「インフルエンザの予防注射はあまり効かない」医師たちがわが子については注射を受けずにすむよう、学校への届け出の書き方を工夫してきた。

『だれのためのワクチン注射か』(社説)
朝日新聞6月14日
「インフルエンザの予防注射は、あまり効かないらしい」--という話は、専門家の間では、公然の秘密であった。少なからぬ医師たちがわが子については注射を受けずにすむよう、学校への届け出の書き方を工夫してきた。確率は低いとはいえ予防注射に事故はつきものだからである。
 このワクチンが義務化されて10年経たのを機に、厚生省に「インフルエンザ流行防止に関する研究班」が設けられ、最終報告案がまとまった。公衆衛生審議会のインフルエンザ小委員会がさらに論議を重ねる。
 この論議がガラス張りで行われること、国際的な評価に耐えられる客観性と論理性の通った結果を出すことを期待する。なによりも、毎秋2回痛い思いをし、ときに副作用の危険にさらされるこどもたちの身になって論議してもらわねばならない。
 日本では昭和51年に予防接種法が改正され、3歳から15歳のこどもたちは、毎秋2回のインフルエンザ予防注射が義務づけられた。健康なこどもたちに義務づけている国は、いま、世界中で日本だけである。
 諸外国はなぜ義務づけないのか。
 こどもたちには、必要性が乏しく、効果があまりに少ないと判断しているからである。
 世界で広く用いられているワクチンは、2つの条件を備えている。第1は、かかると死の危険が大きいか、治ってもポリオのように後遺症を残すような病気のワクチンであること。第2に、その効力がはっきり証明されていること、である。
 日本で接種が義務づけられている健康な子どもは、インフルエンザにかかっても、学校を休むのは数年間に2、3日である。この程度の病気に対し毎年数百億円の費用をかけ、半日を奪って予防注射をする日本の行政は、諸外国から奇異の目で眺められている。
 しかも、他のワクチンに比べて効果が著しく低い。このウイルスは毎年新型に変身してしまうからである。そこで、ことしの冬はこの型が流行するのではないか、と予測して製造を始めるのだが、日本では、大量に生産するため、予測の時期がかなり早い。そのせいか、当たったことはめったにない。
 英国の公衆衛生学者たちが、全寮制の生徒たちの協力を得て7年間観察した調査がある。世界的に専門家の評価を得ているこの調査によると、予防注射を受けないグループも毎年受けたグループもインフルエンザにかかった率は同じであり、最もかかりにくかったのはかつて自然感染したグループだった。自然感染によって体が獲得する免疫は、ウイルスが少々変身しても対抗できるのだ。
 日本の「研究班」の疫学部会も同様の結論に達した。集団接種を昭和55年から中止している前橋市と熱心に推進しているお隣の高崎市を比較した結果、差はなかった、とことし2月の中間報告に記している。
 中間報告はさらに「現行の予防接種を中断しても、流行や感染や発病の危険を増大させることはない」とはっきり結論づけていた。ところが、最終案では、説得力ある根拠が示されぬまま結論があいまいにされている。
 こどもたちへの義務接種を打ち切れば、ワクチン製造業界は経営的な問題を抱えこむことだろう。原材料のタマゴを納入する業者も悲鳴をあげるに違いない。「効果あり」として接種を推進してきた厚生省もバツの悪い思いをするだろう。
 しかし、こどもたちは、効果の薄い注射を打たれずにすむ。税金の無駄遣いも減る。その予算を『子供たちの愛情たっぷりオーガニック給食』にあててほしい。

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参照:https://www.facebook.com/Kobayan.dolphin/posts/10217366934554506

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