【キブツ】イスラエルの農業コミュニティ・・・1909年から始まったキブツ、1948年に国が再建されるよりも歴史が長く、キブツは単なるコミュニティ作りを超えた国づくり、自分達の理想郷作りが原動力となっている

イスラエル訪問の目的の1つに「キブツ(Kibbutz)」があります。

5年前にイスラエルに初めて訪れ、そこで“キブツ”という名前を聞いた時は

「キブツ?器物?」

と馴染みのない言葉に疑問だらけでしたが、キブツとはイスラエルが世界に誇る農村コミュニティ(共同体)であります。

農業や畜産業を中心にイスラエル全土に270箇所以上のキブツは存在しており、規模は100名以下の小さな集落的なものから1000名を超える“町”のキブツまで様々です。

これまでいくつかのキブツを見学させて頂きましたが、個人的にもっとも印象深く残っているのが、やはり死海にあるキブツ「エン・ゲディ」。

死海周辺の年間降雨量は、わずかに40ml〜60ml。

年間降雨量250mm以下は、砂漠気候と呼ばれる雨がほとんど降らずに草木が育たない地域となりますが、死海のあたりは砂漠の中でもかなり厳しい環境下にあります。

ちなみに日本の年間降雨量は、世界平均の2倍ほどで約1700mm。

日本の3%ほどしか雨が降りません。

ところが、そんな死海周辺を走っていると岩山と荒野の何もない砂漠地帯にポツリと“オアシス”とも呼べる楽園が出現します。

それが、1960年に誕生したキブツ「エン・ゲディ」。

砂漠を開墾してオアシスを作ったユダヤ人は、今もここで約400人の大人と200人の子供が砂漠の中で助け合いながら豊かな暮らしを継続しています。

雨が降らないのに、一体“水”はどこからやってくるのか。

海抜マイナス400m以下の死海周辺は、地上よりも低い場所に位置しているため、高地であるエルサレムなどに降った雨が、やがて大地を伝って「エン・ゲディ」近くの岩山でコンコンと湧き出します。

その水を引き込んで砂漠で農業を営むことを実践し、またイスラエルといえばコンピューターテクノロジーは世界一であり、そのハイテク技術を早くから農業に活用してました。

それが

「点滴灌漑(てんてきかんがい)農法」

と呼ばれる点滴ドリッパー技術であり、それこそコーヒーのドリップのように樹木や作物周辺に張り巡らされたホースから、ポタポタと少量の水が地中にゆっくりと染み出すようになっています。

映像の器具は、1時間に50リットルもの水を流し、木の種類によって水の量もすべてコンピューターシステムでコントロールされています。

地面に水を流すのでは、すぐに蒸発して乾燥してしまうため、一滴一滴を大切に丁寧に地中の種や根に与え、植物の特性に合わせて水の量も調整、その結果年間降雨量が50mm以下の過酷な砂漠でも農業を可能としてきました。

農業どころか、キブツの町全体が、まるでジャングルの中にいるような巨大なオアシスであり、農園も巨大な森のような光景。

砂漠を緑地化させる技術がイスラエルにはあり、また水のない国だからこそ、水の有効的な活用方法を世界一研究している民族でもあります。

イスラエル全土でも、生活排水の85%以上を再利用しており、この砂漠のキブツでさえも、生活排水もすべてため池に集め、それを農業用水として再利用しています。

水を無駄にしないだけでなく、厳しい環境下に置かれているだけに、環境を汚染するとすべてしっぺ返しで自分達に返ってくるので、常に循環できるかどうかの視点でないと生きていけません。

「ここで生きていけるなら、世界のどこでも生きていけそう」

現地を訪れると、そう思わざるを得ないほど草木のない砂漠と岩山の火星のような世界でありながら、ユダヤ人は、こんな場所でも想像を遥かに超えた循環社会を構築しており、都会よりも極めて豊かな暮らしを実現しています。

