春の野草ヨモギを見直そう:生薬として、漢方薬として、また美容薬として昔から重宝されてきました。

春の野草ヨモギを見直そう

土手や山にいくと春の野草であるヨモギの若葉が見え始めました。ヨモギは古くは万葉集の中でも「余母疑」(よもぎ)という名前でも出ています。

ヨモギはその生命力の強さからどこでも生えやすい草で、さらにとても利用価値のあるものとして、生薬として、漢方薬として、また美容薬として昔から重宝されてきました。

ヨモギにはまず「抗がん作用」が認められています。発がんマウスにヨモギ抽出液を30日間投与したところ、がんが有意に減少しました(小島ら,1958)。これはヨモギの成分が直接がん細胞を攻撃するのではなく、インターフェロンという物質(サイトカインの一種)を増やして、この増えたインターフェロンがリンパ球などの免疫細胞を活性化し、がん細胞を消滅させる働きをしているという機序です。ヨモギにはこのようにインターフェロンを増やす物質(インターフェロン・インデューサー)が含まれています。

このインターフェロン・インデューサー(誘発物質)によって、人体に侵入しようとするいろいろなウイルスの増殖を抑えるため、ヨモギ茶を習慣的に飲んでいる人は風邪をひかないと言われています。

ワシントン大学の研究では、ヨモギ成分が乳がんの増殖を阻害したことが発表されています(Lai H,2005)。他にもヨモギ成分によるがんの血管新生阻害(Chen HH,2003;D’Alessandro S,2007;Zhou HJ,2007)や、ヨモギによる抗炎症作用(Wang Z,2007;Xu H,2007)、ヨモギによる抗がん転移(Hou J,2008;Buommino E,2009;Wang J,2007)など、がんに対して特異的な効果がたくさん報告されています。

また、ドイツのフライブルク大学医学部による最近の研究では、ヨモギがクローン病患者でよくみられるTNF-αという炎症性サイトカイン物質を抑制し、自然治癒を促進したという臨床報告があります(Krebs S et al,2010)。

さらに、アルゼンチンのオーラン大学のラット実験において、ヨモギには鉛(なまり)曝露のデトックス効果があると報告しています(Kharoubi O et al,2008)。ヨモギ抽出物が、鉛暴露によって阻害された酵素活性を回復させ、脂質過酸化を防ぐ働きがあったことが発表されています。

低胃酸や低消化液の人に対してヨモギはこれらの分泌促進効果があります(Baumann IC,1975;Michael K. McMullen,2015)。ヨモギの苦み成分が口腔内の味覚神経を刺激し、胃液や胆汁の分泌を増加させ、それによって食欲や消化を促進させます。食前に摂取すると効果があると言われています。

他にも脳卒中の治療にも効果があるという報告(Lachenmeier DW,2010)や抗マラリア効果(Mueller MS,2004)などが報告されています。

ヨモギで特筆すべきはやはりクロロフィルです。ヨモギは他のいろいろな緑葉植物に比べて、より早く、より強く、クロロフィルの力を発揮できるそうです。クロロフィルを大量に含むものにスピルリナなども人気ですが、これは藻類のため、ヨモギのような高等植物ほど他の有効な成分がそこまで含有されていないといえます。そのため、ヨモギは多面性に優れているのです。

ヨモギは漢方では艾葉(がいよう)という生薬名で主に止血作用のあるものとして使用されてきています。また、お灸の材料であるモグサはヨモギの葉で作られています。モグサのお灸によって、ヨモギの成分が体内に吸収されつつ熱刺激を与え、血液中の赤血球や白血球を増加させます。こうして自然治癒力を高めるといいます。

ぜひ、春の野草ヨモギの若葉を摘んで、食べるなり、お茶にするなりで試してみてください(お灸用は夏のヨモギがいいらしいです)。あく抜きを忘れずに。もちろん、昨今注目されているヨモギ蒸しを試すのもいいでしょう。

春は野草や山菜を食べて、この一年間にたまった老廃物をデトックスするのにふさわしい時期だといえるでしょう。

※ちなみにヨモギはヨーロッパでも古くから薬用として使用されていたために、ヨーロッパの大学や研究所等でこうした論文発表が多々あります。

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