを示唆した衝撃的な研究でした。

以下の論文にあるものです。

これは、治療薬の開発のための研究で、この新型コロナウイルスが「細胞のどこを利用して感染しているか」を最新の分析技術で明らかにした中で判明したものです。

研究者たちは、アフィニティー精製による質量分析法という方法を用いて、新型コロナウイルスが相互作用する人のタンパク質を分析した結果、

「相互作用する人のタンパク質が 332 特定された」

というものでした。

論文には。以下のようにズラーッと、新型コロナウイルスと相互作用するタンパク質が並んでいます。

〈リンク先に画像あり〉

この 332 という数字を見て、

「本当にスーパーウイルスなのだなあ」

と改めて思います。

最近では、日々明らかになる、この新型コロナウイルスのあまりにも高い能力を知る中で、恐怖や懸念より、尊敬の念に近い感情が生じていまして、そして、おそらくはまだ能力については新たに発見されていくように感じます。感染方法や変異について、そして自らが死滅しないためのメカニズムなどを含めて、さらに多くの特性と能力を持っているに違いないと感じます。

なお、論文には、「 SARS-CoV-2 ヒト宿主因子を標的とする既存の薬物の同定」というセクションがあり、「その 332 という相互作用するタンパク質に対して、治療薬として利用できると同定される可能性のある薬剤」は、以下のようになっています。

・承認された薬物 15
・臨床治験中の新薬 4
・前臨床候補 18

約 40種ほどの薬剤が治療薬候補として特定されているようですが、相互作用するタンパク質が 332 という数なのに対して、現実の薬剤候補はこのような数となっていて、治療薬の開発ということに対しては、かなり絶望的な状況が広がっています。

SARS-CoV-2 ウイルスは332個のヒトタンパク質を標的とし、さまざまな結合部位を持っている。そして40の新薬候補が特定された

医学、ゲノム、生物学分野の国際的専門家たちの主要な共同研究により、SARS-Cov-2 新型コロナウイルスは、すでに見出されていた ACE-2 受容体を含む 4つの結合方法だけではなく、332 のヒトタンパク質を標的とすることができることが判明した。

新しい研究は、新型コロナウイルスが、人類がこれまでに経験した中で最も強力なウイルスのひとつとして説明できることを示している。ウイルスのゲノムの構造と、これがヒトのさまざまなタンパク質と相互作用する方法の分析により、研究者たちは、COVID-19 の治療に使用するために再利用できる 40 の新薬も特定した。

研究の結果は、複雑な数学、物理学、およびコンピューティングを利用するネットワークサイエンスに基づく感染ダイナミクスのモデリングツールに由来している。

新しいツールセットは、COVID-19 を引き起こす新型コロナウイルスが細胞に侵入した後の、ヒト細胞内のタンパク質の動作をマッピングした。

研究者たちが、他のヒトウイルスを研究するために 2012年に最初に研究グループと共同で開発した AI モデルは、SARS-CoV-2 が脳内の細胞を攻撃する可能性があることも予測した。

この発見は、報告書が述べているように、初期の COVID-19 の症状には、嗅覚や味覚の喪失が含まれているという最近の報告を説明するのに役立つ可能性がある。

新型コロナウイルスがは、体内に入った直後にヒト細胞を乗っ取り、ウイルス複製マシンを再構築する。これは、コロナウイルスのすべての株が持ち、太陽のコロナの形状をしたスパイクタンパク質に依存している。これらのウイルスのタンパク質が、健康なヒトの細胞のタンパク質と結合すると、ヒト細胞内の基本的な機能を破壊し、何百万ものウイルスのバージョンの複製を始める。

ウイルス感染のモデリングの最初のステップは、SARS-CoV-2 がどのタンパク質を攻撃してヒト細胞を乗っ取るかを理解することだった。

その結果、研究者たちは、これらのタンパク質が 332 あると報告した。

研究者たちのツールセットは、コロナウイルスが標的とする 332 のタンパク質のそれぞれの働きをモデル化し、これらのタンパク質が細胞内で発動して、新型コロナウイルスの症状を引き起こす可能性があるメカニズムを予測した。

そして研究者たちは、最良の治療薬剤の候補は、 SARS-CoV-2 が最初に攻撃するタンパク質を標的とするものではなく、おそらく、同じ細胞内近傍で機能するものだろうと述べている。

「現在市場に出ているほとんどの薬剤は、細胞のタンパク質自体を直接ターゲットにしていません。ウイルスが標的とするタンパク質がわからないため、阻害するための薬剤を見つける知識が今のところ十分ではないため、細胞内ネットワークの近傍のネットワークを十分に理解する必要があると考えられます 」

「他のすべての研究者が、すぐに候補となる薬剤を構築して研究できることを可能とするために、新たな結果が出た場合には、すぐに研究を公開します。新しい薬剤候補の分野で進歩を遂げることが差し迫って必要となっており、今は、既存の学問や既存のビジネスに妨げられている場合ではないのです」

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=356069

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