自治体「水道危険度」ランキング、ワースト10に北海道から3自治体

自治体「水道危険度」ランキング、ワースト10に北海道から3自治体

高度成長期に多くが建設された水道網。老朽化が進み補修が必要になっているが、水道事業の採算が取れず財政が悪化している自治体ではその補修も困難になる可能性がある。水道事業の民営化や広域化を後押しする改正水道法が10月に施行されたが、それだけでは解決しそうにない。特集「自治体危険度ランキング」(全5回)の#3では、水道料金や経営指標などから水道危険度ランキングを作成し、苦境にある自治体を抽出した。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

● 簡易水道を上水道に統合した自治体が軒並み危機水準に

 水道事業の“経営状況”は自治体により大きく異なる。売り上げ、つまり人口や料金に応じた水道利用料金収入と、その自治体で必要な水道管の長さや給水施設がそれぞれ違うからだ。

 全国の自治体の経営状況を分析するために、(1)水道料金、(2)自治体からの繰入金などを加味した水道事業の採算(経常収支比率)、(3)水道事業そのものの採算(料金回収率)、(4)水道事業がさらに悪化した場合、補填できる自治体の財政余力(財政力指数)という四つの指標を用いて作成したのが水道危険度ランキングだ。

 ダイヤモンド編集部では、2017年に上水道を対象に水道危険度ランキングを初めて作成した。今回2回目となるランキングのワースト10には、北海道由仁町(1位)、同大樹町(4位)、青森県深浦町(8位)などが前回に引き続き、ランクインした。

 ランキング中で料金が最も高い北海道夕張市の20m3
当たりの家庭用水道料金は6841円で、最も低い兵庫県赤穂市の同853円の実に8倍もする。全国一律と思われがちな水道料金だが、これだけ差が開くのが実態なのだ。2番目に高い水道料金を設定している由仁町は、それでも経費の3分の1前後しか水道料金で賄うことができない。

 ワースト上位の自治体には四つの共通項がある。

 (1) 住民が散らばって住んでいるため、人口1人当たりで見た水道管の長さが長く採算が取れないこと。

 (2) 人口が少なく、給水施設などのインフラ維持費を水道料金で賄えないこと。

 (3) 自治体の財政が苦しく、水道事業の赤字を補填し難いこと。

 (4)採算が取れていないため、すでにかなり高い水準の水道料金を設定しており、さらなる値上げは難しいこと。

 ワースト上位の自治体の多くは、高度成長期に敷設され老朽化が進む水道管の補修の財源捻出に苦しむ可能性が高い。

 ワースト10に三つの自治体が前回に引き続きランクインした一方で、7市町村が入れ替わった。17年3月までの予定で厚生労働省が打ち出した「簡易水道の上水道化」の影響だ。

 簡易水道とは、給水人口が101人以上5000人以下の小規模の水道事業を指す。上水道に比べてさらに採算を取りにくく、補助金がなければ運営が成り立たない自治体が多い。

 そんな簡易水道を、同じ自治体の上水道と統合しなければ補助金を打ち切るという内容の通達が出されたのだ。

 ワースト上位に新たに加わった自治体は、この簡易水道の上水道化の影響を受けたところばかりだ。

 「もともと赤字だった事業同士をくっつけたところで強くなるわけもない。コンセッション(水道事業民営化)に手を挙げる企業があるとも思えない」。ランキング5位の三重県大台町の担当者はため息をつく。● 民営化や広域化を支援する水道法改正でも窮乏した水道事業は救えない

 コンセッションとは、公営の水道事業の一部民営化のことだ。全国の水道事業の採算改善を目的に、水道事業の広域化などと併せて、国がこの10月に施行した改正水道法で支援する方針を打ち出した。

 法改正を受けて、宮城県が域内自治体に水を供給する事業の一部にコンセッションを適用する条例が県議会で目下議論されている。一方、大阪市や浜松市などでは、導入のための検討が進んだものの「命の水を営利企業に売り渡すな」といった趣旨の反対運動が起き、議会で廃案になるケースが相次いでいる。

 しかし、そもそも民間が参入したくなるような利益を伴った水道事業は極めて少ないのが現状である。

 「水道管の老朽化の状況を正確に把握できている自治体は少ないため、企業にとってはリスクが高く積極的に参入できない」と明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科の田中秀明専任教授は指摘する。こうした深刻さにこそ目を向けるべきだろう。

 今回のランキングを見ても、水道料金だけで給水にかかるコストを賄い切れない(料金回収率100%未満)自治体は上水道で1127市町村中397、今回、ランキングを初めて作成した簡易水道では509市町村中454もある。

 さらに自治体の一般会計から補填を行っても、水道の維持管理コストや利息の支払いをカバーできない自治体(経常収支比率100%未満)も上水道で117市町村、簡易水道で383市町村ある。

 その多くが地方都市や町村部だが、実は神奈川県川崎市や三浦市、大阪府交野市など都市部の自治体もここに該当する。今は自治体財政に余裕があるため表面化していないだけで、水道事業の採算が取れない水道事業は少なくないのだ。

 新日本監査法人の試算によると、40年までに水道料金の値上げが必要とされる自治体などの上水道事業運営体は全国で1118に及ぶ。

 水道事業の広域化についても、もともと違う水道料金をどう新たに設定するかで利害が対立する。民営化同様、窮乏する水道事業を好転させる魔法のつえには到底なり得ない。将来当たり前のように水が使えなくなる未来を、われわれは真剣に考える必要がある。

参照:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191030-00218952-diamond-soci&p=2

シェアする

フォローする