【虫歯】歯医者が語る:虫歯予防は単純「砂糖を食べないこと」。虫歯と砂糖の関係について。

むし歯の原因
むし歯の原因が甘いものなのはきっと皆さんご存知でしょうけど、ちゃんと知っている人は意外と少ないかと思います。そこで今回は、むし歯の原因について説明しましょう。
むし歯というのは一般的な言い方ですが、専門的には齲蝕(うしょく)(Dental Caries)と言います。齲蝕は、歯面を被覆するバイオフィルム(デンタルプラーク)内の代謝作用によって、歯面の一部が化学的に溶解した結果として現れる徴候や症状を表現する用語として定義されます。難しいでしょうから簡単に言えば、むし歯は歯の表面につくプラーク中の細菌が出す酸によって歯が溶ける病気ということです。
プラーク中の細菌は酸(乳酸)を作って歯を溶かすのですが、何から酸を作るかというと、これも専門用語で言うと、「発酵性炭水化物」です。ちなみにタンパク質や脂質からは酸が作られることは無く、ゆえにタンパク質や脂質はむし歯の原因とはなりません。
炭水化物と一口に言ってもたくさん種類がありますが、「発酵性」というのは、細菌が代謝できる炭水化物を指します。代謝しやすいものほど酸を作る能力が高く、ゆえにむし歯になりやすいと言えるのです。
炭水化物の中でも特に代謝しやすく、ゆえにむし歯の原因となるのが「砂糖(スクロース)」です。口腔内細菌に砂糖を与えると、乳酸がたくさん作られることが分かります。砂糖の他に乳酸をたくさん作る発酵性炭水化物としては、ブドウ糖やデンプンがありますが、砂糖に比べると酸の生成能はそれほど高くありません。牛乳や母乳に含まれる乳糖(ラクトース)は細菌にとって代謝しづらい糖なので、実質的にむし歯の原因とはなりません。
実験室で砂糖が特に酸を作りやすい発酵性炭水化物であると分かっても、必ずしも実際のむし歯の原因であるとは限りません。そこで動物実験でむし歯の原因は砂糖であるかどうか確認されました。ラットを用いた実験では、発酵性炭水化物のうち、砂糖だけがむし歯を確実に発生させることが分かりました。アカゲザルを用いた実験でも同様でした。
とはいえ、ラットやアカゲザルと人間では違いますよね。人間ではどうなのか、砂糖を与えた場合と与えなかった場合とで、実際のむし歯の発生率が変わるのかという介入研究は、人道的見地から、行うことはまず不可能でしょう。でも実は、貴重な介入研究が行われていました。
スウェーデンのVipeholm病院で、精神的なハンディキャップを持つ人を対象に、5年(1946~1951年)にわたって行われた介入研究です。この研究では砂糖を与えた群と与えなかった群とで、むし歯の発生率が比較されました。
それによると、砂糖を与えた群で有意にむし歯が発生し、特にキャラメルやトフィ(ソフトキャンディーのこと)を与えられた群でより多くのむし歯ができました。このことから、むし歯は砂糖が引き起こすこと、特に歯にくっつきやすく、お口の中に長くとどまる形態で与えられた方がよりたくさんのむし歯を作ることが示されました。
今考えると、人道的に大変問題があり、今後は二度と同じ研究はできないでしょう。それでも実際に人間でむし歯を発生させるのは砂糖であることがはっきりしたという点で、この介入研究には歴史的意義があります。
というわけで、むし歯の根本原因は砂糖であるということが、確実であることがお分かりいただけたでしょう。むし歯の根本原因が分かったなら、むし歯の予防法は単純です。つまり、「砂糖を摂らないこと」ただこれだけです。皆さんもぜひ、実践してみてください。

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