砂糖と同じ味なのにカロリーは約3分の1、細菌を利用して安全な天然の糖を作る試み(米研究)

食卓に置かれている普通のお砂糖と同じ甘味がありながら、カロリーは38%しかない。それでいて人工甘味料ではなく、れっきとした天然の糖である。そんな夢のお砂糖が実は既に存在しているのだ。

 タガトースと呼ばれている単糖は、砂糖そのままの風味が味わえる単糖で、2001年に国連食糧農業機関と世界保健機関から安全宣言が出され、日本でもすでに食品添加物として認められている。

 ただ残念なことに生産コストが非常に高い。故に一般に出回っていないのが現状である。そんな現状を打破するべく、アメリカの研究者たちは、細菌を利用し、タガトースの効率的な生産を試みた。

 この試みは成功し、もしかしたら近い将来、砂糖の代用品としてタガトースをご家庭で使用できる日が来るかもしれない。

タガトースが希少な理由
 低カロリーで血糖の上昇や虫歯の原因を抑えタガトースは未来の砂糖として期待を持たれているが、その生産コストがとにかく高い。果物や乳製品から抽出することはできるが、ほんの少ししか手に入らないという。

 原材料となるガラクトースからタガトースへの転換プロセスがはなはだ非効率的で、生産高は30%しかない。早い話が希少品なのだ。

 ガラクトースからタガトースを作るには、「L-アラビノースイソメラーゼ(LAI)」という酵素を使う。

 ところが困ったことに、ガラクトースはLAIの本来の標的ではない。タガトースへの転換効率が悪いのはこのためだ。

 しかもLAIは溶液の中ではあまり安定せず、やがて劣化してしまう。そのために37度の温度では39%、さらに温度を高めて50度にすると、たったの16%しか転換が進まない。

細菌を使ってタガトースを効率的に生産
 そこで、アメリカ・タフツ大学の研究グループは、細菌を小さなバイオリアクターとして利用し、転換に必要となる酵素の劣化を防ぐことで、タガトースの効率的な生産を可能にした。

 同大学のニキル・ナイール氏とジョセフ・ボバー氏が考案したのは、ラクトバシラス・プランタルムという安全な細菌を利用して、LAIを細胞壁の内部で劣化しないよう保存するという方法だ。

 このように細菌をバイオリアクターとして利用すると、酵素の劣化を防ぐことができるうえに、それまで以上に高い温度で反応を進めることまでできる。

 おかげで37度なら47%、50度なら83%という大幅な転換効率のアップを見込むことができた。

プロセスを再考して更に生産性アップ
 研究グループがさらに効率の改善を図ることができないものかと調査を進めたところ、原材料となるガラクトースを細胞内部に運び込むプロセスがボトルネックになっていることが明らかとなった。

 そこで薄めた洗浄剤でL・プランタルムを処理し、細胞壁の浸透性を高めることに成功。これによってガラクトースはずっとスムーズに細胞壁を行き来できるようになり、転換効率は50度で85%にまで上昇した。

 ナイール氏はこうした解決策について、「熱力学の法則のために、水は低いところから高いところへ流れませんが、サイフォンを使って吸い上げれば、それを打ち破れるようなものです」と語っている。

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砂糖と同じ味なのにカロリーは約3分の1、細菌を利用して安全な天然の糖を作る試み(米研究)
2019年12月14日 ι コメント(10) ι 料理・健康・暮らし ι サイエンス&テクノロジー ι #

 食卓に置かれている普通のお砂糖と同じ甘味がありながら、カロリーは38%しかない。それでいて人工甘味料ではなく、れっきとした天然の糖である。そんな夢のお砂糖が実は既に存在しているのだ。

 タガトースと呼ばれている単糖は、砂糖そのままの風味が味わえる単糖で、2001年に国連食糧農業機関と世界保健機関から安全宣言が出され、日本でもすでに食品添加物として認められている。

 ただ残念なことに生産コストが非常に高い。故に一般に出回っていないのが現状である。そんな現状を打破するべく、アメリカの研究者たちは、細菌を利用し、タガトースの効率的な生産を試みた。

 この試みは成功し、もしかしたら近い将来、砂糖の代用品としてタガトースをご家庭で使用できる日が来るかもしれない。

タガトースが希少な理由
 低カロリーで血糖の上昇や虫歯の原因を抑えタガトースは未来の砂糖として期待を持たれているが、その生産コストがとにかく高い。果物や乳製品から抽出することはできるが、ほんの少ししか手に入らないという。

 原材料となるガラクトースからタガトースへの転換プロセスがはなはだ非効率的で、生産高は30%しかない。早い話が希少品なのだ。

 ガラクトースからタガトースを作るには、「L-アラビノースイソメラーゼ(LAI)」という酵素を使う。

 ところが困ったことに、ガラクトースはLAIの本来の標的ではない。タガトースへの転換効率が悪いのはこのためだ。

 しかもLAIは溶液の中ではあまり安定せず、やがて劣化してしまう。そのために37度の温度では39%、さらに温度を高めて50度にすると、たったの16%しか転換が進まない。

細菌を使ってタガトースを効率的に生産
 そこで、アメリカ・タフツ大学の研究グループは、細菌を小さなバイオリアクターとして利用し、転換に必要となる酵素の劣化を防ぐことで、タガトースの効率的な生産を可能にした。

 同大学のニキル・ナイール氏とジョセフ・ボバー氏が考案したのは、ラクトバシラス・プランタルムという安全な細菌を利用して、LAIを細胞壁の内部で劣化しないよう保存するという方法だ。

 このように細菌をバイオリアクターとして利用すると、酵素の劣化を防ぐことができるうえに、それまで以上に高い温度で反応を進めることまでできる。

 おかげで37度なら47%、50度なら83%という大幅な転換効率のアップを見込むことができた。

プロセスを再考して更に生産性アップ
 研究グループがさらに効率の改善を図ることができないものかと調査を進めたところ、原材料となるガラクトースを細胞内部に運び込むプロセスがボトルネックになっていることが明らかとなった。

 そこで薄めた洗浄剤でL・プランタルムを処理し、細胞壁の浸透性を高めることに成功。これによってガラクトースはずっとスムーズに細胞壁を行き来できるようになり、転換効率は50度で85%にまで上昇した。

 ナイール氏はこうした解決策について、「熱力学の法則のために、水は低いところから高いところへ流れませんが、サイフォンを使って吸い上げれば、それを打ち破れるようなものです」と語っている。

タガトースが一般的になる日がくるかも
 この方法でタガトースの大量生産を行うには、まだいくつか課題があるそうだが、研究開発が順調に進めば、やがてスーパーにあるお砂糖のコーナーが丸ごとタガトースで入れ替わってしまうなんて未来もあるかもしれない。

 2018年の段階で、代替甘味料の市場はおよそ7200億円だというのだから、大きなビジネスチャンスになるだろう。

 しかも、ナイール氏によると、細菌リアクターが有効そうな酵素はまだまだたくさんあるとのこと。食材だけでなく、プラスチック製品の生産にも応用できるかもしれないそうだ。

参照:http://karapaia.com/archives/52285304.html

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