少子化対策がことごとく失敗に終わっているのは、まさに対策の照準がずれているから。
経済力や子育て支援の問題ではなく、女性の結婚年齢の上昇が少子化の本当の原因です。
■少子化対策を打ちましょうとひたすら言ってますが…ことごとく失敗に終わったこの20年
(中略)
ちなみに、1994年に策定されたエンゼルプランですでに「子育て支援のための総合計画」として以下のような文言が引用されています。女性が一生の間に生む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.46と史上最低を記録した。少子化については、子ども同士のふれあいの減少等により自主性や社会性が育ちにくいといった影響や、年金などの社会保障費用に係る現役世代の負担の増大、若年労働力の減少等による社会の活力の低下等の影響が懸念されている。
出典:『新エンゼルプラン』(Wikipedia) 2019年02月26日時点その対策の中身は「低年齢児を受け入れるための保育所の増設、時間延長・休日保育など」で、今でも都市部の各自治体が血道を上げて待機児童解消に向けて頑張っておるわけなんですけど、もう20年も前からそれは話題にはなっていたわけですよ。
で、「待機児童ゼロ作戦(2001年:厚生労働省)」や「子育てプラスワン」として、「子育て期間における残業時間の縮減」「子供が生まれたら父親の誰もが最低5日間の休暇取得」「男性の育児休業取得率10%の目標」など、男性の働き方を見直し、育児参加を求めたものの状況が一向に改善せず、2005年に新エンゼルプランになりました。
(中略)■結婚して生む子どもの数は昔から変わっていない ただ、女性の結婚する年齢が上がったのである
我が国の合計特殊出生率はいまなお1.43(2017年)と改善を見込めず、政策面での努力にもかかわらず一向に改善が見られないというのが悩ましいところです。
で、ヤバいヤバい言っているわけですが、実のところ、日本の社会風習や家族の仕組みから考えると、日本の少子化というのはすでに原因がわかっているものでありまして、もっぱら「人口動態の悪化」と「成婚数の減少と晩婚化の進展」とで説明がかなりついてしまいます。
(中略)平たく言えば、男性と女性が一緒になって、結婚してから子どもを生む数を表す有配偶者出生率を見てみると、1972年以降、実際にはたいして変わってません(1972年夫婦あたり2.20人、2015年1.94人)。
地味に0.3ほど下落している理由もはっきりわかっていて、単純に女性の結婚する年代が上がっているからです(1972年:24.6歳→2015年:29.8歳)。30歳になってようやく結婚して、よしここから子どもを三人産もう! と思ってもまあなかなか大変なわけです。
女性にとって出産に適した年齢というのは生物学的にほぼ決まっていて、不妊治療など技術の進展はあれども、やはり早く結婚した方が子どもを多くもうけやすくなるのはまあ当然と言えば当然だなあと思うところです。
■経済力と結婚・出産は関係ない
海外と比較しても、国内で比較してもそうであるしかしながら、我が国の少子化対策というのはどちらかというと、前述のように働き方を良くしようとか、育児休暇だ時短だというのに加えて、保育園・子ども園や学童保育などでの預かり時間の延長あるいは全入化といった方向に進んで行っています。
ぶっちゃけ、今いる夫婦が産む子供の数はこれらの対策を打とうが打たまいが、夫婦一組当たりだいたい1.9人~2.1人ぐらいが期待値になっているので、待機児童がいなくなったところでこの夫婦あたりの出生数がゴボッと赤ちゃん3.0人ぐらいまで増える、なんてことはまあないわけです。
一方、未婚者の増加ってのはダイレクトに出生数の減少に効いてきますので、政府担当者が半笑いで「おひとりさまが増えましたね」とか言っている間にどんどん出産適齢期を過ぎた男性女性が中高年になって一生独身で生きていくことになります。これは大変だ。
(中略)若い人が結婚しなければ、ダイレクトに産まれる子供の数は減る、というのが日本社会の特徴であって、若い人が結婚できない理由を除去してあげないといけません。
若い人が結婚できない理由というのはいろいろと調査は進むものの、一般論で言えば結婚できるだけの経済力(所得)がないとか、上手く相手が見つけられないとか、価値観として結婚自体に魅力を感じないとかいう理由が上位にやってきます。
(中略)それもこれも若い人の経済力が弱く…という話になるわけですが、じゃあ国際比較で見たときに日本の若者がそこまで経済力弱いのですか?という話になりますよね。
日本より特殊出生率が高いフランスは若年者失業率が21.6%、スペインが35.5%、イタリアが32.8%(いずれも2018年)と、我が国の若年層失業率4.2%(2018年)と比べても全然比較にならないぐらい他の国や地域の若年者は経済力がないとも言えます。
実のところ、結婚しない理由としての経済力というのは、おそらく恋愛や結婚、家庭生活よりも楽しい文化的生活があるということの裏返しでもあるのかなあという風にも思うわけであります。
かたや、日本国内の地域別出生率で見れば高い地域は沖縄・島根・宮崎であり、県民所得でも若年層所得で見ても必ずしも高いとは言えない状況です。
もはやここまで来ると、今、日本国内で喧伝されている少子化対策というのはずいぶん前から手を打たれているけど一向に成果が上がらない寒い状況であるだけでなく、待機児童解消だの時短勤務だの、効果がみられない対策ばかりが打たれ、肝心の「おひとりさま経済」への救済となるような結婚政策が後手に回りまくっているんじゃないのか、と思うわけであります。
少子化対策のためには結婚を奨励するべしというと時代遅れで批判もされそうな世界ではあるのですが、データを厳然と見るのであれば出生率対策のアウトカムに直接効く変数は、配偶者のある安定した家庭を日本人が築けるようにすることであり、現代社会の個人主義的なテーゼとはまったく逆です。
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参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=358291