スウェーデンは「寝たきり老人」がいない:過剰な医療は施さず、住み慣れた家や施設で息を引き取るのが一番だというコンセンサス

リンクより引用します。
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幸福度世界1位「北欧の楽園」に学ぶ老いと死

高福祉・高負担の国で知られるスウェーデンが実は「寝たきりゼロ」社会だとご存じだろうか。幸福度調査で常に上位にランクインする「幸せの国」の住民は、どのように老い、死を迎えているのか?

最後まで人生を楽しむ

「この施設には40人ほどのお年寄りが暮らしています。8割以上が認知症を患っていますが、寝たきりになっている人は一人もいません。自分の力で起き上がれない人でも、毎朝必ずスタッフが手伝って車椅子に乗せます。そして食堂で一緒に食事を楽しむのです」
こう語るのは、スウェーデンの首都ストックホルム郊外にある、介護サービス付きの特別住宅で働く介護士のアンナ・ヨハンソンさん。この住宅に暮らす人たちは、ほとんどが80歳以上のいわゆる後期高齢者で、在宅で介護サービスを受け続けることが難しいほどの要介護状態にある。
しかし、車椅子に乗っている人でもきれいな服に着替え、パジャマでうろうろしているような高齢者はいない。日本の後期高齢者が集う施設に比べるとずっと穏やかで、明るい雰囲気だ。

(中略)

高福祉国家として知られるスウェーデンは、OECD(経済協力開発機構)が行う国別幸福度ランキングでも上位の常連だ(’13年度はオーストラリアと並んで1位。日本は21位)。
スウェーデン人の平均寿命は81.7歳。日本人の83.1歳に比べれば短いが、それなりの長寿国である。にもかかわらず、この国には寝たきりになる老人がほとんどいないという。

子供と暮らさない

スウェーデンの高齢者ケアに詳しい東京経済大学の西下彰俊教授が語る。
「日本では寝たきり状態にある高齢者が150万人から200万人ほどいると言われています。一方、スウェーデンはそもそも寝たきりになる人がほとんどいない。いたとしても、終末期ケアが行われる数日から数週間の短期間だけです」
この驚くべき違いは、どこからくるのか?
スウェーデンの人が特別に健康的な生活を送っているというわけではない。例えば食生活。厳しい冬が長く、食材も貧しいため、北欧の食事は日本のそれほど豊かなものではない。

(中略)

基本的な前提としてスウェーデンの高齢者は、子供などの親族と暮らすことをしない。夫婦二人か、一人暮らしの世帯がほとんどで、子供と暮らしている人は全体の4%に過ぎない(日本は44%)。
これは「自立した強い個人」が尊ばれる伝統に根差したもので、高齢者に限らず、若者も義務教育を終えた16歳から親の家を出て一人暮らしを始めるのが普通だ。だからといって家族関係が希薄というわけではなく、近くに住んで頻繁に交流する家族は多い。

(中略)

国を一つの「家族」と考える

現在の日本の病院では、死ぬ間際まで点滴やカテーテルを使った静脈栄養を行う延命措置が一般的。たとえベッドの上でチューブだらけになって、身動きが取れなくなっても、できるだけ長く生きてほしいという考えが支配的だからだ。

(中略)

「日本の場合だと介護施設に入っても、病状が悪化すれば病院に搬送され、本人の意思にかかわらず治療と延命措置が施されます。施設と病院を行ったり来たりして最終的に病院で亡くなるケースがほとんどです。自宅で逝きたいと思っても、延命なしで看取ってくれる医師が少ない。
一方、スウェーデンではたとえ肺炎になっても内服薬が処方される程度で注射もしない。過剰な医療は施さず、住み慣れた家や施設で息を引き取るのが一番だというコンセンサスがあるのです」
介護する側もされる側も、寝たきりにならないように努力をする。それでもそのような状態に陥ってしまえば、それは死が近づいたサインだということで潔くあきらめる。それがスウェーデン流の死の迎え方なのだ。
このような介護体制を根底から支えているのは、充実した介護福祉の人材である。介護士は独居老人の家を頻繁に回り、短い場合は15分くらいの滞在時間でトイレを掃除し、ベッドメイクを済ませ、高齢者と会話をして帰るというようなことをくり返す。
日本では介護というと、どうしても医療からの発想になりがちで、手助けよりも治療という対処に傾きやすい。

スウェーデン福祉研究家の藤原瑠美氏は語る。

「日本の場合は病院経営をする医師などが主導権を持っているケースが多く、すぐ投薬・治療という方向になる。
しかし、スウェーデンの場合は介護士たちが大きな権限を与えられていて、認知症の場合には薬を使うよりも、本人がどんな助けを必要としているか汲みとることが重視されています。
例えば私が調査した3万人ほどの自治体では2300人の職員がおり、そのうち400人が介護福祉士でした。介護は重要な雇用創出の機会にもなっているのです」
日本では介護士というと薄給なわりにきつい仕事というイメージだが、スウェーデンでは安定した公務員で、経済的に困窮するようなこともない。
藤原氏によると、スウェーデンでは認知症の人のうち約半数が独居しているという。しかしそれで大きな問題が起きたこともない。
日本では’07年に認知症患者が徘徊して起こした鉄道事故で、監督責任を問われた遺族が鉄道会社から損害賠償を求められるという裁判があったが、このようなケースはスウェーデンでは考えられない。
「この国では、介護の負担はすべて国や自治体がします。『国は一つの大きな家族である』という発想が定着していて、家族が介護のために経済的負担を強いられるということもありません。
また、施設を訪れた家族が、食事や入浴の手伝いをすることもまずありません。家族は一緒に楽しい時間を過ごしてもらえばそれでいいのです」(前出のヨハンソンさん)
老後破産や孤独死、老老介護による共倒れなどがますます深刻化している日本の現状から見ると、まさに「北欧の楽園」だ。

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=308265&g=131205

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