小児科学、ウイルス学、ワクチン学などが専門の医師である、本間真二郎氏の「新型コロナCOVID-19について」

小児科学、ウイルス学、ワクチン学などが専門の医師である、本間真二郎さんの新型コロナCOVID-19についての投稿です。
理解することで「過度な不安」は無くなりますね。

先日(2/21)、現在日本で流行しつつある新型コロナウイルス(COVID-19)について、まず大切になる最も重要な情報を簡潔にまとめました。

今回は新型コロナウイルスのウイルス学的な特徴を書こうと思ったのですが、専門的な話よりも、まずは大まかな臨床的な特徴を現時点で分かっている範囲でまとめて記事にしました。以下の点に注意してください。
・新しく出現したウイルスですので、不明な点が多い
・現在進行中の感染症なので最終的な結論ではない
・特定の報告からではなく、多くの情報元から総合的にまとめている
・すべての特徴がこれから流行する日本人に当てはまる訳ではない
まずは、まとめとして箇条書きで書き、その後解説を加えます
①感染経路は今のところ飛沫感染と接触感染であると考えられる。
②基本再生産数(RO:アール ノート)は2〜3ほどと推定される
③潜伏期間は1〜12.5日とされ、多くは5〜6日と思われる
④不顕性感染をかなりの高率で認める
⑤致命率は0.05〜3ほどと推定される
⑥症状は一般の風邪と同じ 呼吸困難(呼吸苦)と倦怠感、高熱の持続に注意
以下に補足を含め解説します。
①感染経路
感染経路は感染の予防や対策を考える上で重要です。今回の新型コロナウイルスの感染経路は、今のところ飛沫感染と接触感染であると考えらます。いずれも口や鼻の粘膜を通して感染することが重要です。
飛沫感染とは感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)によりウイルスが放出され、他人がそのウイルスを口や鼻から吸い込むことで感染します。屋内や車、電車などの公共機関で距離が十分にとれない状況で、他人と一定時間いるときがリスクになります。
接触感染とは、感染者の飛沫が直接、あるいは飛沫がついた手で周りの物に触れるとウイルスが付きます。他人がその物を触るとウイルスが手につき、その手で口や鼻を触って粘膜から感染します。電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなどがリスクになります。
「飛沫が空気中で混ざり合ってエアロゾルを形成し、これを吸引して感染する」エアロゾル感染が指摘されていますが、これは空気感染ではなく、飛沫感染に相当すると考えられます。
いまのところ、空気感染(これも粘膜感染です)はおそらくないと考えられます。空気感染するウイルス(麻疹や水痘)の場合、感染力はとても高い事になります。
②基本再生産数(RO:アール ノート)
基本再生産数とは1人の感染者が周囲に感染させる数(二次感染者数)で、感染力の目安となる値です。今回の新型コロナウイルスのこれまでの報告では1.4〜6.6で、最終的には2〜3になると予想されます。
他の主な病原体のRO推定値は以下になります。
麻疹12〜18、百日咳12〜17、水痘8〜10、風疹5〜7、おたふくかぜ4〜7、天然痘5〜7、季節性インフルエンザ2〜3 HIV 2〜5、SARS 2〜5、MERS 0.8
ですから今回の新型コロナウイルスはインフルエンザよりも少し強い感染力と考えられます。
なお、ウイルスの排出は発症から3〜4日がピークと考えられていますが、その後どれくらい排出期間が続くのかははっきりしていません。
③潜伏期間
潜伏期間とは、感染してから発症までに要する症状が出ない期間のことで、感染管理や二次感染予防にとても大切な情報です。今のところ今回の新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜12.5日で、多くは5〜6日ほどと考えられています。
④不顕性感染
不顕性感染とは感染はしたが症状を示さない(つまり発症しない)感染のことを言います。今回の新型コロナウイルスでは、不顕性感染がみられ、それもかなりの高い率(場合により50%近く?)になる可能性があります。
不顕性感染が多いということは、症状がでないまま自然に治っているという事ですから、軽症例が多いということになります。一方で、知らないまま感染している可能性があることになりますし、知らないまま人に移す可能性もあるということになります。