「岩山には20種類以上の豊富なミネラルが含まれ、海抜がマイナスなので酸素も多く有害な紫外線も届かない。ここには世界にないものがたくさんある」

現地に50年暮らすユダヤ人は、緑と水に溢れた我々には見えていない宝の山を、この砂漠に見出していました。

確かに、ここが60年前には何もなかった砂漠の荒野とは思えないほど、キブツ「エン・ゲディ」には、一見すると樹齢数百年も経っているような巨木があちこちにわんさかそびえ立っています。

ここでは異常なほど、樹木や作物が巨大に健やかに育つようです。

もちろん雑草も生えないから、すべて完全な自然栽培。

是非、その不思議な砂漠のオアシスを映像でもご覧いただけたらと思います。

なお、動画の中では、キブツの教育についても語られています。

ご存知の方も多いと思いますが、ユダヤ人といえばノーベル賞。

世界人口の僅か0.2%しかいないユダヤ人が、ノーベル賞の20%以上の受賞を占めており、アインシュタインをはじめ、歴史に名を残す学者、発明家、哲学者、芸術家、実業家の大多数がユダヤ人であります。

それには、ユダヤ式の教育がベースにあると言われ、そのユダヤ特有の子供教育がキブツにも多く引き継がれており、イスラエルのトップ政治家や軍人幹部の多くが、人口の3%にも満たないキブツ出身者であるそうです。

「エン・ゲディ」の子供には

1.愛
2.自立
3.責任

の3つを重要なこととして教えており、将来キブツに戻って来なくとも、イスラエルという国に大きな影響を与える人材を次々に育て上げています。

農業を中心とした循環社会と子供教育。

イスラエルのコミュニティキブツから学ぶことは多々あり、訪れる度に新たな発見や気づきがたくさんあります。

世界中のほとんどの国が、直接的にも間接的にも緑地を砂漠化しており、もちろんイスラエルも都会は同じ状況ではありますが、一方でユダヤ人は、砂漠の緑地化を常に実践している民族でもあります。

「イスラエルは戦争ばかりしている危険な国」

確かに、一部のエリアではいまだに紛争も続いていますが、現地で話を聞くと、イスラエルは一方的に相手を攻め込むことは一切せず、攻撃されたら防衛して反撃するのみであり、イスラエルには他にも日本では報道されていないいくつもの顔があって、特に世界環境の危機を救う鍵はユダヤの技術が握っていると言っても過言ではありません。

砂漠でも食料をほぼ100%自給することができ、海水も真水に変え、生活排水も再利用、最近では空気を水に変える技術までも製品化され、テクノロジーを有効活用して、地球に負荷をかけずに文明を進化させる叡智をユダヤは持っています。

1909年から始まったキブツの歴史は、1948年に国が再建されるよりも歴史が長く、キブツは単なるコミュニティ作りを超えた国づくり、自分達の理想郷作りが原動力となっています。

過疎化と都会化、少子高齢化が進み、自給率も低迷して行く日本において、新たな地域社会の創造が必要不可欠となっており、その中で民間にしろ、自治体にしろ、大小様々なコミュニティの誕生がこれからは求められます。

そのためには、キブツから取り入れられる要素は多々あり、自治国を作るような心構えでやっていくような精神性も学ぶところであります。

水や食べ物の自給、エネルギーの自給、衣食住への不安が無くし、そして子供への教育や老人、病気や障害を持った人々への福祉も充実させ、お金があってもなくても皆が豊かに暮らせる社会となり、同時に地球人が暮らすことで、地球環境が改善されていくような文明の方向性が理想的です。

そのためには、一度は今の家族、会社組織、日本という枠組みも超え、気づいた人、1人ひとりが地球人という自覚とともに繋がり、ともに助け合って生きていく。

イスラエル人口の3%のキブツ員が、イスラエル全体に大きな影響を与えるように、0.2%のユダヤ人が、この文明世界全体に大きな影響を与えるように、気づいた僅かな地球人が、この地球全体の方向性を大きく変えることも不可能ではないと思います。

https://www.facebook.com/taihei.takizawa/posts/2486820868064380

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