妊娠後期の葉酸サプリが子どものアレルギーを増やす・・・天然の葉酸と人工の葉酸の違いについて

妊娠後期の葉酸サプリが子どものアレルギーを増やすという発表

先月、「妊娠後期に葉酸サプリを摂取すると、小児期のアレルギーリスクが高まる可能性がある」という報告がオーストラリアのアデレード大学からありました(Amy L Wooldridge et al;American Journal of Physiology, 2017)。

食事性の葉酸の種類は、おもに天然のfolate(フォレート、葉酸塩)と、人工的に合成されたfolic acid(葉酸)に分かれます。英語圏ではこのようにfolateとfolic acidで区別されていますが、日本では天然の「葉酸塩」と人工の「葉酸」の違いを明確にしておらず、すべて葉酸とだけ表記されることが多いです。

そして、海外でもサプリメントや加工食品への栄養補給として使用されるのは、多くが人工葉酸(folic acid)の方です。今回のアデレード大学で報告があったのは人工葉酸(folic acid)の使用によるものです。実は、人工葉酸(folic acid)は今までにも副作用の報告が上がっており、その中でもアレルギーや蕁麻疹は代表的なものです。

今回の研究調査では、本来アレルギーリスクが低いとされる「子宮内胎児発育遅延(IUGR)」で生まれた子どもにおいても、人口葉酸の摂取でアレルギーのリスクを増やす可能性があることがわかったのです。

もともと妊婦に葉酸がすすめられるのは、発達中の胎児が神経管の欠陥を予防するためです。神経管は妊娠後のはじめの月から発達し始めるため、通常、妊娠初期~中期までの妊婦に葉酸補給が勧められています。よって、後期に摂取してもリスクを低減できるわけではなく、かえって副作用が出生後の子どもに影響してしまうことがあるのです。

人工葉酸(folic acid)は、天然の葉酸(folate)よりも非常に高い生体利用率をもっており、腸の至るところで急速に吸収されます(Br J Nutr 2003;90:473-9)。しかし、人工葉酸の摂取では、幼児の血液の中に未代謝の葉酸が残留していることが問題になっていました(Br J Nutr 2005;94:727-3, J Nutr 2006;136:189-94,Clin Chem 2004;50:423-32 )。実は、人工葉酸の正常な代謝は、個体差(遺伝的要因)に大きく左右するからです。

こうした未代謝の人工葉酸が蓄積されていくと、いろいろな酵素やキャリアタンパク質などに結合してしまい、天然の葉酸(folate)の代謝や細胞輸送そして調節機能の邪魔をする可能性があるのです。

例えば、葉酸の受容体は、葉酸の主な形態である5-MTHF(メチレンテトラヒドロ葉酸)よりも人工葉酸の方が親和性が高いです。つまり、人工葉酸の蓄積によって、脳の脈絡叢にある葉酸受容体に5-MTHFを輸送するのが阻害されてしまうのです(Cell 2006;127:917-28.)。

葉酸は、メチレーション回路といって、免疫や正常な遺伝子発現などのために重要な回路をまわすための必須の栄養素です。この回路がうまく回らず、正常な代謝がされないと、炎症やさまざまな慢性疾患を引き起こすきっかけとなります。

葉酸は重要な栄養素ですが、その種類の選び方や、人工ものであれば特に過剰症に十分注意しなければなりません。

※天然の葉酸(folate)はポリグルタミン酸型で、人工の葉酸(folic acid)はモノグルタミン酸型です。できるだけ天然の葉酸を摂取しましょう

参照:https://www.facebook.com/photo.php?fbid=857326827781020&set=a.122416054605438&type=3&theater

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