狂った清潔意識が、微生物を含めた長い長い共生の営みを破壊している

☆☆細菌が素早く抗生物質耐性を獲得する仕組み

☆細菌の遺伝子の塩基対の長さの比較

ヒトの染色体DNA:1。
細菌の染色体DNA はその1/1,000。
細菌DNA のうち、
プラスミド、ファージ、トランスポゾンなどの、動くDNA:1/100,000~1/1,000,000
となっており、DNAの数の比較に比べ、はるかに大きな差が出ている。

☆細菌の動く遺伝子の特徴

この極めて小さい、動くDNAといわれる、細菌の染色体以外のDNAは、異種同種を問わず菌細胞間では移動でき、遺伝子として機能(≒染色体に組み込まれる)することができる。これらは、リング状のひものような形状をしている。

これら動く遺伝子の最小のものは、ウイルスDNA とほぼ同じくらいのものもあり、ウイルスが細胞感染するように、比較的簡単に他個体へ移動できる。

また、タンパク質翻訳を行う際の塩基配列上の遺伝子の目印は、RNA ポリメラーゼの共通な認識配列であるプロモーター配列とリボソーム結合配列(GGAGAA)と翻訳開始メチオニン(ATG)の「セット」であり、短い動くDNA の、プラスミド、ファージ、トランスポゾンはどれもこのセットを備えている。

したがって、これらが細胞に入ると、このDNA の情報により新規タンパク質が産生される.しかもプラスミド上には染色体DNA と同様な複製開始シグナル(oriC)をもち、プラスミド単独でも複製することができる。

次に、外来DNA の取込みには3つの機構がある。
① 種間の接合によるプラスミドDNA の細胞内への移動。
② ファージによる細胞内への導入(ウイルス感染のようなもの)
③ 外来DNA 挿入システムによるDNA 断片の細胞内への直接的な取り込み(細胞膜に作られたタンパク質チャンネルからの取り込み)。

☆DNAの組換え機構。
これらにより細胞内へ入ったDNA は組換えにより染色体DNA に組み込まれる。その機構は、プラスミド、ファージ、トランスポゾンの動く遺伝子は、動くDNAごとに酵素の配列は異なるが、どれもDNA 断片を組み換える機能をもっており、複製の時にファージDNA に乗り換えて複製が行われるため、染色体に組み込まれていく。

このように、プラスミド、ファージ、トランスポゾンも同じしくみで、セットの組換え酵素配列を礎にして新たなDNA が出たり入ったりすることができる。多くの場合、薬剤耐性遺伝子や毒素遺伝子はこの動くDNA から獲得される。

例えば、薬剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や病原性大腸菌O-157 はその例である。O-157 の遺伝子5,361 個のうち、約1,700 個が従来の大腸菌になない特殊な因子で、これらはほとんど外来性である。そして、この中に2種類の志賀毒素遺伝子が同定された。

そうするとO-157は不潔な環境だから発生したのではなく、化学物質による極度な滅菌行為が生み出した、猛毒を出す新種であると考えたほうが良い。

このように、細菌は過酷な環境にさらされると、新規の毒素や薬剤耐性の遺伝子などの外来遺伝子をゲノムに取り込んで、その環境に適応できるものだけが選択的に生き残っていく。いわば、細菌細胞にとって動く遺伝子は、生き残るための重要な武器なのである。

このように見ていくと抗菌・滅菌などの狂った清潔意識が、微生物を含めた長い長い共生の営みを破壊しているのは間違いない。

参考:動く遺伝子は細菌の武器(リンク

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参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=360843

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