店員たちが泣いている…弁当を注文しながら取りに来ない「いたずら予約」の罪深さ・・・居酒屋予約ドタキャン問題もそうだが、キャンセル料を取るシステムにすべき。

社会問題化している飲食店での無断キャンセル。中には、弁当を何人前も注文しながら取りに来ない「いたずら予約」による被害もある。奈良市のとんかつ店店長が11月に被害の実態をSNSで訴えたところ、瞬く間に拡散。店長は「悲しく、やるせない気持ち」とする一方、「対策を強化してお客さんを疑うのもつらい」と苦しい胸の内を明かす。こうした行為は偽計業務妨害罪に問われる可能性があるが、立証のハードルは高いという。生産者やスタッフを傷つける、いたずら予約の実態とは。

 ■2万5千円分の被害も

 「こういう被害が年に1回か2回くらいあるんですよ。何か事情があったのか、それともやっぱりいたずらか…」。奈良市のとんかつ店「まるかつ」の金子友則店長(43)はこう話す。

 いたずら予約。弁当を電話などで注文しながら来店しないため、食材が無駄になってしまう迷惑行為だ。

 同店では今年10月にも被害が発生した。

 注文は7、8人前のどんぶりだった。準備のためスタッフは通常よりも早く出勤し、仕込みなどを開始。指定された時間までにつくり終わり、スタッフは完成したどんぶりを手渡そうと待った。しかし、客は来ない。予約時に聞いた電話番号にかけても、つながらない。被害額は5、6千円相当だった。

 「去年は弁当20個が被害に遭ったんです。2万5千円分くらいでした」と金子店長。「何百円、何千円の売り上げを重ねる飲食店にとって、いたずら予約の影響はとても大きい。悲しいというか、やるせない」と肩を落とす。

 ■「客を疑うのはつらい」

 問題は金銭的被害だけではない。「(いたずら予約の)電話注文を受けたスタッフが『もっと気をつけたらよかった』と思い込んだり、電話に恐怖心を持つようなことがあったりするのは…。注文を受け、早くから準備するスタッフもいる」。金子店長はスタッフらを気遣いながら「こうした飲食店の現状を知ってほしい」と話す。

 有効な対策はあるのか。飲食店での無断キャンセルに関し、経済産業省などがまとめたレポートでは「予約の再確認の徹底」を挙げる。金子店長はこうした手法に理解を示しつつも、「ほとんどのお客さまがルール通りに対応される中、『本当に注文しましたか?』と疑うのは失礼だし、つらい。それではお弁当もおいしくないだろう」とこぼす。

 ■「失念」は罪に問えず

 いたずら予約は罪に問えるのだろうか。

 「状況によって偽計業務妨害罪に問われる可能性がある」と解説するのは谷原誠弁護士。真実ではない情報を用いて人の業務を妨害する犯罪で、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。

 もっとも、立証は簡単ではない。「初めから弁当を取りに行くつもりがなく、いたずらや嫌がらせ目的でやった場合のみ犯罪が成立する」と谷原弁護士。予約時は取りに行くつもりだったが、忘れてしまったなどのケースは偽計業務妨害罪に問うことができないという。「相手の事情が明らかにならない以上、立証は非常に難しいといえる」(谷原弁護士)。

 ただ、連日いたずらと思われる大量の注文を受けたり、周辺の複数店舗で同様の不可解な注文があったりするなどの状況証拠があれば、有利に働く可能性はあるという。

 金子店長は被害について現時点で「警察への通報は考えていない」とするが、エスカレートするようなことがあれば「相談を考えたい」。

 おいしく、温かい弁当を届けたいとの善意につけ込むいたずら予約。その向こう側で、何の非もないスタッフたちが泣いている。

参照:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191125-00000544-san-soci

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