不顕性感染では、通常は病院にかかったり、検査を受けない訳ですから、これが多い場合は、流行の全体像の解析(発生数、致命率、重症度など)や2次感染予防つまり、感染のコントロールがとても難しくなります。
最大の問題は、不顕性感染程度の軽い感染者が他人に移す力を持つかどうかということになりますが、はっきりしたテータは今のところありません。おそらく不顕性感染であっても人に移すのではないかと思います。
⑤致命率
致命率とは、ある病気にかかった人の中での死亡する割合のことです。
先日も書きましたが、今回の新型コロナウイルスの致命率は0.05〜3ほどと推定されます。
リスク(健康状態、衛生環境、栄養状態、国、気候)などにより大きく異なりますが、今回の新型コロナウイルスは、パンデミック(広範囲の流行)を起こす新規の感染症としては高くない値です。
おそらく日本では最終的には0.1%程度かそれ以下になると思われます。しかし、0.1%でも例えば1000万人が感染すれば1万人程が亡くなることに注意してください。
⑥症状 
今回の新型コロナウイルスの初めの症状は、発熱、咳、倦怠感、関節痛・筋肉痛、悪寒などで通常の風邪の症状とまったく区別できません。
今回の新型コロナウイルスでは肺炎を非常に高率に合併するのが最大の特徴ですので、経過が長くなり、発熱の持続、呼吸困難(呼吸苦)、つよい倦怠感(だるさ)の症状が出る場合に強く感染が疑われます。
重要なポイントは
・通常の健康な人にとっては症状の強い風邪程度の感染症(1週間程の経過)である
・免疫力、抵抗力にリスクがある人は感染率、致命率ともとても高くなる
・小児(20歳未満)では患者数、致命率ともにとても低い
最後に、CCDC(中国疾病管理予防センター)によるChinese journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月17日号掲載された中国で感染が確定した全症例(今までに最も多い4万4,000例以上)の報告の要約です。上にも書きましたが、日本でどのようになるかは分かりませんが、とても参考になると思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32064853
・年齢構成
9歳以下 416例(0.9%)
10~19歳 549例(1.2%)
20~29歳 3,619例(8.1%)
30~39歳 7,600例(17.0%)
40~49歳 8,571例(19.2%)
50~59歳 1万8例(22.4%)
60~69歳 8,583例(19.2%)
70~79歳 3,918例(8.8%)
80歳以上 1,408例(3.2%)。
・重症度
軽度 3万6,160例(80.9%) 風邪や軽い肺炎
中等度 6,168例(13.8%) 肺野の50%未満の浸潤までの肺炎
重度 2,087例(4.7%) ICUでの全身管理が必要な状態
不明 257例(0.6%)
・併存疾患
高血圧 2,683例(12.8%)
糖尿病 1,102例(5.3%)
心血管疾患 874例(4.2%)
慢性呼吸器疾患 511例(2.4%)
がん 107例(0.5%)
・致命率
1,023例が死亡 全体の致命率は2.3%。
・年齢層別の死亡数
9歳以下 なし
10~19歳 1例(0.2%、0.002)
20~29歳 7例(0.2%、0.001)
30~39歳 18例(0.2%、0.002)
40~49歳 38例(0.4%、0.003)
50~59歳 130例(1.3%、0.009)
60~69歳 309例(3.6%、0.024)
70~79歳 312例(8.0%、0.056)
80歳以上 208例(14.8%、0.111)
・基礎疾患がある場合の死亡数
心血管疾患 92例(10.5%、0.068)
糖尿病 80例(7.3%、0.045)
慢性呼吸器疾患 32例(6.3%、0.040)
高血圧 161例(6.0%、0.038)
がん 6例(5.6%、0.036)

https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2623921001266236

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参照:https://www.facebook.com/satoshi.yamamoto.399488/posts/3413242078750115

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