ひと昔前の子ども達って鼻水ダラダラ、鼻たれ小僧が多かったです。しかし、最近ではこの鼻水ダラダラを見る機会の方が少なく、その一方でアレルギー体質の子どもが増えていますね。

幼少期の鼻水ダラダラには意味があった

ひと昔前の子ども達って鼻水ダラダラ、鼻たれ小僧が多かったです。しかし、最近ではこの鼻水ダラダラを見る機会の方が少なく、その一方でアレルギー体質の子どもが増えていますね。

実は、幼少期の鼻水は、その後アレルギー体質になるかどうかに大きく関係しています。私は、いまだに伝統的な生活を送る世界の民族を訪れたとき(8民族)、どこも共通していたことは子ども達がみんな鼻水ダラダラだったことです。そして、アレルギー・アトピーはほぼゼロでした。これはとても印象的でした。

この鼻水ダラダラは周囲のバイ菌に感染していることを示します。幼少期におけるこうした多くの感染はその後のアトピーやアレルギーに対して予防効果があることがわかっています。これを衛生仮説といいます。(ただし、衛生仮説だけでは必ずしも説明できないアトピー発症もあります、それは以前記事に書きましたが、またいつかアップします。)

アメリカやカナダなどに移民しているドイツ系民族集団アーミッシュは、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られていますが、彼らにはアレルギー・アトピー・ぜんそく・花粉症がほとんど見られないことで有名ですね。アーミッシュの子ども達はほぼ毎日家畜動物と触れ合ったり、化学物質に頼らない生活を送っています。

また、PARSIFAL研究(2006)といわれる、オーストリア、ドイツ、オランダ、スウェーデン、スイスの14,893人の子どもたちを対象に行った調査では、農場で育った人はアトピー性湿疹、喘息、鼻結膜炎、喘鳴(ぜんめい)に対する防御機能を持っていることがわかっています。GABRIELA研究(2011)といわれるやはりヨーロッパ4か国の子ども79,888人を対象にした調査でも、農場の子どもたちは花粉症、喘息、アトピーなどの有病率はとても低く、生活環境により多くの微生物や細菌が潜んでいることがわかっています。

土壌やハウスダストにはグラム陰性細菌が多く存在しています。この細菌の外膜にあるリポ多糖(LPS)という分子が経口や経皮で体内に入り、免疫細胞や各組織の上皮細胞の受容体TLRに結合することで、免疫の正常性を学習していくのです。

実際に、ドイツの研究では、幼少期に鼻水(英語:runny nose)が垂れている子ども達ほど、ぜんそくがほぼ無かったことが報告されています(BMJ.2001;322:390-395)。鼻水は幼少期の必然な感染の証しであり、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)を高用量で曝露すると、IL10、IL12、IFNγなどのサイトカインが多く産生されるようになり、Th1細胞やTreg細胞といったアレルギー発症を誘導しないリンパ球を発現させるためです。(逆に幼少期にリポ多糖(LPS)の曝露が低用量だと、アレルギー体質になりやすいTh2細胞が優位になります)

され、これに限らず、乳酸菌や海藻類などを多く摂取するとアレルギー疾患から防御されやすくなるということを聞いたことがあるでしょう。これは乳酸菌の生菌そのものが腸に働いているのではなく、乳酸菌の構造の一部の分子がTLRに働いているからです。TLRにも1~10までの型がありますが、乳酸菌構造の一部のペプチドグリカンという分子がTLR2に結合し、正常な免疫活性が向上します。そのため、免疫応答の間にTh1/Th2バランスが徐々に調整され、正常化されていきます。こうしてアレルギー性疾患を防御できるのです。海藻類のβグルカンもTLR2に結合します。

そして、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)はTLR4に結合します。リポ多糖(LPS)によるTLR4での結合は、このTLR2の実に1000倍~1万倍の免疫活性化があります。つまり、乳酸菌食品や海藻類の摂取も大切ですが、それよりも、幼少期は積極的に外で遊ぶことや適度な泥んこ遊びは免疫の正常化に大きな影響を与えるということです。

しかし、抗菌グッズのほとんどがグラム陰性細菌を抑えるものであり、農業で使用される農薬はこのグラム陰性細菌が作物中に生産したリポ多糖(LPS)を減少させています。清潔すぎる環境では、幼少期にリポ多糖(LPS)の曝露が少なすぎて、アレルギー体質へと変化させてしまうかもしれません。

以上のように、幼少期の鼻水ダラダラには意味があります。適度な衛生は必要だとしても、あまりにも清潔すぎる環境は避け、子どもは元気に外で遊ぶのが必然なのかもしれません。

※蓄膿症での鼻水はこれに当たりません。あくまで生理的な鼻水はだいたいサラサラしています。蓄膿症や副鼻腔炎が疑われる場合は信用のあるお医者さんに診てもらってくださいね。

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