競争原理は不要。長期目線で人的資産を育てていく~HUGE 社長インタビュー

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『どんな世代とも共存共栄 ~新川義弘が語る、“競争原理は不要。長期目線で人的資産を育てていく”』より引用リンク

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新川
サービス業というのは、人の心を読む仕事といえます。人が今、やって欲しいと思うことを察知することが必要です。場を大事にするし、空気を大事にする。こういうことができる人は、実は打たれ弱いんです。そういう人を育もうと思ったら、競争原理は入れない方が良いと思っています。

2006年、レストラン「ダズル」を立ち上げ、スパニッシュイタリアンの「リゴレット」2号店を新丸ビルに出店したときに考えたのは、「人が辞めない会社にしよう」ということでした。そのとき、私は社員に言いました。「ここにいる人たち、1人も辞めないで、ずっと働いて欲しい。皆さんに長く働いてもらって、その実績や経験が生かせる会社にしましょう。」と。そのために給料を下げない会社にしていきたい。それで飲食業にはあまりない事例だと思いますが、年間賞与を給与の2ヶ月が最低ラインという基準を定めました。年収は14ヶ月。そうすると、皆年間の収入額をイメージできますから、そこから下がらないという安心感ができて、これは大きかったかなと思います。

神原
安心して働けるという約束をしてもらっている安心感があるというのは凄く大きいことですね。HUGEは長期的視野に立って考える人材を育てている。このような考え方が、会社内に行き渡っているという実感はありますか?

新川
一つの例として、従業員持株会の話をしたいと思います。当社は従業員持株会制度を、会社設立2年目に立ち上げました。一口5千円でその拠出額に5%の奨励金をつけ、辞めるときにその金利を付けてお返しする。但し、万が一当社が倒産したときは100%お返しできるかどうかは約束できない。そのリスクも承知の上で入会してくださいと説明しました。そして現在ですが、170人弱の社員の会社で、130人が入会しています。アルバイトの人もいます。月手取り20万円くらいの人で7万円入れている人もいます。積立累計額が800万円くらいになっている人もいます。それが何を表しているかということですが、会社へのロイヤリティ、信頼があるのではないかと思います。そのような人達の仕事に対する意欲は、ちょっと違いますね。

神原
これは会社が好きでないと、そして長期で働くつもりでないと出来ないですね。

新川
そのとおりだと思います。自分の店ではなく会社で働いている、というイメージも大分浸透してきたように思います。例えばリゴレット新店舗を東京スカイツリーに出したときに、全店メールで「今、早番メンバーが足りない!」と発信すると、自発的にアルバイトの子たちが「1日なら入れます」「この日は大丈夫です」と返してきます。受け入れる側も行く側も、それを応援する雰囲気になっていて、会社全体を良くしようというカルチャーが出来ているということを感じます。

●“100年品質レストラン”に向けて、店長・チーフもロングタームのお客様目線

神原
新川さんは「100年品質レストラン」を経営理念に掲げ、「一軒のレストランが街の価値を向上させる“街の資産”となっている店作り」というメッセージを発信されています。このような長期目線で、街を代表する場所になっていくという考え方は、ブランド、信用、信頼関係など全て、時間をかけないと出来ないことですよね。

新川
例えば、人が頻繁に辞めて、店長の首が年2~3回すげ替えられるという店は、見事に売り上げが落ちていきます。それを「成長に必要な出血」と考える経営者もいます。僕はそれを「許せない」と考える経営者です。ですから、そういうスピードで店舗は増やせない。直営で、僕が考えるオリジナルが守れるスピードを維持しています。その限度は1年3店です。それで店長やチーフと最初に約束するのは最低3年、通常5年は変わらずにここでやって欲しいということです。そうするとその人は3年のグランドデザインを描くようになります。
ロングタームで、お客様に来てもらうことを考えるようになる。考え方もどんどん経営的立場に変わっていきます。逆に「1年で仕上げて次に行こう」という、短期間で上がって行きたい上昇志向の強い人は入らなくなります。それはうちには向かない。今も昔も自分自身の精神的な部分は変わっておらず、お客様に喜んでいただいて、ロングタームでどうやってお客様に来ていただくか、ということだけを考えています。

神原
女性のスタッフも多いと思います。結婚、出産、育児といったライフステージ別に課題もさまざまですが、どのように対応されているのでしょうか?

新川
子供を持つ女性の仕事をどう支えていくかというのは、自分だけでなく、日本の産業全ての課題かもしれません。
吉祥寺店長は女性なのですが、先日産休に入るということで、僕が「どうしたい?」と聞いたところ、「辞めたくない」と言うので、「わかった。店長のままにしよう」と言いました。「その間にどんな仕事が出来る?」と聞いたら、「メール・電話は出来ますから、毎日日報見て、自分が組織をきちんと応援出来るようにやってみたい」ということなので、「では、やろう」とそのやり方を始めました。飲食店業界はある意味非常に簡単で、「これ、どっちが美味しい?」と聞いたら、「う~ん・・・」と引っぱる人の意見は聞かない。「こっち!」ときちんと言える人でないと信頼出来ない。僕はそういうところで人を選んで大事にしています。そしてこのようなときに選ばれるのは、圧倒的に女性です。

神原
女性の仕事に関する問題については、私も同じ女性として、是非新川さんのクリエイティビティで皆が真似できるルールを作ってもらって、安心して出産でき、安心して育児でき、安心して休める組織作りを提案して日本を変えて欲しいです。

新川
頑張りたいですね。共感してくれる人たちを作って、仕組みや法といった大きいものも動かせるようになれれば。今の時代「女性力」ですから、この問題は、前向きに考えたいですね。

 

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