マスコミの権力と腐敗について・・・あらゆる権力は、長期化すると、自己利益と長期的な地位の維持を優先することになりがちです。長くなる過程で腐敗する傾向をもっています。

吉田繁治氏 ビジネス知識源<406号:マスメディアがもつ大衆への条件付けの権力>2019年7月27日 リンク
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■7.メディアに権力が発生する理由は、疑似体験の記憶から

情報を受けとる側にとってのメディアは、手の届く範囲内でしかない「個人の経験」を、文字・音声・映像という手段により「疑似体験」として拡張してくれるものです。
「TVのイスラエル旅行の映像」から、自分がイスラエルに行ったような感じ(=疑似体験)も味わえるからです。ナマ放送なら、記者会見に同席した感じも得ることができます。
しかしイスラエルの街、人々、レストランの映像は、メディア側が、一部を切り取って、「どう伝えるか」という意図で編集したものです。ここが、意図をもつ編集のない、個人の直接経験と異なっているところです。
メディアは、映像と音声の「意図をもった編集」により、視聴者の疑似体験の内容と、あとに残る印象(記憶)を変えることもできます。
これが、「メディアは、(疑似体験を作る機能のある)メッセージである」ということです。編集された映像・音声も、Publicに対して、現場に行ったかのような経験を与えることができるからです。
たとえば湾岸戦争(1991年)のときの、黒い油にまみれた海鳥の映像は、米軍の爆撃によって破壊された油井から流れた原油によるものでした。これを西側のメディアは、フセインの仕業として、世界中で繰り返し報じました。
この映像は、世界の人々の心を動かし、CIAの操作によって、イラクのフセイン大統領は「環境テロまでを行う狂気の極悪人」になりました。来歴を切りとって放映するメディアの映像は、理性より感情を動かすからです。理性に訴える文字情報では、「黒い油にまみれた海鳥」の効果はない。リンク

【編集された疑似体験が、記憶になる】
メディアが権力になるのは、編集により意図された映像・音声・言葉が聴衆の疑似体験として拡張して、批判されることなく、人々の知識になるからです。これが「**はこういうものだ」という、メディア側から狙われた体験になって記憶に残る。その漠然とした記憶が、人々を動かします。
TV放送の草創期に、「テレビは1億人を白痴化する」とも言われたことがありました(ノンフィクション作家の大宅壮一氏:発言は1970年代)。本は意識的、批判的に読む努力が要る。ラジオは言葉なので、嘘または本当の、いずれかしかない。しかし、フィクションでない限り、映像としては嘘がないTVメディアでは、意図をもって編集されたものを、ひとびとは無批判に受け入れやすい。

■8.権力は、長くなると、ほぼ100%腐敗する

あらゆる権力は、長期化すると、自己利益と長期的な地位の維持を優先することになりがちです。長くなる過程で腐敗する傾向をもっています。政治家・行政の腐敗とは、権力の行使において、隠れて政治家と官僚個人または組織の自己利益を図ることです。
放映権と編集権をもつメディアの、プロデューサー(またはディレクター)と、その担当との間で、所属タレントの派遣契約をしている芸能事務所やプロダクションの癒着も、これです。
編集の権力をもつ編成やプロデューサーに対しては、「枕営業」やすれすれのことも行われているようです。営業とは、出演契約を促進する活動です。
吉本問題で、決して明らかにならないことは、芸能界全体がもつ非近代的な二つのタブーでしょう。
(1)芸能事務所と放送局の、タレント出演と割り当てをめぐる癒着とリベ-トの関係。(2)吉本興業と、反社会勢力とのつながり。

メディア自身が、この二点を自己解剖をすることは、決してない。
インターネットの登場と代替により、わが国の新聞、放送の全部のマスメディアは、自滅に向かっているからです。基底の原因は、これから、新聞とTVメディアが伸びることはないことです。
衰退に向かうことが確定している業界の権力は、顧客の利益より自己利益を尊重することに向かって、腐敗します。

■9.権力側の腐敗は、情報統制になる

[中国]中国では、反政府的と政府が決めた情報や記事の、検閲と禁止が行われています。メディアは、国家の要請にしたがって「情報提供」の義務があるとする、戦時中のような「国家情報法」も施行されています(2017年6月から)。世界に、瞬間で伝わるSNSや電子メールの、国家による統制です。目的は、内外の反政府的活動を禁じることです。この原因も、共産党独裁の危機を、体制側が感じているからです。

[安倍政権]安倍内閣も「(行政機関の)特定秘密保護法」を制定し、中国の「国家情報法」ほどひどくはなくても、腐敗と堕落に向かっています。財務省の、「森友問題をめぐる決済文書の書き換え」という官僚不正が起こった根も、公務員の情報公開と、外部からの調査を制限することになる特定秘密保護法がもつ「精神と価値観」があるでしょう。特定秘密保護法は、軍事的な国益の名を借りて、国民の利益に反する行政の行為の調査とヒアリング(公聴)を、制限するものでもあります。

[国家と国は区分される]国家(States)とは、政府の行政(階級的なAdministration)の体制のことであり、しばしば混同されている国(政府+企業+世帯)ではありません。ジャーナリズムは、こうした根本的なところを、批判すべきでしょう。国家と国を区分しないため、国益の意味内容には違いが出てきます。

[軍事は政府の公共事業]特定秘密保護法が企図する国益とは、行政(政府)の利益です。軍事行動も、政治の延長にある行政であり、税を使う公共事業です。戦争は、政府が執行する、外交(対外的な政治活動)の延長にある公共事業です。行政権を規定する行政法は、法の上位にあります。このため、政府が行う戦争行動での殺戮は、法的な意味での殺人ではないのです。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=348255

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