ドル支配の終焉とそのもとで拡大する無政府性を反映 仮想通貨の暴落に見る

長周新聞リンクより転載します。
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金の裏付け失ったドル 基軸通貨の変遷

 世界の通貨の中心であったドルが不安定化し、 ドル基軸通貨の支配体制が崩れようとしている情勢のもとで、 こうした国境をこえていく仮想通貨がよしあしは別として台頭し、 これに対してG20では各国政府が規制を強化する動きに出たり、 中国や韓国政府も中央銀行の統治力を防衛するために取引所の閉鎖や統制に乗り出している。 多極化が進み、 ドル基軸通貨体制のほころびが露呈しているのとセットで 国境を越えた世界通貨 の動きに注目が集まっているのも事実だ。 ひっくり返してみると、 基軸通貨であったり、 各国政府が管理してきた通貨や貨幣の存在が揺らいでいるのである。

 通貨が決済手段として利用されてきた歴史は古いが、 その価値は本来、 金や銀によって裏付けされていた。 その昔、 銀行は顧客から金を預かり、 その引換券として銀行券を発行していた。 銀行券はいわば金の預り書で、 銀行券を銀行に持って行けば金との交換が保証されていたのがはじまりだ。 こうした金との交換を約束した貨幣が 兌 (だ) 換券 と呼ばれ、 やがて中央銀行だけが銀行券の発行を許されるようになっていった。 中央銀行の銀行券 (通貨) の発行は、 中央銀行が保有する金をベースに決められる制度が 金本位制 といわれ、 それ自体は紙切れやコインに過ぎない通貨の価値を裏付けしてきた。

 この金本位制のはじまりは19世紀初頭のイギリスが起源とされている。 日本では明治政府が1897年に採用した。 18世紀まではその稀少性や保存性もあって、 金や銀が通貨の役割を果たしていた。 大航海時代を経て産業革命を成し遂げたイギリスが圧倒的な輸出競争力でもって世界に乗りだし、 植民地からかき集めた豊富な金でもって国際的な貿易取引を席巻していた。 世界ではじめて金本位制を採用し、 イングランド銀行が兌換紙幣としてポンド表示の紙幣と金の交換をはじめたのがはじまりだ。

 こうしてイギリスのポンドを基軸にした金本位制が第一次世界大戦前の1914年まで100年近く (パックス・ブリタニカ) にわたって続いたが、 第一次世界大戦のさいに各国は金本位制を離脱し、 管理通貨制度を採用した。 その背景には英国の経済力の低下があった。 突出した覇権国家としての地位から転落し、 金で裏付けする余裕を失ったのだった。 その後、 1925年に再び金本位制に復帰するものの、 1929年にはニューヨークのウォール街を震源にして世界的規模で大恐慌が深まりを見せ始め、 1931年に主要国は再び金本位制から離脱していった。 そうして管理通貨制度のもとで通貨の発行と金の関係を絶ち切り、 各国の政策の都合によって通貨を発行するようになった。 その結果、 各国が輸出を伸ばそうとして為替レートの切下げ競争 (為替ダンピング) や輸入制限に走ったために世界の貿易は縮小し、 最終的にはブロック経済の対立を引き起こして、 植民地再分割のために第二次世界大戦に突入していった歴史がある。

 第二次世界大戦後は、 世界の超経済大国になり膨大な金を保有していたアメリカがIMF体制の下で各国中央銀行に対して米ドルの金兌換を約束し、 名実ともにドルが基軸通貨となった。 ポンドは地位を追われ、 こうしてパックス・ブリタニカからパックス・アメリカーナへと移行していった。 IMF体制のもとで、 金1オンス=35㌦で交換可能な米ドルを基軸通貨とし、 各国通貨は米ドルとの固定相場制を採用していた (ブレトン・ウッズ体制、 金ドル体制)。 アメリカ政府は外国政府の要請があればドルを金と交換しなければならなかった。 各国はドル価値が金によって裏付けられていることから、 ドルを基軸通貨として受け入れ、 貿易決済や準備通貨として利用することになった。

 しかし、 第二次大戦後の資本主義の相対的安定期も長くは続かず、 アメリカは60年代のベトナム戦争で財政がパンクし、 財政赤字や経常赤字が増大してインフレが進行するなかで、 世界各国の通貨とドルの固定相場を維持することができなくなった。 国際収支の悪化によって、 大量のドル及び金を海外に流出させた。 金の準備量をはるかにこえた多額のドル紙幣の発行を余儀なくされ、 ついには金との交換を保証できなくなり、 1971年には金ドル交換停止に踏み切った (ニクソン・ショック)。

 このことを契機に金と通貨の関係は完全に切り離され、 金の規制を受けずに基軸通貨であるドルが大暴れをはじめることになった。 その後もドルが基軸通貨とはいえ、 世界的な信用は次第に失われ、 日本円との関係だけ見ても1㌦=360円だった固定相場から近年は1㌦=110円台にまで落ちている。 47年経過して、 ドルは円に対して3分の1以下の価値に下がっていることがわかる。 パックス・アメリカーナの終焉とともに、 世界の中心をなしてきた基軸通貨の地位が揺らいでいるのである。

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=332937

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