免疫の誤作動を防止する、自然免疫と獲得免疫の相互確認の制御システム

免疫はまちがって自身を攻撃する致命的な誤作動が起こらないように、自然免疫と獲得免疫が相互に確認し合う制御機能をもっている。

自然免疫(食細胞)の「樹状細胞」が、パターン認識受容体で病原体を認識し、獲得免疫を始動させる「抗原提示」を行う。
(※獲得免疫のターゲットとなる細菌やウィルスを抗原という。)
病原体を取り込んだ樹状細胞は、細胞内の酵素の力で、病原体のからだを構成するタンパク質をペプチドの断片まで分解する。
(※一つのタンパク質分子は材料のアミノ酸が何千個、何万個とつながったもので、それが分解されてアミノ酸が数十個つながった断片になったものがペプチド。)
ペプチドの多くは、さらに別の酵素でアミノ酸にまで分解されてしまうが、一部のペプチドは樹状細胞のMHCクラスⅡという分子と結合して、樹状細胞の表面に提示される(「MHCクラスⅡ+抗原ペプチド」)。
(※MHCクラスⅡは、樹状細胞の表面にあるペプチドを乗せる“お皿”のような分子。)

そして、樹状細胞が抗原提示する相手が、獲得免疫になる「ナイーブT細胞」。
「T細胞」は、表面にCD4という分子を出している「ヘルパーT細胞」と、CD8という分子を出している「キラーT細胞」の二種類があり、まだ抗原に出会う前を「ナイーブT細胞」という。
ナイーブ・ヘルパーT細胞は「T細胞抗原認識受容体」をもっており、病原体を食べて活性化した樹状細胞の表面に提示された「MHCクラスⅡ+抗原ペプチド」を探しだして結合しようとする。
さらに、樹状細胞のCD80/86という補助刺激分子と、ナイーブT細胞のCD28という補助刺激分子も結合しようとする。
さらに、活性化した樹状細胞は「サイトカイン」を放出し、ナイーブ・ヘルパーT細胞はそれを浴びようとする。
つまり、ナイーブ・ヘルパーT細胞が病原体を攻撃する「活性化ヘルパーT細胞」になるには、三つの条件がそろう必要がある。
①T細胞の抗原認識受容体が、樹状細胞の「MHCクラスⅡ+抗原ペプチド」を探し結合
②樹状細胞とT細胞の補助刺激分子の結合
③樹状細胞が放出するサイトカインを浴びる

さらに、病原体を取り込んで活性化した樹状細胞は数日しか生きられない死のタイマーがセットされている。それにより、ヘルパーT細胞の活性化を制限している。

そして、ヘルパーT細胞は活性化すると「サイトカイン」を放出し、マクロファージがそれを浴びることでさらに活性化する。つまり、活性化したヘルパーT細胞によって、病原体が侵入した付近のマクロファージは大きく活性化することになる。

★病原体が体内に侵入してからの免疫の動き
【1】病原体の侵入→自然免疫(食細胞)の好中球、次にマクロファージが活性化し撃退。
【2】撃退できない時、自然免疫の樹状細胞が、病原体の細胞のペプチドを使ってナイーブT細胞に抗原提示(MHCクラスⅡ+抗原ペプチド)。
【3】ナイーブ・ヘルパーT細胞が、樹状細胞の「MHCクラスⅡ+抗原ペプチド」に結合し、樹状細胞とヘルパ-T細胞の「補助刺激分子」も結合し、さらに樹状細胞が放出するサイトカインも浴びることで、活性化ヘルパーT細胞になって増殖。
【4】活性化ヘルパーT細胞はサイトカインを放出して、活性化しているマクロファージをさらに活性化して強力にする。
【5】ただし、活性化した樹状細胞は数日しか生きられなことで、ヘルパーT細胞の活性化を制限する。

免疫は、病原体の断片(わずか十数個のアミノ酸がつながったペプチド)をもとに、獲得免疫が始動し、免疫機能が強力になっていく。そのため、免疫の誤作動を防止するために、自然免疫と獲得免疫の相互確認の制御システムが形成されている。

※参考文献:「新しい免疫入門」審良静男/黒崎知博 著

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参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=357711

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