人間にも磁場を見る能力が備わっている。磁気たんぱく質、クリプトクロムとは??

まるでコンパスのように振る舞う磁気タンパク質.
ハトや蝶が持つ光受容体がヒトにも存在している
「人間も鳥たちのように、磁場で位置や方向を獲得することができる」という能力があるかもしれない
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◆人間もハトと同様の「磁場を見る目」を持っている

どうやら、人間も磁場を見ている可能性があります。

最近、北京大学の分子生物学者、カン・シエ( Can Xie )博士を中心とする研究チームが、ショウジョウバエのゲノムを生物学的仮定に基づいてスクリーニングすることにより、

・「クリプトクロム」という光感受体であるタンパク質

・クリプトクロムと結びついて、自発的に外部磁場の方向を向くポリマー状のタンパク質( MagR と命名)

を特定し、このふたつの結合した複合体が「磁場を向く」ことがわかり、これが、渡り鳥などが磁場を見ている源なのではないかという研究結果を先日発表したのです。

特定されたこの複合体( MagR/Cry 複合体と命名)が磁場を感知する仕組みはまだわかっていないのですが、この複合体は、磁気コンパスのように振る舞うのだそうで、動物の磁気感受と何らかの関係は持っていそうです。

このクリプトクロムという光受容体は、多くの動植物が持っていて、また、今回特定された複合体は、ハトや蝶やネズミ、クジラなどの網膜細胞から見つかっていて、そして、ヒトの細胞の中にも作られるのです。

つまり、人間の体の本来の仕組みとしては、

「人間は磁場を《見る》ことができる」

ようなのです。

「磁場を見る」というのは不思議な響きに聞こえるかもしれませんが、この「クリプトクロム」というタンパク質は、目の網膜にあるもののようで、文字通り「見ている」という表現で構わないようにも思います。

しかし、人間も鳥のように磁場を感じられる「根本」を持っているとすると、機能として(たとえば松果体のように)現在は働いていなくとも、感じる感じないに関わらず、人間もまた磁場の影響を受け続けているということになるとは思います。

だとすると、「人間も鳥たちのように、磁場で位置や方向を獲得することができる」という能力があるかもしれないという魅力的な話とつながると同時に、たとえば、現在の「極端に磁場が弱まり続けている状態」の中では気になることもあります。

◆磁場の影響を受けやすいと思われるハトが欧州で90%激減していることが示唆する、これからの地球の全生物

この「クリプトクロム」というタンパク質はずいぶん以前からわかっていて、そして、鳥は「磁場があるからこそ生きていけるのかもしれない」ということに関してもずっと以前からわかっていたことのようですが、そのメカニズムがわかっていませんでした。

過去記事の、

・ 大量死の時代に生きる意味 : 鳥のいない地球をもたらすのは磁場の変化なのか、それとも、それは人間と地球の変化の兆しなのか。そもそも大量「死」とは何か
 2015/07/03

など、いくつかの記事に記したことがあります。

上の記事では、アメリカの各地で「鳥が空から落下している」という出来事に対して、「各地で鳥が落下しているのは、磁場の異変が原因ではないか」ということについてふれたもので、多くの渡り鳥たちが、

・くちばしの細胞で磁場を感知する
・光受容体細胞の中にあるたんぱく質(クリプトクロム)で磁場を「見て」いる

ことなどから、地球の磁場が消滅する、あるいは、弱くなりすぎた場合に、鳥は生きていくことができなくなるのではないかというようなことを書いたものです。

そして、何度もふれていることですが、地球の磁場は過去 100年で一貫して弱まり続けています。

また、5月には、英国などの調査で、「ヨーロッパでは、3分の1の鳥が消滅する危機にさらされている」ことが報告されています。

その中でも、先ほどから出ています「ハト」は、

・ヨーロッパのハトは、1980年代から 90パーセントの減少

となっていて、この三十数年は異常といっていい減り方を見せています。アメリカのモナーク蝶も、過去 20年間ほどで、80パーセント減っていることがわかったのだそうで、磁場で旅をする代表的な生物たちが確実に消滅し続けています。

もちろん、磁場の減少以外にいろいろな理由はあるでしょうけれど、これほどまでの急激な減少は、通常の理由では探りづらい感じもします。

そして、

「人間を含めた非常に多くの生物が磁場によって生きている可能性がある」

ということなどを考えますと、近づいているかもしれない「磁極の逆転」(その際、磁場は「ゼロ」になると見られています)の際に、どんなことが起きるのかは、本当によくわからなくなってきた感じもあります。

ちなみに、最後の磁場の逆転が起きたのは、日本の国立極地研究所などのグループの最新の発見(報道「77万年前に地磁気逆転の証拠発見(ハザードマップ)」)によれば、77万年前ということで、「現世人類が地球に登場する以前」のことです。

なので、今の私たち現世人類が、仮に磁場の逆転を経験するとなると、「まさに初めてのこと」となるわけで、やはり大きな出来事になるのかもしれません。

そして、現在の地磁気のものすごい減少を見ていますと、徐々にではあっても、やはり「すでに始まっている」と考えるのもそれほど奇妙な考え方ではないかもしれないとも思います

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