糖質制限、糖尿病予防:重要なのは血糖値ではなく、インスリン抵抗性。糖質だけではなく質の悪い植物油も危ない

砂糖

最近ちょこちょこみかける糖質制限批判ですが、的外れも良いところですね。大体において、糖質制限批判をしている人って怪しい代替医療の人だったり、情報商材ビジネスだったりしますから、まともに答える価値も無いんですけどね。
その中でも可笑しいのが、「糖質制限をするとインスリン分泌能が低下する」という批判。ちゃんと勉強をしている人なら、これがどんなにおかしな理論か、分かりますよね。
糖質を制限し、タンパク質と脂質中心の食事をすれば、血糖値の急上昇(グルコーススパイク)は防げます。でも、血糖値が上がらないからといって、インスリンが分泌されないというわけではありません。
インスリンはそもそも、常に膵臓から一定量は出続けています。これをインスリンの基礎分泌といいます。食事をすると、さらにたくさんインスリンが分泌されますが、これはインスリンの追加分泌と呼ばれます。
炭水化物は血糖値を上げ、タンパク質と脂質は血糖値を上げないといっても、実はインスリンはちゃんと追加分泌されています。タンパク質のインスリン分泌に関しては、その種類によって違いはありますが、モノによっては炭水化物を摂った時と同じくらいインスリンが出ていたりします。脂質もインスリンの追加分泌を起こしますが、概ねこれは少ないようです。
つまりは、食事の内容がどんなものであれ、インスリンの追加分泌は必ず起こるということ。膵臓が刺激されてインスリンが分泌されているのに、膵臓の機能が低下するって、一体全体どういう理屈なのでしょうね。
そもそも炭水化物の摂取に関わらず、食事をすればインスリンの追加分泌が起こってしまい、インスリン抵抗性が改善されないから、間欠的ファスティングという発想が生まれたのです。ここのところはJason Fungの「The Obesity Code」に詳しく書かれています。
他にも、「糖尿病の原因は多価不飽和脂肪酸であり、糖質では無いのだから、砂糖を制限する必要は無い」なんて言っている人もいます。Ray Peatあたりが有名ですね。でもこれも間違い。確かに糖尿病発症の原因として、植物性油があります。最近の研究で、植物性油の健康被害の実態が明らかになるにつれて、こういった説がまことしやかに語られるようになりました。
でもこれだって極端な結論です。植物性油、特にキャノーラ菜種油、キャノーラ以外の菜種油、水素添加大豆油、パーム油などは、糖尿病発症因子として大きいことは間違いありません。しかしながら、糖尿病は単一の原因で発症する病気ではありません。糖質はどんな形で摂取しても、単糖まで分解されてから吸収されます。この内ブドウ糖は確かに糖尿病発症因子としては関係が無さそうです。しかし果糖に関しては、間違いなくインスリン抵抗性を上げ、糖尿病を発症させる因子となっています。
確かにアメリカで糖質制限のブームを作るきっかけとなったアトキンスダイエットでは、動物性油(飽和脂肪酸)を避け、植物性油(不飽和脂肪酸)を摂るべきと指導していました。これがアトキンソンダイエットの失敗の大きな原因の一つとなったことは間違いないでしょう。さらにフードファディズムの一つ、パレオダイエットでも、動物の脂身は避け、赤身肉を食べること、脂質は植物性油から摂ることと指導しています。これも失敗するのは当然ですね。
脂質に対する知識があまりない人が、間違った知識で糖質制限を指導していた(特にアメリカで)ことは、僕も認めます。でもだからといって、糖質制限自体が意味が全くないとか、むしろ危険だとかいうことにはなりません。ちなみに先住民食では昔から、植物性油を避け、動物性油をしっかり摂りましょうと指導していたんですけどね。

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