冬の太陽光線は弱く日照不足でホルモンバランスが崩れやすい時期:人間だけが不自然に一年中同じような生活をしたがる。

セロトニンは太陽光を欲しています(特に冬)

この冬の時期は鬱っぽくなったり、人と会うのが億劫になったり、引きこもりがちになったり、することがあります。冬は寒いため外に出ずに屋内にいることが多いことや、冬の太陽光線は弱く日照不足になることによって、ホルモンバランスが崩れやすい時期だからです。

気分の落ち込みにはホルモンの一つ、「セロトニン」の不足が関係しています。セロトニンはそのうち90%は消化管で合成され、1%は脳で作られています(そして8%は血小板)。セロトニンは通称幸せホルモンと呼ばれるように、不安をなくし、精神を安定させ元気を出させる作用があります。

お肉などに含まれるトリプトファン(アミノ酸の一種である)を原料に、鉄・カルシウム・葉酸などの栄養素とBH4という酵素によって5-HTPという中間物を経て、そこから主にビタミンB6(PLP)を補酵素にしてセロトニンになります(※このときマグネシウム、亜鉛、ビタミンC、そして生体内で作られるSAMeなども必要です)。

さて、ここまでは教科書通りですが、最近ではこの代謝において日照の紫外線がとても重要な役割を果たしていることが指摘されています。特に5-HTPからセロトニンに代謝される際に必要な補酵素PLPはビタミンB6の活性型ですが、体内でこの活性型にするには紫外線UVに大きく依存していることがわかっています。また、日照量が減ると、最大で20~30%もセロトニン活性が下がるという研究もあります。つまり、栄養だけでは解決できないところがあり、日照のような環境要因にも大きく依存しているのです。

また、教科書的には、先述したように腸、脳、血小板が主なセロトニン合成場といわれていますが、最近では皮膚組織にもセロトニン作動系の機構が存在するとわかっています。皮膚は日照を吸収する大事な臓器なのです。

さらに、日照による栄養素といえばビタミンDを忘れてはいけません。紫外線によって体内で合成されるビタミンDは、セロトニンなどの神経伝達物質を正常にするための遺伝子の発現と活性化を促します。実際に、冬の時期に多いビタミンD欠乏は、脳におけるセロトニンレベルの低下と相関しています。

栄養療法に陥りがちな罠、それは季節変動や生活環境まで変えていくことを忘れることです。私たちは食事だけではなく、季節変動や生活環境によっても進化してきたことを忘れてはいけません。

セロトニンの原料はトリプトファンだからといって、トリプトファンダイエットを提唱する人もいますが、実は既に多くの研究や臨床が行われていますが、たいてい失敗しています。それはトリプトファンの代謝は90%以上はキヌレニン経路に向かい、セロトニン合成経路に向かうのは数%に過ぎないからです。キヌレニン経路ではナイアシン合成が到達点ですが、残念ながらそれまでに途中代謝物のキノリン酸という神経毒性物質を多く生成してしまうのです。そのため、やみくもにトリプトファンを多く摂ればよいと言うものではありません。

この冬の時期、だれもが陥りやすいセロトニン不足。そのカギを握っているのは、実は日光なのです。

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