生活保護費で高級寿司店3万円にタクシー1万円使った親子、お金が無くなり生活に困窮、ネットで物議

私は精神保健福祉士として1995年から25年間にわたり、精神疾患や障害を抱えながら地域で暮らす患者と、その家族を支援してきました。

私には忘れられない親子がいます。2004年、担当していた精神科デイケアで出会った統合失調症の男性Aさん(37=当時)とその父親(69)です。

頼れる身寄りもおらず、1カ月計13万円の年金と生活保護費でほそぼそと暮らす2人。私たち専門職が数年にわたりサポートを続けましたが、親子が互いに傷つけあって次第に疲弊し、数年後には2人そろって精神科に入院するほどに追い詰められてしまいました。

支援のため自宅を訪れましたが、そこは足の踏み場もないほどのゴミ屋敷でした。濡れた衣服や惣菜パックが至るところに散乱し、大量のうじ虫やゴキブリにも遭遇しました。2人がここまでの状況に陥るまでには、長年にわたる、いくつもの不幸な出来事の積み重ねがありました。
ーーーーーー
父と子の2人暮らし。父の年金は毎月8万円で、足りない分は退職金を充てる生活でした。ここで分かったのは、Aさんは家事や片付けが非常に苦手だったということです。このため父が調理や掃除を行っていました。しかしAさんが40歳になる頃、父の退職金が底をついてしまったことで生活が困窮し、親子の言い争いが増えていきました。本来であれば、Aさんは2週間に1度の受診でしたが、お金がないため2カ月に1度の受診となることもありました。

外来ソーシャルワーカーの強い勧めにより、父親は生活保護の受給に踏み切りました。父親は世間体を気にして受給に消極的だったものの、月5万円の生活保護により計13万円の生活費が確保されるように。

こうして何とか均衡を保っていた父子の生活が崩れたのは、Aさんが43歳の時です。父親が体調を崩し、Aさんが家事を担うようになって家が荒れていったのです。体調が悪化したためか、父親の口調も荒くなり、Aさんは父親が自分を責めていると感じ始め、徐々に落ち着かなくなっていきました。そんな息子と接する父親も、自暴自棄的な発言や疲弊した発言が目立つように。主治医が、このままでは2人の精神状態が悪化すると判断し、2人とも精神科への入院を余儀なくされました。

父親の体調悪化の原因のひとつは、熱中症です。光熱費を滞納したことで、空調が使えなくなったのです。入院してしばらくして私は病棟でAさんから、13万円でどのような生活をしていたのか伺いました。

そうすると驚くべきことに、2人は月初めに入る生活保護を頼りに、高級すし屋にタクシーで行くことを楽しみにしていました。すし代は2人で3万円、タクシー代が往復で1万円。2人を温かく迎えてくれるお店の対応がうれしく、通い続けていたといいます。これは父親が働いていた頃からの唯一の楽しみであると共に、生活をここまで逼迫させた最大の原因だということが、後になってわかりました。

多くの人は、生活保護費で高級ずしを食べる親子を軽蔑し、2人の転落を「自業自得」と片付けるかもしれません。しかし私は、たったひとつの楽しみとして、カウンターで肩を並べておいしそうにすしを食べる2人を想像すると、Aさんを責めるどころか、ねぎらう思いにかき立てられました。精神疾患が当事者とその家族の生きがいまでも断ち切ってしまうことに、支援者としての無力さを感じました。

https://news.livedoor.com/article/detail/17958698/
ーーーーーー
参照:http://hamusoku.com/archives/10202054.html

シェアする

フォローする