もうすぐ男は絶滅か…「Y染色体」がマジ減少中と判明! 性別決定遺伝子を失った人間に起こるトンデモない変化も!

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男性だけが持つ性染色体であるY染色体の劣化が著しいという。このまま推移すれば、Y染色体の消滅も考えられるというのだ。これは男性の絶滅を意味しているのだろうか。

■人間のオスは絶滅してしまうのか?

 人間の細胞には対になった23組の染色体のペアがあるのだが、その内の1組が性染色体のペアだ。性染色体の組み合わせがXXなら女性に、XYなら男性になる。XXの組み合わせでは胎児の時点で卵巣が生成され、XYの組み合わせで精巣が発達してくるのである。

 X染色体には1000もの遺伝子が含まれているが、Y染色体にはなんと45しかないという。かつてはY染色体も豊富に遺伝子が含まれていたということだが、どうやら徐々に減ってきた揚げ句の結果であることが各種の研究で報告されている。さらにこの先も遺伝子が減り続ければY染色体はなくなってしまうのだろうか。

 残りわずかになってしまったY染色体の遺伝子だが、その中には胚の性別をオスにするスイッチとして機能するSRY遺伝子がある。このSRY遺伝子がある限りY染色体は“威厳”を保っていられるともいえるのだが、このまま減少が続けばSRY遺伝子も失ってしまうかもしれない。

 将来の人類には男性がいなくなってしまうのかと不吉な思いにもなる話題だが、どうやら心配は無用のようだ。

 米アリゾナ州立大学の進化生物学者であるメリッサ・ウィルソン氏は、「私たちの性染色体は必ずしもXとYであるとは限りません」と語る。

「男性性または女性性を決定するものは特にそれら(性染色体)にリンクされていません」(メリッサ・ウィルソン氏)

 ウィルソン氏によれば最初の哺乳類が1億から2億年前に進化したとき、特に性染色体と分類できるものはなかったということだ。XとYは他の染色体のペアとまったく同じであり、対応する構造とサイズが同じであったという。

ウィルソン氏によれば、時間の経過とともに遺伝子は突然変異を起こすのだが、染色体は相互に再結合することにより、これらの突然変異を回避することができるという。しかし、現在のY染色体はX染色体に再結合できるほどの類似性がないため突然変異を回避することができない。したがって、もし劣化した場合は劣化したままになってしまうのだ。

「悪い突然変異が発生した場合、通常は対となっているパートナーから“コピー”して入れ換えることができます。しかしY染色体はそれを行うことができません。したがって、Y染色体は有害な突然変異を蓄積しました。時間とともに、Yがどんどん小さくなるまで、それらの突然変異は自然淘汰によって取り除かれました」(メリッサ・ウィルソン氏)

 Y染色体が貧弱になったのは、突然変異した遺伝子が交換されずに自然淘汰されたことによるという。

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■ヒトがY染色体を失う日

 一方で豪ラトローブ大学の遺伝学者、ジェニファー・グレイブス氏は、動物は性染色体を必要としないことを指摘している。我々の染色体はすべて性関連遺伝子と非性関連遺伝子の混合物であり、Y染色体の唯一の特別な特徴は、精巣の発達のオン/オフスイッチとして機能する1つのSRY遺伝子のみであると指摘している。

 ワニとカメの場合、オン/オフスイッチは必要なく、胚が発達する際の温度によって性別が決まる。グレイブス氏は我々の哺乳類の祖先はこの特徴を共有している可能性が高いことを2006年に科学誌「Cell」で発表したレビューで報告している。哺乳類は長らく性染色体を必要としていなかったのだが、ある時点で突然、Y染色体にSRY遺伝子が備わったということだ。

 グレイブス氏の研究では1億6600万年前、Y染色体には1669個の遺伝子があったことが示唆され、それはX染色体と同じであったという。

「したがって、損失率が均一である場合(100万年あたり10遺伝子)、残りが45しかない場合、Y染色体全体が450万年後に消えることを理解するのに特別な頭脳は必要ありません」(ジェニファー・グレイブス氏)

 450万年後にY染色体が消滅する可能性が導き出されたのだが、2012年の研究では劣化の速度が時間とともに遅くなっていることが報告されている。それまでは100万年ごとに10個の遺伝子がY染色体から失われていたのだが、2500万年前のアカゲザルとの分岐以来、ヒトのY染色体は1つしか遺伝子を失っていないということだ。

もうすぐ男は絶滅か…「Y染色体」がマジ減少中と判明! 性別決定遺伝子を失った人間に
 そしてグレイブス氏はY染色体の遺伝子の喪失は他の種でも起こっていると指摘している。モグラレミング属の2種は、Y染色を完全に失ってしまったのだが問題なく生存している。こうした例からもY染色体の損失は種の生存を脅かすものではないという。

 実際、男性と女性で異なって発現する遺伝子の95%は、実際にはX染色体とY染色体に関わってはいないことを前出のウィルソン氏は指摘している。たとえば女性の成長と性的発達に不可欠なエストロゲン受容体をコードする遺伝子であるESR1は、6番染色体にあるのだ。

 Y染色体を失うことは男性を失うことを意味せず、Y染色体の喪失はおそらく別の遺伝子が性の主な決定要因としての仕事を引き継ぐことを意味するであろうとグレイブス氏は説明している。Y染色体に代わって良い仕事をする遺伝子は山ほどあるというのだ。

 確かにヒトがY染色体を失う日がいつかやって来るかもしれないのだが、それは恐れるべきことではなく、やって来るにしてもはるか遠い先のことのようである。

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参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=360274

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