なぜ、マックの高卒バイトがマイクロソフト本社にヘッドハンティングされたか

なぜ、マックの高卒バイトがマイクロソフト本社にヘッドハンティングされたか リンクより引用

「マクドナルドで時給800円で働いていた高卒男性が、アメリカのマイクロソフト本社(平均年収約3050万円※)に引っ張られる、サクセスストーリー」
――そう聞いて、どんな人生を思い浮かべるだろうか。彼のこれまでの歩みには、仕事への向き合い方やキャリアを考えるうえで、学ぶべきものがつまっている。

◯ 地方で、高卒では正社員にもなれなかった
11歳でイギリスへ留学。寮生活を始めたのは、シドマスというロンドンから車で3時間ほど離れた、田舎町。そこで最初の「多様性」に触れたという。「イギリス人が8割で、残りはドイツ人や香港の学生。多国籍の学生たちが、2段ベッドで共同生活していました」
こう見ると、18歳までのキャリアは華やかだ。
しかし2009年夏、吉田さんに試練が訪れる。母親が病で倒れ、帰国を余儀なくされるのだ。ビザが取得できず、実家の経済的な事情から、吉田さんは進学を諦めざるをえなくなる。家計を支えるために、吉田さんは実家のあった兵庫・明石で、職探しを始める。時期悪く、帰国した09年はリーマンショックによる世界的な不景気の最中だった。そうして、「そこでしか働けなかった」家から歩いて通えるマクドナルドで、アルバイトを始める。

ひたむきに働いた吉田さんは、7カ月後にスウィングマネジャー(バイトマネジャー)になっていた。傍ら、IT系の企業で働く夢を追い求め、就職活動も継続していた。IT能力に長けていた吉田さんは派遣社員ながら徐々に任される仕事が増えていき、3カ月後、正社員として働かないかと声がかかる。当時、19歳。

転職2年目で、「このままではERPだけの人材になってしまう」とさらなる転職を決意。就職先は2000人規模の日系SIer企業。そこでの上司との出会いが、吉田さんのキャリアを大きく変えた。
その上司は、マイクロソフト製品の豊富な知識を持つ、貢献度の高い個人を表彰する制度・マイクロソフトMVPの受賞者だった。そこで、勉強するコミュニティや、セミナーに登壇する文化を教わる。
「個人でググるだけではなくて、コミュニティで勉強するようになって、そこから、受け身ではなく自ら登壇したり、情報を発信するようになりました。すると相乗効果が起こって、情報への理解度が格段に上がりました」
吉田さんは自身のブログ「吉田の備忘録」で、海外の最先端の情報をグーグルで調べてまとめ、邦訳するなど、積極的な発信を始める。そこで出会ったのが、誰もがiPhoneやAndroidなどのアプリを作れるソフト「Power Apps」だった。魅力に引き込まれた吉田さんは、「会社での導入は難しくて」趣味でひとり、研究を始めた。

◯ いかにしてMS本社に入社したか
日系企業ゆえの「新しいことがなかなかできない」しがらみから、17年春、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングに転職。4カ月でシニアコンサルタントへとスピード出世を果たす。そして7カ月目、マイクロソフトのリクルーターから、LinkedInで引き抜きの声がかかる。
「ご存じでないと思いますが、PowerAppsという製品がありまして……その技術営業にご興味はないでしょうか?」
知っています! すぐに面接を受けさせてください! 即答だった。

吉田さんは履歴書にPowerAppsへの情熱をしたため、シンガポールやアメリカ、日本など、合計4つの面談を受ける。当然コミュニケーションの多くは英語だ。マイクロソフトは学歴を考慮することもなく、実績を見る。吉田さんのためにあるかのような採用だった。収入も圧倒的に跳ね上がる。
そして18年の1月、27歳で「GlobalBlack Belt」という、PowerAppsに特化した技術営業として、米国マイクロソフトの本社に入社する。入社時はまだ、PowerAppsの知名度は高くなかった。

◯諦めるということは基本的にしない
「セミナーを開催したり、相手方に出向いたり、とにかく知ってもらうことから始めました」。1年で開いたイベントは29回、名刺を交換した企業数は350社。1年で売り上げは10倍以上に拡大し、世界の利用者数は250万人を超えた。
吉田さんのこれまでの熱意を支えたのは、PowerAppsへの思い入れの深さだ。プログラミングの知識がなくても、どんな人でもアプリを作れるPowerAppsの特異性は、学歴や環境に苦しんだ吉田さんにはひときわ魅力的だった。
「例えばロンドン空港でボディチェックをやっていたセキュリティ担当の人が、PowerAppsを使って、空港の雑務を効率化するアプリを作り、彼はITスペシャリストになった。その人は中卒でした。そういうキャリアの人がこれから増えていきます」
最後に、29歳になる吉田さんに自分の強みはどこか、聞いてみた。
「継続力です。とにかく情熱を持ってやり続けること。諦めるということは基本的にしないですね」

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=356430

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