卵は半熟が、消化がよい…栄養素の吸収率を上げるには、「加熱」が必要。卵は白身と黄身で最良の加熱が異なる。

卵は半熟が、消化がよい

食べ物の消化率をアップさせ、栄養素の吸収率を上げるには、「加熱」が必要です。

ベルギーのルーブン大学病院によると、生卵で食べた場合の消化率は51%だったのに対し、加熱調理された卵では91%であったことが報告されています(J Nutr. 1998 Oct;128(10):1716-22)。

熱を加えることによって卵のタンパク質の結合を物理的に弱くし、消化しやすい形を新たにつくるからです。これは、生卵をそのまま食べたとき胃酸によって胃の中でスクランブルエッグのような状態になるのを、あらかじめ加熱調理によって似た状態にしておくことで、消化力を上げるものです。

そもそも胃が生の卵白を消化するのにはとても長い時間がかかります。また、卵白の部分に入っているアビジンというタンパク質が卵黄に含まれているビオチンとの結合性が非常に高いため、これらが結合してしまうと消化酵素でさえもほとんど分解できず、ビオチンの生体利用を妨げます。実際に、卵白部がきちんと加熱されていればビオチンの吸収は阻害されません(Present Knowledge in Nutrition2012:359-374)。さらに、サルモネラのような病原菌が殻を通って卵白まで汚染することがあるため、できるだけ火を通して殺菌する必要があります。

一方、生の卵黄は、生の卵白ほどのデメリットはなく、消化も難しくありません。そうすると、卵黄は生に近い状態で、卵白は火が通ってゴム状になった状態が最適だといえます。事実、ある実験では、半熟卵であれば1~2時間で消化され、完全に固くなったゆで卵やオムレツになると3時間後に消化されました。この消化の負担を考えても、やはり半熟卵が良いと考えられます。

卵黄の成分は脂質が32%、タンパク質16%、無機成分2%、炭水化物1%、と脂質が非常に多いため、加熱によって酸化することを考慮すれば、むしろ卵黄は生に近い状態の方がいいでしょう。実際に卵黄を高温で調理すると、コレステロールが酸化してオキシステロールという成分が生成されます。血液中にこのオキシステロールが過剰になると、心臓疾患のリスクが上がるといわれています(Redox Biol. 2013 Jan 31;1:125-30)。

※ただし、酸化したコレステロールは、食品由来のものよりは、血液中で酸化されたコレステロールのものの方が有害です。実際に、卵の消費と心臓疾患にはさほど相関がありません。

また、卵を長時間・高温で調理してしまうと栄養価を下げます。長時間の高温調理ではビタミンAを約17~20%減少させ(Int J Food Sci Nutr. 2006 May-Jun;57(3-4):244-8)、抗酸化物質の量も減少させます(Food Chem. 2016 Mar 1;194:111-6)。

加熱でも低温調理で短時間であれば、より多くの栄養素を維持します。たとえば、卵を40分間加熱調理すると、ビタミンDの61%が失われていますが、短時間で調理すれば18%しか失われません(Food Chem. 2014 Apr 1;148:170-5)。

しかし、栄養面では、ニワトリの育て方やエサによって栄養価が異なるため、質の良いものを選ぶ必要があります(Poult Sci. 2011 Jul;90(7):1600-8)。

ただし、調理によって多少の栄養素を失っても、それでも卵はビタミンや抗酸化物質の宝庫であるといわれています(Nutrients. 2015 Jan 20;7(1):706-29)

以上をまとめると、消化率や栄養素保持率を考えると卵黄は生に近い状態がよく、卵白は加熱されて固まった状態がいいため、「半熟卵」がもっとも消化によいと考えられます。

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