現行の資本主義の終焉:銀行という業態が必要となくなる時代へ

「「銀行が消える日」がやってくる」(リンク

■3グループ合計で3万2000人分の業務削減
ついに大手金融機関が大幅な人員削減に動き出す。みずほフィナンシャルグループ(FG)は11月13日、傘下のみずほ銀行の支店など国内拠点の2割に当たる約100店舗を削減、2026年度末までにグループの従業員を1万9000人減らす方針を打ち出した。また、三菱UFJフィナンシャル・グループも2023年度末までに9500人分の業務量を削減、三井住友フィナンシャルグループも2019年度末までに4000人分の業務量を削減する、としている。(中略)

一見、突然のように見える構造改革方針は、なぜ打ち出されたのか。

一つはマイナス金利政策などに伴う金利の低下で、銀行業務そのものが急速に儲からなくなっていることがある。日本の銀行の伝統的なビジネスモデルは、広く預金を集めて企業などにお金を貸し、その金利差で儲けるというもの。ところが低金利によって、その金利差がほとんどなくなっている。

■伝統的な商業銀行は「構造不況」
さらに、企業などの資金需要が乏しく、銀行から資金を借りるところが激減している。預金が貸し付けに回っている割合を示す「預貸率」は銀行114行の平均(2016年3月期)で68%に過ぎない。預金と貸出金の差額は何と244兆円に達している。

景気が悪くて企業の資金需要がない、というわけではない。債券発行やファンドからの投資受け入れなど、資金調達手法が多様化していることで、銀行にお金を借りに来なくなっているのだ。

つまり、構造的な変化が起きているわけで、金利が上昇し始めれば、銀行の収益力は元に戻る、というわけではないのだ。日本経済新聞の記事の中で、三菱東京UFJ銀行の三毛兼承頭取は「伝統的な商業銀行モデルはもはや構造不況化している。非連続的な変革が必要だ」と発言している。

だが、ここまでならば、世界的な低金利の中で、欧米の金融機関が直面してきた課題と変わらない。欧米では10年以上前から店舗網の縮小や窓口業務を行ってきた行員の大幅削減などを行ってきた。日本のメガバンクの構造改革方針は、10年遅れのリストラ、と見ることもできる。

問題は、銀行の経営がさらに深刻なことだ。人工知能(AI)やフィンテックと呼ばれる金融技術の進化によって、銀行業務そのものが「消える」可能性が出てきているのだ。特に資金決済など、伝統的に銀行が担ってきた業務が急速に新しい仕組みに置き換わりつつある。店舗でのATMを使った振り込みがパソコンなどを使った振り込みに変わるだけなら、銀行の役割は変わらない。ところが、今進んでいることは、銀行を介さずに携帯電話端末の間だけで決済ができてしまう新しい仕組みの進展だ。国境を越えても関係がないため、高い手数料を取ってきた銀行の外国為替業務なども減っていく。

さらに、ブロックチェーンと呼ばれるシステム上の帳簿技術やそれを使ったビットコインなど仮想通貨が広がれば、ますます伝統的な銀行業務は消えていく。その変化のスピードは10年単位という話ではなく、数年で景色が一変する可能性を秘めている。つまり、10年後に1万9000人削減といった悠長な話ではないのだ。(中略)

■終身雇用は企業にとって「好都合」
新卒で銀行に入った人材は、こうした伝統的な業務を「スキル」として叩き込まれるが、10年後、20年後にそのスキルが役立つことはないだろう。仮にそうした人たちの業務を残そうとすれば、銀行自体の収益力はさらに下がり、競争力を失っていく。(中略)

こうした雇用慣行が今後の銀行経営に大きな足かせになるだろう。今、銀行が直面しているのは、おそらく数百年に一度の大変化だ。銀行のビジネスモデルを根底から見直さなければならない中で、旧来モデルに対応するための人材を抱え続けなければならないのだ。支店業務で「優秀」だった人材が、フィンテックの世界で力を発揮できるとは限らないのに、解雇できないわけだ。

フィンテックに対応してビジネスモデルを変えられなければ、銀行の収益力はさらに低下することになるだろう。赤字に陥れば、雇用確保などと言っていられなくなる。「業務量を削減」した分、人員も減らすというリストラが本格的に始まるのも、そう先の話ではないだろう。(中略)

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=331610

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