発熱は、敵か味方か:ウイルスや細菌などの微生物が体内に入り、攻撃してくることがあります。では、ウイルスなどの攻撃を受けたとき、なぜ人は発熱してしまうのでしょう

発熱は、敵か味方か
何度以上の体温を発熱というのでしょうか?日本人のワキ下の平均値は36.89±0.34℃ですが、体温には個人差がありますので、いちがいに何度からと決めることはできません。それぞれの人が、元気なときの平熱と、その振れ幅(日によってまたは時間によっての差)をあらかじめチェックしておき、それ以上の体温上昇を発熱と考えて注意しましょう。
かぜをひく原因のひとつに、ウイルスや細菌などの微生物が体内に入り、攻撃してくることがあります。では、ウイルスなどの攻撃を受けたとき、なぜ人は発熱してしまうのでしょう。そして、発熱は人体にとって、悪いことなのでしょうか、それともいいことなのでしょうか?
かぜをひくと、なぜ発熱する?
かぜのウイルスは「外因性発熱物質」の一種で、侵入してくると体は熱を発熱します。その仕組みは、次のような順序で起こります。
1.かぜのウイルスを、体内の免疫活性食細胞がむかえ撃ちます。
免疫活性食細胞は、白血球やマクロファージなどの細胞で、ウイルスなどの異物を食べるように取り込んでしまいます。
2.免疫活性食細胞は、サイトカインをつくります。
ウイルスとの戦いが始まると、免疫活性食細胞の働きで「サイトカイン」という物質がつくられます。サイトカインには、インターロイキン1、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、マクロファージ炎症蛋白(MIP-1)などの種類があり、「内因性発熱物質」とも呼ばれます。
3.サイトカインは、血液の流れにのって脳に達します。
サイトカインは、血液の流れに乗り、やがて脳に達します。しかし目的地である脳の視床下部に行こうとしても、途中にゲート(血液脳関門)があって通ることができません。
4.サイトカインは、情報を伝える物質をつくります。
そこでサイトカインは、情報を伝える「メディエイタ」と呼ばれる物質であるプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を促します。メディエイタは、情報を持って視床下部へむかいます。
.メディエイタから情報が届くと、視床下部にある体温調節中枢は発熱を指令します。
メディエイタから情報を受け取った視床下部の体温調節中枢は、身体各部に体温を上げるようにという指令を出します。この命令にもとづいて、皮膚の血管が収縮したり、汗腺を閉じるなど、熱放散を抑える活動が開始されます。また筋肉をふるえさせて熱産生をうながします。これらの活動により、体温が上がるのです。
発熱するのは何のため?
かぜのウイルスの侵入を受けると、体はなぜ発熱するようにはたらくのでしょうか?その理由として、次の図のように、ウイルスの侵入をうけた生体にとっては、発熱したほうが有利だということが考えられます。
18~19世紀に解熱剤が開発されたときは、発熱は病的な状態なので、すぐに解熱剤を飲んで是正すべきとの考えがありました。しかし現在は発熱は、体が身を守るための生体防御機能のひとつとして理解されるようになってきました。
少なくとも発熱が軽度で、ほとんど苦痛を訴えない場合には解熱剤の必要はなく、むしろ与えないほうがよいとされています。
発熱が生体に有利だという根拠
http://www.terumo-taion.jp/health/temperature/06.html より転載
入來正躬(山梨大学名誉教授)
1960年東京大学医学部大学院修了。フンボルト奨学生としてドイツ・マックスプランク心臓研究所に留学。山梨医科大学生理学教授、山梨県環境科学研究所長を経て、ひかりの里クリニック理事長・院長。
入來先生からのメッセージ
体温は、今でも身体の状態を知るいい目印としてひろく使われています。身体の調子が悪いと、体の温度は高くなったり、低くなったりします。病気なのかどうか、病気がよくなっていくのか悪くなっていくのかの見当をつけるのに体温が使われています。体温を間違いなく判断できるように、学んで下さい。

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