コロナ禍が突付ける病院経営~全国の3分の2の病院が赤字転落

新型コロナの影響で全国の3分の2の病院が赤字転落、東京都のコロナ患者受け入れ病院では9割が赤字
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新型コロナウイルス感染症の影響で病院経営は厳しく、全国の3分の2の病院が赤字に転落している。とりわけ「東京都」に所在する病院では非常に厳しい状況にあり、新型コロナウイルス感染患者を受け入れた病院の「9割」が赤字に陥っている。

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が6月5日に公表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」の追加報告から、こうした状況が明らかになりました。

新型コロナ受け入れ病院、全国では78.2%、東京都では89.2%が赤字
新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言は全都道府県で解除されていますが、一部地域でクラスター(集団感染)が発生し、東京都では患者数が再び増加傾向を示すなど、第2波・第3波への備え(感染拡大防止、医療提供体制確保など)が非常に重要となります。

しかし、医療機関においては、
▼感染拡大防止に伴う患者減(患者の受診控えにとどまらず、予定入院の延期など)や予定手術の延期などによる収益減
▼感染防止策の徹底(施設整備や備品購入)などによるコスト増―が生じ、経営が非常に厳しい状況に陥っています。

そこで3病院団体は、新型コロナウイルス感染症の影響が本格化した2020年2-4月の状況を、前年度月(2019年2-4月)と比較分析するための調査を実施。最終的に3病院団体の会員1307施設(速報時点では1141施設)から有効回答が寄せられました。

5月18日の速報では、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた病院や病棟を閉鎖せざるを得なかった病院では、今年(2020年)4月の医業利益率は二桁のマイナスに陥っていることなどが、5月27日の最終報告では、とりわけ東京都に所在する病院では、今年(2020年)4月の医業利益率がマイナス30%近いことなどが明らかにされました。

さらに今般の追加報告では、新型コロナウイルス感染患者の有無別などに病院を分類したうえで、赤字病院と黒字病院の割合が整理されています。
新型コロナウイルスの影響がない昨年(2019年)4月において、医業利益率が赤字である病院の割合は「半数」程度ですが、今年(2020年)4月に赤字となっている病院の割合は「7-9割」程度に増加しています。赤字病院の状況を詳しく見ると、次のようになっています。

【全体】(1203病院)
2019年4月の赤字割合:45.4% → 2020年4月の赤字割合:66.7%(赤字病院が21.3ポイント増加)
【新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院】(339病院)
2019年4月の赤字割合:54.6% → 2020年4月の赤字割合:78.2%(赤字病院が23.6ポイント増加)
【新型コロナウイルス感染患者を受け入れていない病院】(864病院)
2019年4月の赤字割合:41.8% → 2020年4月の赤字割合:62.3%(赤字病院が20.5ポイント増加)
【病棟を一時閉鎖せざるを得ない病院】(180病院)
2019年4月の赤字割合:50.6% → 2020年4月の赤字割合:79.4%(赤字病院が28.8ポイント増加)
新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院や、病棟閉鎖を余儀なくされた病院だけでなく、新型コロナウイルス感染患者を受け入れていない病院でも3分の2近くが「赤字」に陥っていることがわかります。

また、最終報告で「とりわけ厳しい」ことが明らかになった東京都所在病院に注目すると、次のような状況です。

【東京都所在病院全体】(88病院)
2019年4月の赤字割合:51.1% → 2020年4月の赤字割合:77.3%(赤字病院が26.2ポイント増加)
【新型コロナウイルス感染患者を受け入れている東京都所在病院】(37病院)
2019年4月の赤字割合:56.8% → 2020年4月の赤字割合:89.2%(赤字病院が32.4ポイント増加)
【新型コロナウイルス感染患者を受け入れていない東京都所在病院】(51病院)
2019年4月の赤字割合:47.1% → 2020年4月の赤字割合:68.6%(赤字病院が21.5ポイント増加)
【病棟を一時閉鎖せざるを得ない東京都所在病院】(19病院)
2019年4月の赤字割合:47.4% → 2020年4月の赤字割合:84.2%(赤字病院が36.8ポイント増加)

さらに全国と東京都を比較すると、次のような状況です。東京都所在の病院では、まさに「経営が危機的な状況にある」ことが分かります。

【全体の赤字割合比較】
2019年4月の赤字割合比較:東京都で5.7ポイント高い → 2020年4月の赤字割合比較:東京都で10.6ポイント高い(格差が4.9ポイント拡大)
【新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院の赤字割合比較】
2019年4月の赤字割合比較:東京都で2.2ポイント高い → 2020年4月の赤字割合比較:東京都で11.0ポイント高い(格差が8.8ポイント拡大)
【新型コロナウイルス感染患者を受け入れていない病院の赤字割合比較】
2019年4月の赤字割合比較:東京都で5.3ポイント高い → 2020年4月の赤字割合比較:東京都で6.3ポイント高い(格差が1.0ポイント拡大)
【病棟を一時閉鎖せざるを得ない病院の赤字割合比較】
2019年4月の赤字割合比較:東京都で3.2ポイント高い → 2020年4月の赤字割合比較:東京都で4.8ポイント高い(格差が1.6ポイント拡大)
新型コロナウイルス感染症の影響が、非常に多くの病院の経営に深刻なダメージを与えていることが改めて確認できます。こうした状況も踏まえ、3病院団体を含む日本病院団体協議会(日病協)では、診療報酬上の手当てのさらなる拡大(入院基本料や初再診料、外来診療料の引き上げや、概算請求(2019年度の実績に基づく請求)の実施等)などを要請しています。

なお、病院経営を考えるうえでは「自院の状況を客観的に把握し、経営指標の各要素を他院と比較することにより、課題等を確認する」ことが第一歩となります。

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参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=357732

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