ビットコインが銀行の信用創造を崩壊させる?

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ビットコイン(Bitcoin)等の仮想通貨の価格上昇が話題になっています。

現在は投機資金がほとんどでしょうが、「通貨」として利便性が高まれば様々な資金決済に利用される可能性もあるでしょう。
このような仮想通貨ですが、様々な金融業界の大物が否定的な見解を発表していました。
この発言内容が結果として正しいか否かは筆者には分かりませんが、仮想通貨が既存の銀行システムに多大な影響を与える可能性があるのであれば、発言もネガティブなものになるのではないでしょうか。
今回の記事ではこの仮想通貨が拡大していけば、既存の銀行システムを崩壊させる可能性があることを考察します。

■銀行システムの根幹である信用創造について 
仮想通貨が銀行システムへ与える影響を考察する前に、既存の銀行がどのような役割を果たしているのかについて確認しましょう。
今回焦点をあてるのは信用創造機能です。
信用創造とは、銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨(※)をつくりだすことをいいます。この信用創造機能により銀行は多額の貸出を行うことができ、収益を上げているのです。
(※預金通貨とは、銀行に預けてある流動性の高い預金のことをいいます。 流動性の高い預金とは要求払預金のことで、当座預金、普通預金などがあります。 要求払預金は、預金口座からいつでも引き出せるため、現金と同じ決済機能を有しています。 現金通貨に預金通貨を含めたものを通貨といいます。)

(中略)

これは詐欺みたいといわれることもあります。おカネがおカネを生み出すようなものだからです。

この信用創造とは、「銀行がお金を持っている」「いつでも預金の払い出しを請求したら、払ってもらえる」という銀行への信用を前提としています。信用には根拠はありません。
銀行が倒産しないから信用が作られ、銀行の信用が強化されるからおカネが集まってくるのです。
では、この銀行の信用創造機能に対して仮想通貨が与える影響をみていくことにしましょう。

(中略)

■ビットコイン等仮想通貨が普及した際の影響(考察)
以上みてきたように、ビットコイン等の仮想通貨は、銀行に「預金」として預ける必要はありません。
また、そもそも中央銀行·政府等の管理下にないところにビットコイン等の仮想通貨の価値(思想的な価値も含む)を見出している投資家もいるでしょう。
ビットコイン等仮想通貨の保有者にとっては、銀行に仮想通貨を預け、銀行の信用創造に寄与するインセンティブはほとんどありません。
銀行に仮想通貨を預けるということは、銀行の信用リスクを負担することに他なりません。
自分自身でウォレットを使い保管できる仮想通貨を、銀行に預ける意味はほとんどないのです。
また、ビットコイン等の仮想通貨のレンディングサービスもあるようですし、ビットコインの先物取引が開始されたということは、どこかで決済に使うビットコインを「借りる」ニーズは発生するということになります。
現時点ではビットコインが通常の商品·サービス取引において資金決済手段として使われていない以上、ビットコインの借入ニーズは限定的でしょうが、ビットコイン等仮想通貨保有者としては銀行に預金(預金は銀行への貸付と同義です) として仮想通貨を預けるよりも、直接レンディングサービスを使って仮想通貨を借入人に貸し付けた方が収益は高くなります。そして、ビットコインは発行量の上限が決まっている有限な資産なのです。
以上より、ビットコイン等仮想通貨が普及した場合には、「銀行の信用創造機能は無くなっていく」と考えた方が良いと筆者は考えています。
銀行の強み(の一端)および収益力の源泉は、この信用創造機能にあります。そこが無くなるのです。
これは銀行システムが他の何かにとって代わられるということになります。
すなわち、仮想通貨が既存通貨を駆逐して流通する経済環境下においては、既存の銀行は機能しなくなります。ビジネスモデルが根底から覆るのです。
銀行の貸付業務は、保有者から仮想通貨を借りてきて貸出をするノンバンクのような存在(=ノンバンクは信用創造機能がないため、資金調達=借入額がそのまま貸出の上限額になります)になるか、仮想通貨の保有者間の貸し借りを仲介する取引所のような役割しかなくなるものと想定されます。
このような環境下では、中央銀行が通貨の流通量を調整しようとしても難しいでしょう。
そもそも中央銀行には通貨の発行ができないからです。
よって、金融政策は全く異なったアプローチをすることになります(それが何かについては筆者はまだ考察しきれていません)。
以上のような背景があるため、メガバンクが独自に仮想通貨を発行(例:みずほのJコイン)したりして、ビットコインのような中央管理者が存在しない仮想通貨の拡大を押しとどめようとしているのです。
もちろん中央銀行が独自の「デジタル通貨」を発行しようとするのも同様の流れです。
以上が、ビットコインのような仮想通貨が既存の通貨を駆逐し流通するようになった環境下での「銀行の信用創造機能が受ける影響」です。
ビットコイン等の仮想通貨は、振込サービス等の資金決済で銀行を破壊するのではありません。筆者の考えではむしろ「信用創造機能」を破壊するのです。
発行量が限られた仮想通貨だけが流通する経済システムがどのようになっていくのかを、筆者は完全に考察しきれていませんが、少なくとも既存の銀行にとってはビジネスモデルの大転換を迫られる破壊的な事象であることは間違いないでしょう。

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=333178

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