マウスの実験にて糖質制限ダイエットを行うと老化が速まり、寿命が縮まることが確認された。東北大学研究。

【「糖質制限で寿命が短縮」は、何も驚きでは無い】

3月29日発売の週刊新潮に、『衝撃の新証拠! 糖質制限で「老ける」「寿命が縮まる」と題する特集がありました。その中心となる内容は、東北大学の研究によって、糖質制限ダイエットを行うと老化が速まり、寿命が縮まることが確認された、とするものです。
東北大学が日本農芸学会で発表した研究報告は、マウスに通常食と、糖質制限食を与えて飼育したところ、糖質制限食を食べていたマウスの寿命は、平均寿命より20~25%も短命であったことと、その間の老化速度が30%も速かったというものです。

巷では、いまだに「糖質制限」を標榜している人々がいますが、これを信じて実行した人たちは、確実に老化が早まり、寿命が短縮するのです。このような間違った食事指導や健康指導をする人たちが未だに存在していることを、たいへん残念に思います。

私は、このFacebookを通じても、これまでに糖質制限の危険性を訴えてきました。しかし、思うように広がらないため、もう一度、糖質制限がなぜ危険なのかを説明したいと思います。

糖質が殆ど含まれていない食事を続けていると、体は血糖値を保つために、主に肝臓、一部は腎臓にて、多くはアミノ酸を原材料にして糖新生を行います。その過程において次に挙げるような様々な弊害が生まれてくるのです。

1.糖新生に使われたアミノ酸に結合していたアミノ基が余分になるため、肝臓ではそれをアンモニア、更には尿素にまで変換して排泄しますが、その過程で血中アンモニア濃度の上昇が起こるため、体液すなわち細胞外環境が汚染されます。この状態は、特にがん患者にとっては致命的な状態を作ってしまうことになります。

2.上記の変換作業が増加するため、肝臓や腎臓に余計な負担がかかり、他の必要な代謝に支障を来すようになります。特に肝臓や腎臓を患っている人の場合は、病態が更に悪化することになります。

3.アミノ酸からの糖新生を行うとき、特にビタミンB6を浪費し、メチオニン代謝においてもビタミンB6と葉酸を浪費するため、血中にホモシステインが増加します。ホモシステインは動脈硬化を助長し、心筋梗塞などの循環器系疾患を招くことになります(糖質制限者においては、この機序による死亡例が続発しています)。

4.糖質を食べない代わりに多くの肉類を食べることになります。すると、肉類には炎症を促進させる方向に働くアラキドン酸、ω6系脂肪酸、飽和脂肪酸、リン酸が多いために不必要な炎症反応が助長されます(これは、殆どの疾患に対して弊害となります)。また、リンの過剰も動脈硬化(特に中膜の硬化)の大きな原因になります。

5.肉が多くて繊維質の少ない食事は、特に大腸の腸内細菌叢を乱し、最も大切にしなければならない酪酸菌のエサを枯渇させることになります。酪酸菌を主とした腸内細菌は、免疫システムの構築、免疫力の維持、ビタミンやアミノ酸の供給、短鎖脂肪酸の供給を行っていますから、それらが止まってしまうことになります。この状態は、大腸がんをはじめとした、殆どの病気の原因になります。

6.よく、「糖質を制限してがん細胞を兵糧攻めにする」などということを今もなお言い続けている人がいます。少なくとも、がん幹細胞はケトン体をも利用できることが確認されており、また、口から入れる糖質を制限しても、結局は糖新生によって血糖値は正常範囲に保たれるため、がん細胞を兵糧攻めにすることなどはできません。こんな基本的なことを理解していない糖質制限論者も存在しているようです。

世界を広く見渡しても、いわゆる「長寿村」と呼ばれる地域の人々は、糖質をたっぷりと摂取しています。間違っても、糖質制限を標榜している長寿村などは、この世に存在しません。また、ヒトの歯の構成を見ても、糸切り歯よりも奥に並んでいる4~5対の臼歯は穀物などの植物質を磨り潰すための構造になっていますから、そのような自然の摂理に合った食物を食べるべきです。そうすることによって、はじめて、健全な腸内細菌叢をも維持することができ、健康長寿を実現することができるのです。

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